都知事の尖閣諸島購入騒動の陰で放置される海保法改正案

現在、尖閣諸島問題が騒がしい。
それも尖閣諸島周辺ではなく、ワシントンや東京で、だ。

大きく報道され誰もがすでに耳にしている「東京都による尖閣諸島購入計画」のことである。

発端は1週間ほど前、ワシントンでヘリテージ財団が開催した講演会で飛び出した。

東京都が尖閣諸島購入へ ワシントンで石原知事が明言 「日本人が日本の国土を守る」

ワシントン=石元悠生】東京都の石原慎太郎知事は16日午後(日本時間17日未明)、ワシントン市内のシンクタンクで講演し、「日本人が日本の国土を守るため、東京都が尖閣諸島を購入することにした」と述べ、尖閣諸島の魚釣島、北小島、南小島を個人所有する地権者と交渉を開始したことを明らかにした。

 石原知事は「日本の国土を守るために島を取得するのに何か文句ありますか。ないでしょう。やることを着実にやらないと政治は信頼を失う。まさか東京が尖閣諸島を買うことで米国が反対することはないでしょう」と話した。

 石原知事は会見後、「尖閣諸島の周辺は豊穣(ほうじょう)な漁場で、自然エネルギーの開発でも大きな可能性がある。世界遺産に登録された小笠原のような豊かな自然も世界的に貴重なもの。都がこれまで培ってきたノウハウも生かしながら、この島々を舞台としてさまざまな施策を展開すべく、購入に向けて検討に入る」とするコメントを出した。


この発言に対し、日本国内は騒然となった。国民の間では大方が賛成意見とされているが、新聞では「都が購入」という点に対し違和感や疑問を持つ社説が多かった。

 この社説についてはかなりの数に登るので別のエントリで纏めるつもりだが、個人的な意見を言わせてもらえばこれら(産経を除く)社説の懸念は分からなくもない。

 まず、都が買うべきかどうかという問題。

 別に東京都が他の自治体の土地を購入することに問題はない。たとえば東京や大阪には各地方自治体の事務所やアンテナショップが数多く存在する。また、いくつかの新聞記事で指摘されているように東京都が他県の土地を購入し施設を設置している例もあるという。

石原知事の尖閣購入に高いハードル、理由・測量…

 尖閣諸島の購入には都議会の議決が必要で、都民の納得する取得理由も求められる。都は現在、山梨県内の水源林(計1万3810ヘクタール)や千葉県松戸市の都立八柱霊園(105ヘクタール)などを保有。千葉や神奈川、静岡県内には福祉や教育に関連する施設の土地を持っているが、都民サービスに直結する物件ばかりだ。


 だが、それらは近隣の自治体であり都民への住民サービスに直結している施設である。

 いくら都の財政状況が他の自治体と比べてずば抜けていいとしても、首都直下地震やエネルギー問題が懸念されいくらでも予算が必要な中で、都民へのサービスに直結するとは考えにくい尖閣諸島の購入が都民からの税金で進められるべきだろうか?

 そういった意味では猪瀬副知事がTVで言及した寄付・基金案(その後、募金講座が開設された)は当然ともいえる。

尖閣諸島買収費3~5億円「都民や全国から寄付」(猪瀬副知事)

・・・がこれにも疑問がある。この募金は都の負担や軽くし都議会での承認を得やすくする目的もあると思われるが、逆にそれで資金が集まるのであれば最初から都でやらずに国民運動の基金組織を作ればいいということになる。

「尖閣購入」で寄付口座開設=全国から賛同募る-都

東京都の石原慎太郎知事は27日の記者会見で、沖縄県・尖閣諸島の購入費に充てる目的で、都の名義の口座を同日付で開設し、全国から寄付を募ると発表した。「尖閣購入」に賛同する国民に協力を呼び掛けることで、税金投入額を減らし、都民の理解を得やすくする狙いがあるとみられる。
 石原氏は、自身が「尖閣購入」を表明して以降、寄付の申し出が多数あるとした上で、「こうした志を受け止めるため口座を開設する」と説明。口座名は「東京都尖閣諸島寄付金」で、金融機関からの振り込みなどで受け付ける。

都民以外からも寄付受け付け…尖閣購入

 東京都は27日、「尖閣諸島寄付金」の受付口座を開設した。

 都民以外からの寄付も受け付ける。都は募金について「尖閣諸島の購入・活用のためにあてる」としている。振込先は、みずほ銀行東京都庁出張所「普通預金1053860」。口座名義は「東京都尖閣諸島寄付金」。振込手数料が発生した際は、寄付を行う本人の負担となる。


