沖ノ鳥島大陸棚延長での真の「功労者」

沖ノ鳥島の大陸棚延長はうれしいニュースとしてネットでもてはやされている。もっともその内容や意味までがきちんと理解されているとは言いがたい。

むしろ手柄探しのネタとされているといってもいい。

沖ノ鳥島「大勝利」でネット歓喜 「野田の成果」「いや麻生のおかげ」

26日には国際水路機関(IHO)総会で、「日本海」単独表記の維持が決まったばかりだ。立て続けに日本の「威信を守った」格好の現政権に対し、

「また野田の成果かw」
「意外と日本の外交は優秀なのか」

と評価する声が上がる一方、今回の申請は2008年の麻生太郎政権時代にされたことから、

「民主党の手柄じゃないぞ。麻生政権時代の手柄だぞ」
「大陸棚拡張は麻生政権の成果」

と主張する人、はたまた視察や魚礁の設置など沖ノ鳥島問題に積極的にコミットしてきた石原慎太郎・東京都知事こそが影の功労者だとする説も飛び出していた。

結局のところ「殊勲甲」は誰なのか。自民党の佐藤正久・衆議院議員はツイッターで、

「『島か岩かの議論は別にやろう』と大陸棚認定議論から切り離した外務省の作戦勝ち」

と評している。

「野田」?「麻生」?「石原」?そのどれも功労者とは言いがたい。「外務省」?最終的な交渉をやったかもしれないが、この大陸棚延長問題で大きな役割を担ってきたわけではない。全く的外れな評価だ。

大陸棚延長の申請は、実際にその海域の海底を調査した結果なされるものだ。では誰が、どの機関が中心となってその調査を行ってきたか。このブログに来ている皆様は当然ながらご存知だと思う。


海上保安庁海洋情報部だ。

サイト内でその作業の様子を写真入で解説している。

~大陸棚の限界画定のための調査~

大陸棚調査では、一度船が出港すると、約一ヶ月間は海上での生活が続きます。日常生活とはかけ離れた過酷な環境下での調査ですが、私たちの子孫に夢を残すべく、数多くの海洋調査の専門家が日夜奮闘しています。
 政府を挙げた取り組みがますます強化される中、海上保安庁においても、今後とも大陸棚調査に貢献していきます。

大陸棚調査の日常 ~約一ヶ月間続く船上における調査~

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大時化の中、大きく傾く測量船。
それでも、測量船の後方から多数の観測機器が曳航され、調査が継続されています。


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地殻構造探査で必要となる屈折波受信器(海底地震計)を整備する乗組員。
繊細な整備が必要とされる観測機器ですが、高度な技術が必要なだけではなく、揺れる船上では強力な集中力が必要です。


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大きな重量を持つ観測機器を釣り下げて、後方から流そうとしているところ。
揺れる船上では一瞬のミスが大けがにつながる、大変危険な作業です。



海上保安庁が大陸棚調査に取り組んでいたのはここ数年の話だけではない。昭和58年からの30年近い取り組みである。

特集 新たな海洋立国に向かって > III 広がる日本の「海」 > 1.「大陸棚」を広げる

■大陸棚調査に関する年表
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大陸棚延長申請のための調査が完了した今でも海洋情報部の苦労は絶える事がないが、この調査に取り組んだ当初の苦しみはさらに大きかった。当時の事情については当ブログコメント欄の常連でもあるHMS氏のブログに詳しい。

大陸棚調査前夜物語(前編)

 1982年は、国連海洋法条約が採択された年であり、国内では折しも増税なき財政再建を目指して第二次臨時行政調査会(通称:土光臨調)が大胆な行財政改革を提言し、運輸省も組織再編を迫られていた時期である。水路部の海洋調査の仕事は翌年からの大陸棚調査、新型測量船「拓洋」の運用開始など組織的に大きく変わることが要請されていた。だが、その調査組織は、測量課、海象課、編暦課など旧海軍水路部以来の専門分野ごとに縦割りのままだったので、新たな海洋新時代に向けて調査対象海域ごとに組織体制を整備し直す必要があり、運輸本省に先駆けて組織再編に着手した。

