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海上保安庁のS-76D巡視船搭載計画・韓国海洋警察がS-92導入

2月に海保の航空勢力にかかわる重大なニュースが発表された。S-76Dの発注である。

海上保安庁、シコルスキーS-76Dを4機を発注

シコルスキーと三菱商事は2012年2月14日、シンガポール・エアショーで日本の海上保安庁から4機のS-76Dを受注したことを発表しました。これらは先の大津波で破壊された機体の代替機とみられています。

海上保安庁ではこれまでも数機のS-76を使用してきましたが、今回発注したのはシリーズ最新型のS-76Dです。S-76DはエンジンをパワフルなP&Wカナダ製のPW210Sに換装し、全複合材製のローターブレードや、フランスのタレス社による統合されたグラスコクピットとオートパイロット、アクティブ制振装置、自己診断装置などを標準で装備しています。また、オプションでローターブレードの防氷装置も用意され、これにより全天候飛行能力も獲得します。

Japan Coast Guard Selects S-76D™ Helicopter for Search and Rescue Helicopter Program

February 14, 2012
SINGAPORE AIR SHOW, Singapore - Sikorsky Aircraft Corporation, a subsidiary of United Technologies Corp. (NYSE:UTX), and Mitsubishi Corporation have announced a contract with the Japan Coast Guard (JCG) for four S-76D™ helicopters, which will replace several JCG helicopters that were damaged in the tsunami of 2011.
The Japan Coast Guard has flown various legacy models of the Sikorsky S-76® helicopter for many years.

JCG_S76D.jpg


最初に挙げた記事にあるように、東日本大震災での被災損失機の代替と見る向きもあるようだが、事実はそうではないだろう。というのも既に、被災損失分については既に補充が始まっているからだ(関連するヘリ配置転換については別のエントリで纏める)。

S-76Dになるというのは以前のエントリで推測したとおりだった。いや、それ以前にS-76Dが次期ヘリコプターとして選定されたという話があった。

関連エントリ:海上保安庁が災害対応強化型巡視船艇を建造、新型ヘリも導入へ

s_76.jpg

海上保安庁はAW139を継続して調達中だ。ここでさらに新型ヘリを導入するとなれば異なる目的があると考えるのが筋だろう。AW139は海保の統一機種として採用されたが、実際にはPLH(ヘリ搭載型巡視船)に搭載された機体はない。海保は陸上基地機としてのAW139と巡視船搭載機としてのS-76Dの二本立てで航空勢力整備を図るということなのだろう。

S-76D.jpg
海上保安庁が4機を発注したS-76D

一方で、4機とその後の導入が進むと考えても、現行のPLH搭載機ベル212をすべて更新するには足りないし間に合わない。そのため、海保は既存の陸上配備機ベル412のPLH搭載を計画しているという。

1機搭載型PLHの後期建造型である「りゅうきゅう」「だいせん」についてはヘリ甲板・格納庫ともにベル412とS-76Cの搭載が考慮されていた。「りゅうきゅう」が11管区に配備される際にはベル412を搭載していたとされるが、実際には運用されず航空基地へのフェリーを行っただけだった。


※当エントリについて某所より連絡がありましたので一部記述を変更しています。

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tag : 海上保安庁 巡視船 PLH ベル 412 シコルスキー 韓国 海洋警察庁

2012-05-07 : 海上保安庁 : トラックバック : 0
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釜山・水営湾で日韓海上保安機関合同救難訓練を実施

表題の通り、釜山沖で海上保安庁と韓国海洋警察庁の合同捜索救助(SAR)訓練が行われた。日韓の海上保安機関による訓練は毎年恒例行事で、シンプン号事件や日本海呼称問題などで摩擦が起きた年にも、例年通り行われてきた。救難訓練のほか合同テロ対策訓練が行われる年もある。W杯直前には海保からSSTも参加しての本格的な対テロ訓練が今回と同じ海域において実施されたが、二国間の救難訓練としては初の韓国領海内での実施となるらしい。

今までは中間水域にて日帰りにて実施してきたため派遣される地元メディア(ほとんどの参加が七管所属の巡視船「ちくぜん」のため在福岡の報道機関)も同乗していたのだが、今回は泊りでの派遣となるため日本のメディアは来ていなかったのかもしれない。別便で釜山まで行って取材するほどの内容でもないということだろうか?