 この募金による資金調達が足りず購入予算の議会承認が必要となるも、失敗した場合、中国は日本国内の土地売買であるにもかかわらず、そうした経緯を無視して「日本の実効支配の正当性が崩れた」と喧伝する危険性もある。

 実際、中国政府は沖ノ鳥島周辺海域の大陸棚延長が(一部を除いて)大陸棚限界委員会で認められたにもかかわらず、日本の主張は根拠がなく国際的にも認められていないと自国の主張に沿った解釈で非難している。

沖ノ鳥島:日本の大陸棚基点発表に中国側が異議

中国外務省の劉為民報道局参事官は28日夜、日本最南端の沖ノ鳥島8件が大陸棚の基点として国連に認められたと日本政府が発表したことについて、「国際的に主流の見方は日本側の主張を支持していない」と異議を唱える談話を発表した。

 劉参事官は「国連の大陸棚限界委員会は結果をまだ公表しておらず、日本側の発表が何を根拠にしているのか分からない」と指摘。沖ノ鳥島8件は岩にすぎないとする中国側の立場に変わりがないことを強調し、「国際法に基づけば排他的経済水域(EEZ)や大陸棚の基点とはならない」と主張した。

この沖ノ鳥島問題は海上保安庁による海洋権益確保や東京都の離島管理、そして中国の海洋進出とも深く関わっているので、後述するとともに別エントリでも説明する。

 都知事は、今回の購入について東京都の離島管理の実績を強調する。都が沖ノ鳥島や小笠原諸島などで実績があることを上げる。

漁業開発「都民で検討」 尖閣諸島買い取り

尖閣諸島(沖縄県石垣市)の買い取りを表明した石原知事は17日(日本時間18日)、滞在先の米ワシントンで記者団の取材に応じ、同諸島で漁業資源の開発に乗り出す考えを示した。「何をやるか、都民で考えたらいい」と語り、都議会に対しては「話題になれば説明する」とした。 石原知事は、同諸島の利用法について「魚礁を作り、漁業開発をしたらいい」と主張。沖ノ鳥島(小笠原村)で漁業資源開発を行っているこれまでの都の取り組みが参考になるとした。

尖閣早期購入を要請、石垣市長が石原知事と会談

 東京都の石原慎太郎知事が沖縄県石垣市の尖閣諸島の購入を表明したことを受け、同市の中山義隆市長が23日、都庁で石原知事と会談し、早期の購入を要請した。石原知事は地権者と価格交渉を急ぐとともに、同市に都の専門職員を派遣し、世界自然遺産の小笠原諸島などで都が培ってきた自然保護のノウハウを提供していく考えを伝えた。

 実際、そうした都の離島周辺海域での漁業振興や島で繁殖する羊の駆除を行ってきている。確かに外部から持ち込まれた羊の繁殖は独自の閉鎖性体系を持つ離島にとって致命的で、魚釣島でも海上保安官が上陸する際に小銃を持ち込んで駆除を検討したこともあるという。一方で、東京都が沖ノ鳥島などで行ってきた漁業振興策と言えば漁業調査船による水産調査と当該海域に出漁する漁船への燃料補助程度だ。

小笠原から見た北方領土:/5止 遠い漁場 燃料代かけEEZ維持

 「国土面積より広いEEZを失っていいのか」。菊池滋夫・東京都漁業組合連合会長(84)らが石原慎太郎・東京都知事に訴え、05年から小笠原島漁協所属の1隻がこの海域で経済活動を始めた。

 10年度は17・6トンを水揚げした。うち約82%が魚価の高いキハダマグロ。漁場が遠いため燃料代はかさむが、11年度の都からの補助は用船代なども含めて7469万円。「本来であれば国がやってしかるべき事業だが、まずは知事が動いた」。都農林水産部の担当者は説明する。

記事にあるとおり、この燃料補助は「国がやるべきこと」を先行して都が行ったという意味で、尖閣諸島購入にも通じるものがある。

だが、実際には燃料補助を受けた小笠原の漁船よりも、サンゴ密漁を目的とした中国や台湾の漁船のほうが盛んなのではないかと思えるほどだが、都はこうした離島や海域の権益保護のために新たに外洋航海に耐えうる高速漁業取締船の建造を行ってきたわけではない。