 ここで一つ問題がある。予算が認められれば、関係する政令・省令・訓令全てを改正する必要があるので、行政組織の改正事務などに精通した上級職の事務官が欠かせない(ノンキャリアでは無理)のだが、水路部は技術系職員の集まりであり、特に水路部には本問題の実務を担うべき補佐官以下には上級職の事務系職員が皆無であった。これでは円滑な準備ができないことから、寺島課長が本庁総務部の辻課長に掛け合い、本庁からの応援を求めたところ、総務部および警備救難部から岩崎氏(前海保長官)、鷲頭氏(駐スロバキア大使)、与田氏(元内閣官房大陸棚調査対策室長)の3名が水路部に派遣されてきた。

 こうして組織改正作業が始まり、担当者は時には築地の水路部庁舎に泊り込んだりして、寝食を忘れて組織改正に取り組んだ。熱気あふれる若手チームの中には大島氏や加藤氏など後の歴代海洋情報部長の顔もあった。当時を知る関係者の述懐によれば、監理課職員は休息も休日も返上し、中には鈴木監理係長(現:水路協会常務理事)のように自宅に帰ったのが1月で4回だけなどという方も居られたという。そしてこの組織改正は、希望通りの形で認められ、新しい水路部が誕生した。

大陸棚調査前夜物語(後編)

 さて、1983年の組織改正の際に新たに認められた組織のひとつに大陸棚調査室がある。この大陸棚調査の開始を推進した立役者の一人が、組織改正を当時水路部監理課総括補佐官として推進されていた大島氏である。大島氏は、大陸棚調査室設立とともに初代室長となって大陸棚調査の陣頭に立っていた。

 大陸棚調査室設立と同時に竣工した新型測量船「拓洋」は慣熟航海もそこそこに83年10月より大陸棚調査に従事したが、慣熟航海の短さが祟って最新の調査機器に初期故障が頻発し、船務・測量作業に加えて初期故障への対策にも追われ(データを取ってこられなければ、その航海はほとんど無駄になる)、時期柄台風にも見舞われていた。陸上班は陸上班で「拓洋」との連絡やメーカーへの修理手配や打ち合わせなど、陸海共同の忍耐と努力によって問題を克服していった。

 このような大陸棚の限界確定や領海基線確定には国連やIHO(国際水路機関)が共同でガイドラインの策定を行う必要があり、自国の権利を主張するためにもニューヨークやモナコに赴いて会議や作業に参加する必要があったのだが、なんと水路部には外国出張旅費が予算上認められていなかった。それまでは必要になるたびに無理くり捻出していたそうであるが、ここで以前に水路部組織再編で派遣されてきた鷲頭氏が本庁主計課長として就任した。大島氏はこれが機会とばかりに国際会議への参加の重要性を鷲頭氏に直訴し、同氏の尽力もあって晴れて水路部に外国出張旅費が認められたそうである。

驚くべきことに、当初は国際会議や作業部会に参加するための海外出張旅費すら認められていなかったのである。

こうした組織改変の結果、海上保安庁水路部(海洋情報部)は大陸棚調査に取り組むことになったのだが・・・苦労は続くのであった。

大きな転機としては2001年にロシアが提出した申請が翌年に却下されたことがある。
ロシアはかなり詳細なデータを提出したとされていたが、それでも足りなかったのだ。

特集Web版 「科学の力で海を拓く」~大陸棚限界への挑戦~
3.大陸棚調査の加速

 平成13年、世界で初めてロシア連邦が大陸棚延長のための資料を国連の大陸棚限界委員会に提出しました。ロシアの申請に対する同委員会の勧告は、平成14年6月に行われましたが、その後、この勧告で大陸棚の延長が認めらなかったことや、その理由としてデータの不足が指摘されたという情報が伝えられはじめ、同委員会の厳しい審査の水準が次第に明らかになりました。