実際、今のところ報じているのは韓国メディアとその日本語版だけだ。

以下の記事では参加した巡視船「ちくぜん」とその搭載ヘリ福岡空港基地より飛来したヘリの様子がよく分かる。

韓日海上保安当局が救助訓練

 11日午前、水営湾(釜山市)で行われた韓日海洋警察合同捜索救助(SAR)訓練に参加した南海海洋警察庁のヘリや海上保安庁の救助隊などが、人命救助訓練を行った。


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tag : 海上保安庁 巡視船 PLH ベル 212 412 韓国 海洋警察庁 合同訓練

2011-11-12 : 海上保安庁 : コメント : 3 : トラックバック : 0
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海上保安庁が災害対応強化型巡視船艇を建造、新型ヘリも導入へ

海上保安庁が平成23年度補正予算で災害対応・防災能力を強化した巡視船艇の建造を要求していることが明らかになった。

港の防災強化 消防艇を更新へ

震災では、千葉県市原市や仙台市の石油コンビナートで大規模な火災が発生し、陸上からの消火活動がうまく進まなかったことから、海上からの消火活動の重要性が指摘されています。このため海上保安庁と国土交通省は、今後発生が予想される東海地震などの大規模な災害に備え、海上保安庁の消防艇で建造から30年以上が経過し老朽化が進んでいる船を更新します。更新の対象となるのは今ある9隻のうち6隻で、全長が今より5メートル長い35メートルになるほか、航行速度も10ノット程度速くなるとしています。これによって海上保安庁は、火災現場にいち早く駆けつけられるようになり、全国の港の防災能力の強化にもつながると説明しています。これについて国土交通省は、災害が起きた際に物資の運搬や救難活動ができる巡視船とともに、建造費120億円を今年度の第3次補正予算案に盛り込む方針です。

東日本大震災では地震や津波の被害が大きくクローズアップされているが、沿岸部に建設された石油関連施設の被害、特に流出と火災も酷かった。

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文字通り「火の海」と化した現場で、海保や消防などの巡視船艇は懸命に消火活動を実施していたのである。

関連エントリ:「ひりゆう」火の海の中での消火活動

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関連エントリ:生き残っている二管勢力は救助活動に参加、一方・・・

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今回、千葉のコンビナート火災で消防船団の中核的存在となっていたのが横浜海保の「ひりゆう」だ。1997年に就役した同船は煙突と一体化した伸縮式放水砲や防爆型構造物を備え、城郭のような印象を与える外観で、それ以外にも大容量タンクや旋回式可変ピッチプロペラを備えるなど、きわめて高性能な消防船である。また、純粋に消火任務のために建造された消防船としては世界的に見ても大型の部類だろう。

海上保安庁新型消防船「ひりゆう」(CiNii)

今回は未曾有の大災害の中、その真価を発揮したといえる。

しかし、これほどまでに高性能でありながら、建造はこの「ひりゆう」1隻のみで、同型船はない。理由は高性能ゆえの建造費の高さである。警備業務のニーズ高まりを受けて、こうした単能船、機能特化船の建造は見送られてきたのだ。

そのため東京湾以外の海域に配備されている消防船はいずれも先代の「ひりゆう」そのままである。現在の「ひりゆう」に更新された1番船を除く4隻は既に船齢が40年を越している。老朽船に悩まされる海保においても最年長クラスである。

先代「ひりゆう」は当時としては世界最高クラスの消防船であり、いくつものタンカー火災を経験した日本は有数の保有国となった。しかも保有していたのは海保だけではない。現在の海上災害防止センターも「(旧)ひりゆう」と同型の消防船2隻を配備していた。

~海上のライフラインと豊かな海を守るために~

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一番手前、「櫓」が赤い海保の消防船と異なり白い塗装の消防船がセンター所属の「おおたき」である。

同センターも高価な現「ひりゆう」同型船建造は行わず、独自設計の消防船を配備した。それが上記画像で「ひりゆう」の隣で放水活動を行っている「きよたき」である。先代と同様2隻建造されたが、船型は海保の現「ひりゆう」と異なり、タグボート型である。海保と同様の消防船を運用していた組織が、導入しなかったことからも現「ひりゆう」の高価さが分かるだろう。

東京湾に最新鋭の消防能力をもつ化学消防船が誕生

ちなみに同センターは業務の重要性もさることながら、国からの交付金がない上に毎年黒字を出しているにもかかわらず、昨年の事業仕分けにおいて民主党政権によって組織そのものを解散すべきとされている。