また、燃料補助を尖閣諸島で行うとしても東京都の漁業者よりも先島諸島の漁業者を対象にしたほうが効率的だが、この場合も都の予算をそうした目的で使っていいのかという問題が残る。

 尖閣諸島周辺は水産資源が豊富で海底資源もあることから、石原知事は利用方法の一つに「漁業資源の開発」を挙げた。しかし、尖閣諸島は東京から約1900キロ離れ、東京の漁業者が漁場として利用するには遠すぎる。「自然遺産、文化遺産としての保護」を理由にする案もあるが、これも都政との関連は見えにくい。



 既に尖閣諸島周辺の漁業支援は水産庁が外国漁船被害救済事業として行っている。



今年度中 数回調査へ/尖閣海域

 水産庁は13日、宮古島漁業協同組合(小禄貴英組合長)で、北緯度以南にある尖閣諸島を含む海域の漁場調査に向け説明会を開いた。今年度中に、伊良部漁業協同組合(友利義文組合長)所属の漁船などをチャーターし、数回に分けて調査する。同庁資源管理部沿岸沖合課指導係の高橋英也さんは「調査には、新規漁場開拓もある」と強調し、今後の調査に期待を込めた。

 同庁は、今年度「外国漁船の操業による漁具破損などの被害の救済による漁業経営の安定」を政策目標に掲げ、外国漁船被害救済事業で2億円の予算を確保した。

 このうち宮古関係では、伊良部漁協に350万円、宮古島漁協に136万円の計486万円の助成金を計上した。

 伊良部の漁民らは、外国漁船の操業状況調査や外国取締船の行動調査、漁場調査を実施する。


尖閣沖調査操業、一本釣り700キロ超の水揚げ 外国漁船は見られず

 八重山漁協(上原亀一組合長)が水産庁の外国漁船被害救済事業を導入して尖閣周辺で行っている調査のための操業で、一本釣りの調査を行ってきた漁船3隻が1日午前、石垣漁港にアカマチ368.4キロを含む736.4キロを水揚げした。今回の調査では外国漁船の操業は確認されなかった。


もっとも、この「事業」には民間の漁船に対して外国の漁業監視船に接近して情報を収集させるという問題点もあったが・・・

関連エントリ:民主党の「特設監視艇」、漁船に中国船を監視させ海保には報告せず

※過去エントリでも掲載しているマニュアルは、後に水産庁ではなく実施主体である地元漁協が組合員向けに作成したものだと判明。

参議院議員片山さつき君提出「外国漁船被害等救済マニュアル」に関する質問に対する答弁書

 お尋ねの「外国漁船被害等救済事業マニュアル」は、漁業協同組合等に対する補助事業として平成二十二年度第一次補正予算に計上した外国漁船被害救済事業の実施主体の一つである伊良部漁業協同組合が、同事業として実施する外国漁船操業等調査のための組合員向けの文書として作成したものであり、同事業を所管する水産庁を含め、政府として、その存在を承知していなかったところである。同調査の実施に当たっては、漁業者の安全を確保し危険が及ばない方法で実施するよう、全ての事業実施主体に対して指導しており、御指摘の「フラッシュを焚いて写真撮影する」ことを政府として要請した事実はない。





 東京都がアピールする沖ノ鳥島での実績も事実とは異なる。沖ノ鳥島は東京都が維持費を負担できないため国土交通省の京浜河川事務所が中心となって保守管理しており、周辺海域は海上保安庁や水産庁がパトロールしている。海上保安庁の灯台設備や国土交通省の試験設備はあるものの、都が一時期アピールしていた経済活動は漁業を除き実現してはいない。

 先ほども書いたが沖ノ鳥島については別エントリで詳しく見ていく。

 ここでひとつ個人的に言わせてもらえば、都が尖閣諸島を購入するより前に、某架空戦記のように沖ノ鳥島施設を再整備し都職員を常駐させるべきだろう。

沖ノ鳥島爆破指令
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経済水域問題に頭を悩ます政府。話題作りのため沖ノ鳥島移住を命じられた都庁職員一家が、日本最南端の島をめぐる攻防に巻き込まれ……




また、今回の騒動で数多くみられる勘違いとして尖閣諸島が都の所有になることにより、警視庁によって警備される、というものがある。これも荒唐無稽なものだ。たとえば、自治体が東京や大阪に保有する事務所の警備ために自県の警察官を派遣しているだろうか?所有権と行政権はあくまで別個のものである。