大陸棚延伸問題をはじめ急展開する海洋政策
2.3 ロシア申請却下とわが国の対応

 では、何故急にここに来て、大陸棚延伸問題が取り沙汰されるようになったのか。理由は、2002年6月にロシアの申請が却下されたことにある。2001年に申請されたロシアの報告内容は、海嶺(海の山脈)に絞り込んだもので、北極海だけでも5~15km間隔で約4万ポイントという丁寧な調査であったと言われている。わが国でも同様の調査方法を検討しており、今回のことから調査内容および調査体制を抜本から見直す必要が生じている。例えば、調査精度では、地殻構造調査に関しては、調査測線数を11本から82本へ、ボーリング地点に関しては61箇所から259箇所に増やさなければならないといわれている。


海上保安庁では、このロシアの提出したデータに関する情報を入手し、日本が取り組むべき調査のレベルに愕然となったとされる。インテリジェンスに弱いとされる日本だが、一見そうした世界とは無縁に思える大陸棚調査で高度な情報戦が行われたのではないだろうか。その情報戦の結果、判明した事実に海保は独力での対処が不可能だと悟った。

海保で最大かつ最高性能の測量船「拓洋」と「昭洋」2隻を、この大陸棚調査業務に専従させても到底間に合わない。そのため、他官庁に協力を呼びかけたがうまくはいかなかった。日本政府にはこのような業務が行える船を所有運用する機関がいくつかある。文部科学省(JAMSTEC)と経済産業省(JOGMEC)だ。だが、当初は協力が得られなかった。両組織とも既に運航スケジュールが決まっており、海保の業務に貸し出す余裕などないと言うのがその回答だった。運航スケジュールはかなり以前から決まっており、急に貸し出すというのも無理な話ではあるのだが、事態は海保単独の問題ではない。内閣官房が中心となって協力分担体制が敷かれることになったのである。

日本の申請準備体制と申請の提出

日本も、大陸棚限界委員会への申請準備を、政府一体となって進め、内閣に設置された「大陸棚調査・海洋資源等に関する関係省庁連絡会議」において、2004年8月に「大陸棚画定に向けた基本方針」が策定され、この基本方針に基づき、内閣官房の総合調整の下、関係省庁が連携して大陸棚調査を実施しました。

大陸棚調査にはいくつかの種類があり、それぞれ以下のような分担で行われました。

(1)海上保安庁 → 精密海底地形調査と地殻構造探査

(2)文部科学省 → 地殻構造探査(実施者は、海洋研究開発機構(JAMSTEC))

(3)経済産業省 → 基盤岩採取(実施者は、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)及び産業技術総合研究所(AIST))


日本が提出したエグゼクティブ・サマリー(調査概要書)には調査に参加した船舶・機材の一覧写真が掲載されている。

exec_sum.jpg

海保測量船「拓洋」「昭洋」「明洋」の他、JAMSTECの「かいよう」「かいれい」「しんかい65000」、JOGMECの「第2白嶺丸」等が写っている。それらの船は公的機関(政府機関・機構)の所属だが、1隻だけ民間所属の船がある。

それがS/V Tairikudana つまり調査船「大陸棚」だ。このなんの捻りもない船名を持つ調査船は、これまた捻りのない社名を持つ「日本大陸棚調査株式会社」の所属である。

物理探査船「大陸棚」の紹介

大陸棚(TAIRIKUDANA) SYMPHONIC SHIPS

大陸棚調査のために官民挙げて取り組むことになったために設立されたのが「日本大陸棚調査株式会社」であり、日本が保有していない物理探査船を確保するために海外の船を購入して運用されたのが調査船「大陸棚」であった。

大陸棚調査へ鹿島などが新会社

 膨大な鉱物資源が眠る大陸棚の調査を目的として,石油公団系の株式会社である石油資源開発と大手建設会社など5社が,2月3日に新会社を設立した。 会社名は日本大陸棚調査(本社,東京都千代田区)。石油資源開発のほか,新日本製鉄,鹿島,大成建設,五洋建設がそれぞれ出資する。

海底資源探査と日本大陸棚拡大を目指して調査会社を設立

大陸棚調査の民間会社3日設立,新日鉄など5社出資

日本周辺の海底資源の採掘権拡大を目指した大陸棚調査に,国とともに取り組む民間出資の新会社「日本大陸棚調査株式会社」が3日,設立される。これにより、国連が定める2009年5月の大陸棚拡大申請期限に向け,官民挙げての態勢が整う.