消防船に話を戻そう。

海保は建造費ゆえに消防船の更新が出来ないでいたが、その一方で消防艇については異なる手法で代替を行っていた。

先代「ひりゆう」の建造時に、同船を補完する存在として消防艇「ぬのびき」型の建造が進められた。同船は「ひりゆう」より小型でありながら10万トン級タンカー火災にも対応できるように設計された消火活動に特化した船だった。

Fire Fighting Boat Medium FM 消防艇「ぬのびき」型

しかし、先代「ひりゆう」と同様、老朽化が進んでいた。

そこで海保がとった代替策は巡視艇との兼用である。海保では同様に老朽化していたPC型巡視艇を「はやなみ」型で更新していたが、阪神大震災を受けて同型の6番船「はまなみ」以降が災害対応機能強化型とされた。

35m type Patrol Craft PC 35メートル型巡視艇「はやなみ」型

その後、この「はやなみ」型の放水能力・消防能力の強化を図った巡視艇が建造されることになった。

35m type Patrol Craft PC 35メートル型巡視艇「はまぐも」型

「はまぐも」型は前型でレーダーマストのあった位置に放水塔を設置した。それ以外にも自衛噴霧装置やガス検知器等の本格的な消防設備を備える。

ちなみに、同型3番船「うらなみ」はいわゆる尖閣ビデオ流出の舞台にもなった。

消防能力強化はこれにとどまらなかった。

35m type Patrol Craft PC 35メートル型巡視艇「よど」型

「よど」型では放水塔が二連の門型となり、消防艇としても十分な風格を備えている。そしてついに放水能力は純然たる消防艇の「ぬのびき」型を凌駕するに至った。当然ながら「ぬのびき」型代替として建造が進められていた。

ただ、昨今の警備業務を重視する傾向から建造は4隻にとどまり「ぬのびき」型全艇を代替することはできなかった。同クラスであるPC型巡視艇ではテロ対策能力が高くRFSタイプの13mm機銃(GAU-19)を搭載した30メートル型「はやぐも」型巡視艇のほうが優先・重視されていたのである。

そのため今回のニュースは海保の防災能力が震災を受けて向上するかのように報じているが、実際はもっと以前に退役させ更新しておくべきだったものに震災を理由として予算がとりやすくなった、というだけである。本来は震災が起きる前に揃っておかなければならなかった。「現行の」消防艇より全長が5メートル伸び速力が10ノット程度速くなるというが、それこそ「現行の」「よど型」で実現している。

不幸中の幸いといえば不謹慎だが、千葉のコンビナートだからこそ、横浜海保の現「ひりゆう」と「はまぐも」で対処できたのだ。こうした船がそろっていなかったら、被害が拡大していた危険性も否定できない。

本質的、根源的には、警備も救難も欠かすことが出来ないにもかかわらず、起きてしまった事案に対処療法的な予算措置しか出来ない海保の状況を変えるべきなのである。

防災関係の予算がとりやすくなったのは先日発表された「次の」予算概算要求にも如実に現れている。まだ、3時補正予算「案」であり、要求が通るかどうかも確定していないにもかかわらず、(消防型)35メートル巡視艇及び上記NHKニュースでも言及のあった災害救援物資輸送能力を備えた巡視船が「継続」扱いで掲載されている。補正での「災害対応」巡視船艇の建造が既に国交省や財務省で内定しているということなのかもしれない。

(しかし、消防型6隻ということは4隻残っている「ぬのびき」型以外にも更新するということになるが・・・)

一方でこの建造が、本当の意味での「震災対応」とは言い難いことも示している。

平成24年度海上保安庁関係予算概算要求概要について

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消防型は、やはり「よど」型と寸分違わないし、災害対応強化1000トン型もヘリ甲板のない、いわゆる「新(々)1000トン型」巡視船そのままだ。前者は更新計画が震災をきっかけに再開しただけだとも言えるし、後者は船内配置の見直しのみで災害対応をうたっているだけとも言える。

関連エントリ:海上保安レポート2011と新(々)1000トン型

海保概算要求では「しきしま」級のような適当な写真でお茶を濁すこともあるがこの二種類についてはこれで確定だろう。

本当の意味での災害対応はその後の項目、救難資機材の整備や航路標識の防災対策のほうが重要だろう。前者は瓦礫のある水面下での長時間の捜索活動に対応するためであり、後者は震災で航路標識が大きな被害を受けたことへの対応だ。