たとえ行政権が東京都に移管されたとしても警視庁に尖閣諸島を警備する能力はない。一応、都内離島を管轄するために警視庁最大の警備艇「ふじ(視1)」と最大のヘリEH101「おおぞら一号」は長大な航続性能があるが、尖閣諸島の警備には到底無理だ(警視庁の貴重な戦力でもある)。

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警視庁警備艇「ふじ」(視1:湾岸署所属)後方は税関艇、上空は海保ヘリ
「ふじ」は海上保安庁観閲式・総合訓練の常連ゲストでもある

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警視庁航空隊EH101(AW101)「おおぞら1号」
EH101(現:AW101)の世界唯一の民間型である

 さらに、酷いものになると「都が所有することにより自衛隊の出動が可能になる」というものまである。いつから自衛隊は州兵ならぬ都軍やリアル石原軍団になったのだろうか。その根拠は都知事が災害派遣要請を出すことができる、ということらしい。しかし、現状でも沖縄県知事や第11管区海上保安本部長により災害派遣要請は出すことが可能である。いうまでもないことだが、武力侵攻に対し災害派遣で対応することなどありえない。尖閣諸島が私有地だろうと都有地だろうと、武力侵攻事態への対応、すなわち防衛出動は(法律上は)可能である。


 つまり、都が尖閣諸島を購入するからと言っても、過度な期待はできない。

 もっとも、周囲が期待しているのは実際の経済活動ではなく政治的な意味だろうし、本人も「国が出てくれば下がる」と述べている。国会議員時代から運輸相時代も含め尖閣諸島問題に関わっていることを考えれば、都政よりも長い関係とも言える。現在の政府から国有化の検討という言質をとれたのは最大の功績だろう。

「必要なら国購入も」官房長官が表明

 藤村修官房長官は17日午後の記者会見で、石原慎太郎東京都知事が沖縄県・尖閣諸島の購入に向け最終調整をしていると明らかにしたことを受け、必要な場合は国による購入もあり得るとの認識を示した。国境にある離島は国が管理すべきだが、領有権を主張する中国を刺激するのを避けたいため実効支配の強化に対策を十分にとっていなかった。政府も重い腰を上げざるをえない状況となった。




 一方で、こうした政治的注目により高まるリスクもある。

 日本政府は以前より尖閣諸島は明確に日本固有の領土であり、領土問題そのものが存在しないとしてきた。あくまで、中国や台湾の一方的な言いがかりである、と。しかし、今回の都知事の騒動が日本国内だけでなく海外からも注目されることにより、国際社会から「尖閣」=日中間の領土問題と認識される危険性がある。特に今回の最初の発言はワシントンで飛び出したためニュースはすぐさま各国に配信されることになった。これは中国にとっては有利な展開だ。

 今後、尖閣購入資金の募金は国民的な運動に発展する可能性もある。一方でそのように大きな運動となり国際メディアで報じられることは何も日本にとって有利になることばかりではないのだ。

 今回、中国政府が抑制的な反応なのはそうした側面があるのだろう。もちろん、南シナ海の火種を抱えた状態で二面作戦はとれないということもある(現在も海監とフィリピン海軍・PCG艦船がにらみ合いを続けている)。さらに、中国が冷静な態度で話し合いを求める姿勢を続ければ、領土問題で日本が一方的に強硬姿勢を貫いているという(中国の思惑通りの)印象を与えることも可能だ。日本にとっては、尖閣諸島が領有権問題と認識され話し合うべきだと求められた時点で、「負け」なのである。

 尖閣諸島が明確に日本の土地であるならば、淡々と私有され続け、売買も行われるべきなのだ。それこそ中国人や中国資本が尖閣諸島を購入したとしても日本の固有の領土であることに変わりはない。日本の不動産手続きを認めることはすなわち行政権と領有権を認めることになる。中国人の土地であろうと日本国内である以上、そこに行くには正規の入国手続きが必要だ。過去には、尖閣諸島を所有する地主に中国人投資家が購入を持ちかけた、等という話もあるが、実現していたらある意味面白いことになっていただろう。