新会社は,日本経団連を中心とする民間の「大陸棚調査に関する研究会」に参加していた新日鉄と石油資源開発,鹿島建設,大成建設,五洋建設の5社が出資する.

政府は来年度予算の成立後,ただちに新会社と委託契約を結ぶ見通しだ.新会社は,海上保安庁とともに,音波探査装置を使って精密海底調査を行う.大陸棚と認められる可能性がある太平洋の沖ノ鳥島や南鳥島の周辺から着手する方針だ.


その後、海自の海洋観測艦「にちなん」も大陸棚調査に協力している。

省庁の枠を超えて官民挙げての、本当の「オール・ジャパン」体制だったことが分かる。

海上保安庁の大陸棚調査は2008年に完了したが、これらの取り組みによって期限に間に合わないと危惧されていた調査と申請が、余裕を持って提出できたわけである。

以下に、海洋情報部が技報誌に掲載した調査報告(一部)へのリンクを掲載する。

九州・パラオ海嶺北部における精密地殻構造探査(予報)
大東海嶺群における精密地殻構造調査
南大東海盆周辺(DAr3,ODr5,KPr17,KPr15)及び小笠原海台周辺(OGr6,OGr13)における精密地殻構造探査概要
八丈島東方海域における精密地殻構造探査~2006年度第10次大陸棚調査~
九州・パラオ海嶺(KPr1,KPr2,SPr10)及び南大東海盆-大東海嶺-九州・パラオ海嶺横断測線(DAr5)における精密地殻構造調査
沖ノ鳥島南方の九州・パラオ海嶺における地殻構造探査概要~2007年度第1‐3次大陸棚調査(測線KPr33,KPr34,KPr35及びKPr39)~
九州・パラオ海嶺(KPr11,KPr12,KPr13,KPr14,KPr31,KPr32)及びマリアナ海嶺(IBr14)における精密地殻構造調査
CBFリフト東端部における精密地殻構造調査~2007年度第10,11次大陸棚調査(KPr36,KPr37,KPr38)~
九州・パラオ海嶺における精密地殻構造調査~2007年度第12,14,15次及び2008年度第2次大陸棚調査(KPr40,KPr41測線)~
2003年度から2008年度にかけての大陸棚調査で実施された精密海底地形調査

このうち「九州パラオ海嶺南部海域」については認定が見送られた。背景には中国と韓国の反対があったといわれる。中国にとって、この海域がどのような価値を持つかは前エントリで説明したとおりだ。

関連エントリ:

中国・韓国が沖ノ鳥島大陸棚延長に反対する理由



海保海洋情報部は大陸棚延長申請に伴う調査が完了して以降も、日本周辺での大陸棚調査を継続的に行っている。そのひとつが東シナ海の日本側EEZだ。

大陸棚調査は、砲火を交えないものの現代の領土獲得戦争であるともいえる。だからこそ、中国は猛反発し、必死に執拗に妨害してくるのだ。

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海保測量船「昭洋」に接近する海監航空機Y-12

関連エントリ:東シナ海波高し、地震計設置まで妨害する中国海監

だが、日本側にはこれが新しい形の戦争であるという認識は、ない。


大陸棚調査という観点以外で見てみると、沖ノ鳥島の保全ということも今回の認可に影響しているだろう。
では、沖ノ鳥島を守ってきたのは誰だろうか?