特に特殊警備隊以外へ閉鎖回路型潜水器の配備は注目に値する。

一方で、よく分からないのが新型ヘリコプターだ。

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どうみてもS-76Cである。ご存知の方も多いかと思うが、同機は海保やマニアの間においてすこぶる評判が悪い。導入の経緯にも不透明なところがあるが、結局、損耗機の充足分も含め5機のS-76C/C+が導入された。これの新型ということはS-76C++かS-76Dということになる。

新世代のS-76Dが初飛行

基地用ヘリとしてはAW139の導入を進めているにもかかわらず、さらに新型ヘリの導入というのはあまり考えられない。既存のS-76C/C+導入基地を同系統機種で統一しようというのも考えられなくはないが、海保にそんな余裕は無いはずだ。海保が余裕のない中で新型ヘリの導入を考えているとすれば、それは巡視船搭載用ベル212の更新である可能性が高い。

しかも、先日の「中間とりまとめ」では、既存のヘリ1機搭載型巡視船(PLH)について改装工事を行い勢力を維持するとされた。以前は、一部が改修を待つことなく解役されるという話があったにもかかわらず、だ。こうなると、「そうや」で当初考えられていた本格的大規模改装が実施されヘリ関連設備も更新される可能性が出てくる。

しかし、S-76系列といえども既存のC/C+が搭載機として運用されたことはない。震災では「いず」から患者を移送していたが、格納庫に搭載となると話は別だ。

というか、導入される機体が全く「別」のものであることも考えられる。画像はサーチライトが画像伝送装置になっていたり、何も無いところが吊り上げ装置とされていたりする。便宜上S-76Cを使用しただけではないだろうか。実際、海保はSST輸送用特殊ヘリの選定について概算要求に掲載したとき、海保塗装のS-92の画像を使っていながら実際に採用されたのはEC225だった。今回もそういう「適当な」画像であるかもしれない。

実際の「新型ヘリ」とはどのような機種で、本当にPLHに搭載されるのか気になるところだ。


本当の意味で今回の震災を受けて何か対策がされた巡視船が建造されるとすればもっと先のことになるだろう。では、今回の建造が不要なのかといえばそうではない。震災が起きる以前から必要だったものばかりだ。老朽船の更新が進むことは純粋にファンとして喜ばしい一方、対処療法的な対策しか打ち出せないようでは海保の限界も近いのではないかと危惧している。何かが起きてからでは遅いのだ。 このエントリーをはてなブックマークに追加

tag : 海上保安庁 巡視船 巡視艇 消防船 消防艇 PLH 東日本大震災 ヘリ

2011-10-06 : 海上保安庁 : コメント : 27 : トラックバック : 0
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過去の脱北船事例その2「ズ・ダン号事件」

今回の脱北者に対し「一時庇護のため」の上陸許可が出された。
その一方で、彼らの背景についても報じられている。

脱北者に一時庇護上陸許可=韓国に移送へ-テレビやゲームして過ごす

 石川県・能登半島沖で保護された脱北者9人について、入管当局は16日、入管難民法に基づく一時庇護(ひご)のための上陸を許可した。近く韓国に移送される。

 藤村修官房長官は同日午後の記者会見で、「迅速かつ適切に対応したい」と述べた。

 一時庇護のための上陸許可は、外国からの難民などに適用され、在留資格がなくても上陸を認める特例措置。入管当局は脱北の経緯などについて審査し、人道的な観点から判断したとみられる。在留が認められた期間は1カ月。

脱北者“北朝鮮では未来ない”

石川県輪島市の沖合で小型の木造船に乗って見つかった男女9人の脱北者は、14日、日本への仮の上陸が認められ、近く韓国へ向けて移送される見通しです。海上保安庁や入国管理局は9人らから事情を聞いて、脱北の経緯を調べていますが、男女らは、「韓国などほかの国では電気がいつでも使えるなど、より豊かで自由な生活が出来ると国内の市場などで聞いた。北朝鮮では、未来が見えないと思った」という内容の説明をしていることが分かりました。また、9人のうち責任者と名乗る男性はこれまで、「軍の資金を獲得するために働いている漁師だ」と話していますが、男女らは、「生活に苦しむ農村の国民などに比べ、金は持っているが脱出しようと思った」とも話しているということです。9人の中には、真っ白なTシャツを来ている人がいるなど比較的身なりがよいことなどからも、海上保安庁などは深刻な生活の苦しさよりは、他の国に憧れてより豊かな暮らしを目指して脱北を試みた可能性もあるとみて経緯を調べています。