 もっとも自民党はそうした売買や外国人私有を制限する法案を出してきている。

国境離島保全へ強制収用法=自民

 自民党は26日、沖縄県の尖閣諸島など国境の無人島を外国人が買い取るなどした場合、国が強制的に収用できるとした法案をまとめた。各党に協力を呼び掛け、今国会提出を目指す。
 法案では、国が国境の無人島を管理する必要があると判断した場合、買い取りや借り上げなどの措置を講じると規定。特に管理強化が必要な場合は、土地収用法に基づいて強制取得できるとした。また、国が島の管理に関する基本方針を策定し、島に標識を設置することも定めている。

既に、所有者のいない無人島は国有財産として海上保安庁の管理下にある。

離島23カ所を国有財産化 尖閣周辺は対象外 中国の反発になお弱腰

 政府が日本の排他的経済水域(EEZ)の基点となる離島23カ所を国有財産化していたことが6日、分かった。国有財産法に基づき昨年8月、南西諸島などに位置する離島を海上保安庁の「国有財産台帳」に登録した。

 民法では所有者のいない不動産は国庫に帰属すると定められている。政府は23カ所の島の不動産登記などを調べたが、いずれも所有者が存在せず、国庫に属していることが確認された。

 国有財産化にあたり、海上保安庁を管理者とし、海保が業務に用いる「公用財産」として登録。波による浸食や他国の侵害に海保が責任を負うことも鮮明にした。



今回、都が尖閣諸島を購入したあと所有権を放棄すれば、政府がわざわざ購入の意思表明などしなくとも国有財産法に基づき海保の「業務」に用いられる財産となったはずだ。2005年には、日本青年社が所有者の許可を得て魚釣島に設置した灯台が、所有権放棄により海保の設備となっている。この灯台こそ、都知事が外務省の横槍で海保作成の海図に記載できなかったと何度も口にしていた灯台であった。

尖閣諸島「魚釣島灯台」の管理開始

 平成17年2月、海上保安庁は、航路標識法に基づく所管航路標識として、「魚釣島灯台」の管理を開始しました。
 魚釣島灯台は、昭和63年に日本の政治団体が設置したものですが、これを所有していた漁業者から所有権放棄の意思が示されたため、民法の規定により、国庫帰属財産となりました。
 魚釣島灯台の取り扱いについては、長年、付近海域での漁ろう活動や船舶の航行安全に限定的とはいえ寄与している実績等を踏まえ、政府全体の判断として、その機能を引き続き維持することとなり、必要な知識、能力を有する海上保安庁が保守・管理を行うこととなりました。

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尖閣諸島灯台を国家に移譲!!

 そもそも尖閣諸島の灯台は海上保安庁の指導を受けて完成し、魚釣島漁場灯台の名称も海上保安庁が命名したのですが、私どもが再々提出した灯台の管理許可申請に対して政府は「対外的な問題が介在しているので暫く猶予期間が欲しい」「現在関係官庁と検討中、結論を延期したい」などの理由で今日まで許可申請は保留にされてきました。





 だが、尖閣諸島が今後、都の所有になり、さらには国有地となるとしても、重要な問題が放置されている。


 海上保安庁法改正案だ。

海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案について

我が国周辺海域における情勢の変化等に対応して、海上保安官等が一定の離島における犯罪に対処できることとするとともに、領海等において停留等を伴う航行を行うやむを得ない理由がないことが明らかであると認められる外国船舶に対し、立入検査を行わずに勧告及び退去命令を行うことができることとする等の改正を行う。


 この改正によって尖閣諸島を含めた特定離島において海上保安庁が陸上犯罪に対しても捜査活動を行うことが可能となる。現行の法律でも、船舶による不法上陸・不法入国に対しては海上保安庁が陸上捜査を行うことが可能だし、実際に行っている。このニュースに関する報道や個人ブログで多く見られる、陸に逃げこまれたら海保が手出しできないというのは大きな勘違いである(関連エントリ参照)。大きな違いは、船舶以外の不法上陸・入国や上陸後の破壊活動に対しても海保が対応可能になる点だろう。

関連エントリ:海上保安庁に陸上警察権が付与される意味

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(関係者は明確に「ヘリボーン部隊にも対応が可能」と表現した。実際過去には、台湾の退役軍人がチャーターしたヘリによる尖閣上陸を計画したことがある)

 こうした法改正に備えて海上保安庁では、水陸両用任務部隊設置の検討を行っているという。この部隊を世界の艦船記事は「海兵隊的性格を持つ特殊部隊」と説明した。また、その部隊は一切、存在すらも公表されないだろうとも。そうした性格は、SSTだけでなく国際組織犯罪対策基地・捜査隊や今は存在しないが原子力発電所警備対策官部隊にも見られた。十分ありうる話だろう。