やはり、最近尖閣諸島の購入を発表した石原都知事、そして行政的に所属する東京都ということになるのだろうか?そうではない。

以前のエントリでも説明したように、国土交通省の関東地方整備局京浜河川事務所が管理している。

沖ノ鳥島 | 京浜河川事務所 | 国土交通省 関東地方整備局

沖ノ鳥島は、北緯20度25分、東経136度05分に位置し、東京から約1,700km、小笠原諸島父島からでも約900km離れた我が国最南端の島です。

この島は、我が国の国土面積(約38万km2)を上回る約40万km2の排他的経済水域を有する国土保全上きわめて重要な島ですが、満潮時には高さ、幅とも数m程度の2つの島が海面上に残るのみとなっていました。

この2つの島が侵食により、水没する恐れがあったため、昭和62年度から護岸の設置等の工事を実施しました。

しかしながら、施工後約10年が経過し、厳しい自然条件のもと護岸の破損などの劣化が急速に進行していました。
そこで、平成11年度から沖ノ鳥島の保全に万全を期するため、海岸法を改正し、全額国費により国土交通省(当時建設省)が直接海岸の維持管理を行うことになりました。

広大なEEZを支える重要な島ということで、国の直轄管理になったといえば聞こえがいいが、都が保全費用を負担できなかったという側面もある。

日本最南端の島 沖ノ鳥島の保全 ―直轄海岸管理―

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パンフレット

1999年に建設省(現:国土交通省)の直轄管理となったとされているが実際には、沖ノ鳥島消滅の危機が判明した1988年に建設省が保全のための工事を行っている。

関連エントリ:沖ノ鳥島拠点化へ・過去の作業母船「すにもす・えーす」

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作業母船に改造された重量物運搬船「すにもす・えーす」
作業甲板には島を守るための波消ブロックが確認できる

その後、海上保安庁の灯台も設置された。灯台があれば漁船が安全に操業することも可能となり、日本のEEZとしての確実な経済活動が促進される。

「沖ノ鳥島灯台」の運用開始について

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沖ノ鳥島に灯台 日本最南端の航路標識

 日本最南端の沖ノ鳥島(東京都小笠原村)に海上保安庁が設置した「沖ノ鳥島灯台」が、3月16日から運用を始めた。周辺海域を航行する船舶や漁船の安全とスムーズな運航を図るのが目的という。珊瑚礁で構成される小さな環礁に設置された灯台の役割は小さくない。同島をめぐるこれまでの経過を振り返ってみた。


その後も護岸工事のほか本格的な港湾施設の整備なども計画されている。

国交省/南鳥島と沖ノ鳥島に大型船向け岸壁整備/10年度に仮設構造物工事

 国土交通省は、太平洋上に浮かぶ南鳥島(東京都)と沖ノ鳥島(同)の2カ所で、船舶の停泊拠点の整備に乗り出す。10年度予算案で仮設構造物整備費を含む測量・調査費7億円を計上した。南鳥島では5年をかけて大型船舶が停泊可能な岸壁などを整備する予定で、来年度は調査と仮設構造物整備に着手する。沖ノ鳥島については係留施設の整備に向けた測量調査に入る。

 沖ノ鳥島は東京から約1740キロ離れた日本最南端の島。二つの小島を中心に環礁が広がる。波浪による浸食から島を保護するため、90年代に消波ブロックとコンクリート護岸が整備されている。国交省は来年度、約1年をかけて測量調査を実施し、係留施設などの計画を詰める。
 両島の周囲には他の島がなく、船舶が周辺海域で故障した場合、修理のために700キロ以上離れた小笠原諸島まで向かう必要がある。両島に係留施設が出来るとこうした問題が解消されるほか、資機材の備蓄・補給拠点として活用できるため、海洋資源調査の効率も上がるという。

国交省、維持管理の計画を作成 沖ノ鳥島の護岸

 国土交通省は2日、日本最南端の沖ノ鳥島(東京都)を浸食から守るコンクリート製護岸を長持ちさせるため、効率的に維持管理する計画の作成を決めた。来年度予算の概算要求に、護岸内部の劣化状態を調べる非破壊検査費などを盛り込む。


また、日本財団も国土交通省や海上保安庁と連携してさまざまな調査を行っている。

沖ノ鳥島の調査報告(第2次民間調査団)

一方で、東京都が行ってきた取り組みは漁業支援など限定的なものだ。

東京都の沖ノ鳥島に関する取組が着実に進んでいます!