「裕福」なはずの漁師、なぜ決死の脱北? 背景に軍の呪縛と腐敗

 国内でも海産物は貴重なタンパク源として、高値で取引される。漁師側も漁獲量を全て報告せず、一部を闇市場に流し、現金を蓄えてきた。「北朝鮮で内陸部の住民より漁師は豊かとされた」(加藤理事長)

 それでも脱北を決めた一家。脱北者男性は入国管理局に「軍に納める金額が高く、年々生活が苦しくなってきた」と理由を語った。

 石丸氏は「経済難から軍に対し、独立採算で自活しろという圧力が強まり、上納のノルマが上がっている」と説明する。



「反乱」や「海賊行為」をともなった「平新艇事件」と事情が少し異なる、こうした脱北船の始まりは87年の「ズ・ダン号事件」が始まりと言えるかもしれない。

船の大きさは異なるものの、脱北者の動機や海保の対応など今回の事件との共通点も多い。

当時の報道から当時の様子を見ていこう。

1987年1月23日 朝日新聞
北朝鮮漁船が福井へ密入国 未成年者含む11人

 福井県坂井郡三国町の福井新港に、未成年者4人を含む男女11人が乗った朝鮮民主主義人民共和国の清津直轄市の漁船型鋼船・清津号=約50トン、キム・マンチョル船長(47)=が密入国した事件があり、敦賀海上保安部は、22日夕方、航海に必要な食糧などの援助、機関の修理を終えたうえで出港を認める方針を明らかにした。この理由について、第8管区海上保安本部(舞鶴)と同海上保安部は、キム船長らが、希望する行き先を具体的に挙げておらず、福井新港への入港は船の故障と食糧援助を求める緊急避難、としている。

ただ、この記事では、北朝鮮漁船がいきなり福井新港で発見されたかのように書かれているが、事実は少し異なる。

海上保安事件の研究 第7回(捜査研究No.648 2005.7)では以下の様に説明されている。

 昭和62年(1987年)1月20日の18時ごろ、福井港において荒天避泊のため錨泊中の貨物船K丸の船長から、北朝鮮籍らしい船が本線に横付けし、朝鮮語で水・食料の援助を求めている旨の通報を海上保安庁が受けた。ただちに敦賀海上保安部、三国海上保安署の巡視船艇により調査した結果、この船は北朝鮮籍の漁業取締船「ZU-DAN9082号(以下Z号と略)」(総トン数50トン)で医師でもある船長K(46歳)等、全部で11名(未成年者4名を含む)が乗船しており、水や食料の援助を求めていることが判明した。しかし乗員全員が有効な旅券または乗員手帳を所持していなかったので、出入国管理及び難民認定法違反の疑いもあり、必要な援助を与えたまま事情聴取のため、巡視船により同船を曳航して敦賀港に回航した。

そして事情聴取の結果、彼らが「南の暖かい国」に行くために北朝鮮から脱出したことが判明する。その途中で2基あるエンジンのうち1基が故障。漂流してたどり着いた先が福井新港だったというわけである。そこで海上保安庁は不法入国容疑での捜査を打ち切り、関係各所に連絡するとともに必要な援助と保護を与えるため彼らを巡視船で安全確保することとなった。

 一方、問題となったのは、彼らの希望する「南の暖かい国」がどこを指しているのか、ということである。外務省の担当者も含めた事情聴取では「韓国に行ってもよい」とする者もいれば、残された親族を心配し「韓国に行けばどうなるのかわからないので、韓国だけは嫌だ」という者もおり、一行で統一された行先が決まっているわけではなかった。

 そしてこの時からすでに、事態の複雑化が予想された。問題は4年前にさかのぼる。脱走した兵士を知らぬうちに北朝鮮から日本に連れてきてしまった第18富士山丸が、再び北朝鮮を訪れた際に手に乗員もろとも抑留されたのだ。密出国した脱走兵が、日本で亡命の意思を示したため通常の密入国者として送還の処理ができなくなったことが背景にあった。北朝鮮は日朝貿易に従事していた第18富士山丸による送還を希望していたが、それが実現できなくなり、海上保安庁などが出港に際して懸念を示していたものの、船長らは朝鮮総連からの保証があることを理由に北朝鮮へ入港。そのまま逮捕されてしまったわけである。今回、再び亡命ということで送還しなければ、抑留された彼らの帰国が遠のくのみならず、扱いも悪くなりかねない懸念があった。