 ところが、この改正案は閣議決定された後まったく動きがない。

海保警察権強化 法案を閣議決定

 政府は28日、海上保安庁による海上警察権を強化するため、海上保安庁法と領海等外国船舶航行法の一部を改正する法案を閣議決定し、国会に提出した。国境の離島での不法上陸などに対し、海上保安官が警察官に代わり陸上で捜査・逮捕できる規定を盛り込んだ。



 というのも国会が大臣問責問題で事実上、停止しているからだ。重要法案のことごとくが成立未定である。そしてその中には海上保安庁法改正案も含まれる。しかも悪いことに問責されている大臣の一人は国土交通大臣だ。すべての委員会で野党の審議拒否という事態は避けられつつあるが、海上保安庁法改正案が付託されるだろう国土交通委員会はほとんど絶望的である。このまま閉会を迎えればこの法案は廃案となる。

問責閣僚 国会審議考慮し改めて判断

民主党の前原政策調査会長は、滞在先のモスクワで同行の記者団と懇談し、問責決議を受けた前田国土交通大臣と田中防衛大臣について、野田総理大臣が消費税率引き上げ法案などの国会審議への影響を考慮して、改めて続投させるかどうかを判断することになるという見方を示しました。

一体改革:関連7法案の審議 8日から衆院で開始

 消費増税法案や被用者年金一元化法案、総合こども園関連法案など、税と社会保障の一体改革関連の7法案の審議が大型連休明けの8日の衆院本会議から始まる。10日と11日の本会議でも質疑した後、16日から衆院の一体改革特別委員会で実質審議に入る。野党には100時間の委員会審議を要求する声もあり、早くも6月21日の会期末までの成立は危ぶまれている。



 海上保安庁ではこうした事態を鑑みて、尖閣諸島派遣巡視船への警察官及び入管職員の同乗という現行法での対策を考えているという。事態は、目処の立たない国会審議をまっていられるほど、のんびりとしたものではないのだ。


 東京都は早い段階で、上陸チームによる現地調査を行いたいようだが、尖閣諸島への上陸手段は限られており、必然的に海上保安庁の協力が必要になるだろう。実際、過去の尖閣諸島調査では海上保安庁のヘリコプターによる輸送が行われ、そのための仮設ヘリポートも設置された(その後撤去)。

関連エントリ:尖閣諸島・魚釣島にあった仮設ヘリポートとは

img20101016184653121.jpg
仮設のヘリポートに着陸する海上保安庁の一番機
(23日午前10時20分、尖閣列島・魚釣島で)
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調査団の資材を運ぶ海上保安庁のヘリコプター=5月28日、
尖閣・魚釣島。朝日新聞社ヘリコプター「はやどり」から


 そうした動きに対し、中国が何らかの妨害工作に出る危険性は否定できない。そうした場合、海上保安庁法改正が実現していなければ、従来通り、沖縄県警部隊の派遣を行わざるを得ないだろう。都の調査チームに警視庁の護衛がつくことも考えられるが、どちらにせよ、海上保安庁の部隊よりも軽装備で少数になる。


 ちなみに、尖閣諸島警備に頻繁に派遣されている海上保安官は今回の騒動について「これで中国があきらめたら、11管区に集中配備される巡視船が無駄になるな」と皮肉った。つまり、これで中国があきらめることはないし、海保の負担が軽くなることはないという裏返しである。

 11管区には「はかた」改め「いしがき」に引き続いて「はてるま」型が新型の巡視船に更新される。さらに来年度には11管区で2隻目となるPLHの石垣配備の噂がある。新造ではなく配置換えとなるためPLHが抜ける某「西方」管区には代わりに2機搭載型巡視船が配置されるという(当初のうわさでは「しきしま」となっていたがどうやら「みずほ」型のようだ)。

 尖閣に任務として派遣されたことがない元海上保安官が尖閣諸島の専門家としてメディアに露出し、尖閣諸島での事件でまんまとデマに乗せられた都知事が尖閣諸島を買い取るという皮肉。だが、尖閣諸島を守るために必要なのは大騒ぎすることではない。

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tag : 尖閣諸島 購入 石原都知事

2012-05-04 : 尖閣諸島問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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