もちろん浮漁礁の設置や漁場開発、漁船燃料支援は決して無駄なことではない。地味だが、経済活動の促進としては効果的だ。だが、沖ノ鳥島までの海域を担当するという漁業調査指導船「興洋」は100トンにも満たない規模で外洋を担当する漁業取締船としてはあまりに過小だ。他の自治体が保有する小型高速取締船と比較しても能力が限られている。さらに乗員は他の自治体の漁業監督吏員と異なり取締・逮捕権限がないという。

沖ノ鳥島 相次ぐ外国船の密漁対策 都が独自に監視船派遣(産経 2005年2月9日)

 関係者によると、監視は都が保有している調査指導船「みやこ」(136トン)と、都が新たにレンタルする監視船の2隻が行う。それぞれ、年に数回、沖ノ鳥島周辺で海洋調査を行うと同時にレーダーなどで密漁船をチェックする。

 その際、都は独自の取り締まり権限を持たないため、密漁船を発見した場合は海上保安庁や水産庁に連絡し、その後の対応は連携して行うという。



漁業調査指導船興洋

本船は、小笠原海域~沖ノ鳥島海域において、漁業に関する調査・指導・監視等の業務に従事し、小笠原の漁業振興及び沖ノ鳥島の活用に寄与することを使命とします。

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漁業調査指導船「興洋」(87トン)




追記:産経の記事とは異なり小笠原支庁に取締権限を持つ職員がいるようだ。「興洋」の小笠原周辺海域での取締実績もある。

小笠原諸島周辺海域における漁業取締りについて

小笠原水産センターでは、小笠原支庁の水産係と共同で、所属の調査指導船「興洋」(46トン)を用いて漁業取締りを実施しています。小笠原諸島海域における漁業取締りの範囲は、北緯28度30分以南の、小笠原諸島各島距岸から30マイルの範囲内とされ(図1)、この海域の取締りを小笠原支庁の特別司法警察員(1名)と漁業監督吏員(5名)が任務に当たっています。
近年の小笠原周辺海域では、「興洋」の数多くの検挙と父島二見港入港時臨検の際の啓蒙活動等により、小笠原の漁業許可制度が広く島外漁船に知れ渡るようになり、操業違反での検挙数は少なくなりました。その一方でたて縄漁具を島外のはえなわ漁船に切断されるトラブルが増えています。今後、一層の啓蒙活動と海上パトロールによる監視強化を続けていくつもりです。
また、台湾船による違法操業も問題になっています。違法操業は、平成5年以降再び活発化し、主に母島南方海域や聟島でさんごの採捕をしています。最近では、はえなわ漁船なども違法操業を繰り返しているようで、硫黄島周辺では、島外漁船が縄を切断される被害が相次いでいるようです。中には、島岸まで近づいて操業する大胆な漁船も現れ、平成10年9月に「興洋」が母島沖港のすぐそばで台湾エビ篭漁船を拿捕したのは記憶に新しいところです(図2)。





※都は、他に今年就役したばかりで136トンの「みやこ」を保有するが、こちらは伊豆諸島と小笠原諸島海域の担当だという。

他の自治体では、兵装以外は海保高速巡視船・巡視艇に匹敵する性能を持つ漁業取締船を整備していることが多いのだが・・・。

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北海道漁業取締船「ほくと」(最高速力30ノット以上)
北海道は他に300トンを超える取締船を保有している



大陸棚延長や沖ノ鳥島保全にはかなり以前よりさまざまな人や組織がかかわっている。これを、上陸しただけの石原都知事の手柄だとするのは無理がある。当然コロコロ変わる首相や内閣の功績でもない。

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さらには、どうして「外務省」の手柄とできるのか・・・むしろ、一部海域の認定を得られなかったという点では、海洋調査と保全の努力を無駄にする外交の失点だろうに。