 そして、入港翌日には北朝鮮からの圧力が海上保安庁を襲い始めたのである。

1987年1月30日 朝日新聞
渦巻く南北の宣伝合戦 動きとれぬ漂着北朝鮮船

入港翌日には、早くも北朝鮮側が動いた。朝鮮総連福井県本部は「単なる事故」として21日から敦賀海保への働きかけを続け、「乗員早期返還」を要求。北朝鮮政府も23日には朝鮮交通委員会海運総局の声明などで「(北朝鮮の)元山へ家族や親せきに会いに行く途中、エンジン故障で漂流した」と主張。「人道的見地から、船と乗員全員を直ちに清津港へ送り返すよう」求めた。

当然ながら韓国や民団も黙ってはいない。

 一方、韓国居留民団は「明らかに亡命」と受け止め、「南の国」は韓国を指す、としてキム船長らの行動を歓迎。韓国政府も24、26日の両日、崔コウ洙外相^が御巫駐韓日本大使を呼び、「人道的考慮、国際慣行に基づき、早急に満足のいく解決が図られるように」と要望した。

洋上であわや「衝突」という事態まで起きた。

現地の敦賀では、25日北朝鮮の国旗を手にした約60人が敦賀海上保安部前で、「送り返せ」と大声でこぶしをつき上げ、ほとんど連日、数十人が気勢を上げている。総連側は記者会見し「亡命の意思が少しでもあれば到着時に意思表明しているはず。日本がキム船長に洗脳工作をしている」と対日非難のトーンを強めている。一方、民団の人たちも連日のように「歓迎」などと書いたプラカードや横断幕を持ち、チャーターした船で「ズ・ダン」周辺で「歓迎パレード」。ついには民団系の「歓迎船」3隻と、総連系の「早期送還」を求める船5隻が異常接近する事態も起きている。

この時の警備の様子がのちに海上保安新聞(第2398号平成10年4月23日, 海上保安庁創設50周年企画 あのころあのとき)に掲載された。当時の苦労をこう語る。

千トン型巡視船である『わかさ』を沖合に錨泊させ、Z号をそれに横付けしたが、抗議団体がプレジャーボートなどでやってきて亡命者が船外に顔を出すと、拡声器で強烈に非難を浴びせる。大型巡視船で挟んで接近させないようにする警備が大変でした。


そして国内政治まで蠢きはじめる。韓国との関係を重視する自民党と北朝鮮との友好を目指す社会党もそれぞれ圧力を加え始めたのである。

一方、韓国政府は事情を考慮し直接の入国を求めない方針であると報じられた。つまり、第三国を経由するのである。

1987年1月31日 朝日新聞
外務省が漂着した北朝鮮船の受け入れ先捜しへ

 外務省は30日、福井県に漂着した朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の資源保護監督船ズ・ダンの乗船員11人について、日本、北朝鮮、韓国以外の第三国に渡航させる方針を固め、受け入れ先との非公式な打診を始めることにした。同省幹部は30日、「渡航先と想定できる所が旧正月休みに入っている」と述べ、台湾、香港などが念頭にあることを示唆した。第三国に渡航させる方針を固めたのは、韓国が引き渡しを求めない態度を表明したのに加えて、11人の意思確認作業の中で、(1)北朝鮮へは戻らない(2)日本にとどまる意思もない、などの点がはっきりしたためだ。

そして台湾が名乗りを上げた。

1987年2月5日 朝日新聞
台湾、ズ・ダンの通過寄港認める反応

 政府筋は4日、福井県敦賀港に停泊中の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の船ズ・ダンの乗船員11人の受け入れ先として打診していた台湾から、民間ルートを通じて(1)11人の意思が一致すればトランジット(通過寄港)は認める(2)11人の定住は受け入れにくい、との反応が伝えられてきたことを明らかにした。しかし、政府としては、乗船員の最終的な定住先が確定しないままの出航は人道的見地からもさせられないとの立場から、定住を認める国を探すため、東南アジア諸国を中心に打診を続けていく方針だ。

こうなると、残された問題はどうやって彼らを台湾まで移送するか、ということだった。

もちろん白羽の矢が立ったのは彼らを保護している海上保安庁である。

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テーマ : 歴史
ジャンル : 政治・経済

tag : 海上保安庁 脱北 北朝鮮 韓国 YS-11 PLH

2011-09-17 : 北朝鮮問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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