最後は、HMS氏のブログの言葉で締めようと思う。

 その結果、日本は2008年11月に国連海洋法条約に基づいて、大陸棚限界委員会に200海里を超える大陸棚に関する膨大な調査データを提出した。それは26年前の組織再編がもたらしたものであり、これら緻密に、丹念に、尽力された方々が海洋基本法に続く長い道程を築き上げてこられたことが日本の海洋調査における基盤となったのである。



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tag : 海上保安庁 海洋情報部 測量船 JAMSTEC JOGMEC EEZ 沖ノ鳥島

2012-05-05 : 沖ノ鳥島問題 : コメント : 7 : トラックバック : 0
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非公開コメント

No title
>インテリジェンスに弱いとされる日本

 いや。たぶん委員の故・玉木先生あたりからのリークですね。今は理学部のU部先生です。

http://www.geosys.t.u-tokyo.ac.jp/staff/professor/tamaki.html

 IMO事務局長やIOC副議長もそうですけど、やっぱ自国出身の人間というのは何かと便利で。

>乗員は他の自治体の漁業監督吏員と異なり取締・逮捕権限がない

 うーん。沿岸だと警察から応援を借り出した方が本職なので手っ取り早いし、EEZのうち38%を占める東京都の実情だと近海は海保のほうが装備・人員ともに上ですからねぇ。「必要がありゃ呼べばいいや」と。

 島しょ農林水産センターの管轄が産業労働局なんで警視庁と意見が合わない…っていう場合も。

>兵装以外は海保高速巡視船・巡視艇に匹敵する性能を持つ漁業取締船を整備

 中途半端に金があると新造したくなるんで。それに高速化させると船型的に低速や漂流状態での海洋観測に向かなくなります(測量船でV字船型なんていわれたらあたしゃ担当官をひっぱたきます)。

 チャー君氏あたりが恨み真髄そうですが、いかんせん新潟造船なんで親会社みたいにダンピングし…(ゲフンゲフン)
 
2012-05-06 11:10 : HMS URL : 編集
No title
>沖ノ鳥島の大陸棚延長はうれしいニュース

 いや私は残念なニュースだと思っています。「南鳥島海域と茂木海山海域は、地形・地質的に地続きではないとして延長が認められなかった」のは調査不十分かつ説明が悪いとしか言えません。

 国際機関の審査で肝要なのは「きれいな英語の推理小説を書く能力」ですから。サイエンス(科学)の話をリーガル(法律)で書くことです。
2012-05-06 11:33 : HMS URL : 編集
No title
温暖化による海面上昇が言われてますが大丈夫なんですかね
2012-05-07 01:24 : はるばる URL : 編集
Re: No title
コメント有難うございます。

>リーク
なるほど。当時の海保新聞あたりにも「ロシアの情報を入手して~」とあって、ずっと疑問に思ってたんですがそういうことだったんですね。中国や韓国が自国の人間を一生懸命に送り込もうとするのも分かります。

>権限
ただ、哨戒で派遣される巡視船を抜きにして考えると小笠原海保の勢力(さざんくろす1隻のみ)は東京都小笠原支庁にも劣るという・・・(汗

エントリ内で修正しましたが、一応、東京都にも漁業取締りの特別司法警察職員はいるみたいですね。

>漁業取締船
そういったこともあってか、一部の自治体では水産課の高速型取締船と水産試験センターの調査船を別個に整備しているのでしょうか。
2012-05-14 18:35 : 蒼海管理人 URL : 編集
Re: No title
先日のエントリ拝見しました。

大陸棚の延伸 海を往く者
http://ukmto.at.webry.info/201205/article_10.html

延長という意味では場所的にも一番力を入れて調査と説明をしないといけなかった部分ですからね・・・
正直、日本で無邪気に喜んでいる連中も、言いがかりのような反論までしている中国もなんだかなぁ・・・という感じです。
2012-05-15 04:05 : 蒼海管理人 URL : 編集
Re: No title
以下のリンク先で沖ノ鳥島における海面上昇対策が説明されています。
やはりサンゴの増殖が重要なようです。

海面上昇に対する沖ノ鳥島の維持
http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/rashimban/okinotori/001/post-10.php
海面上昇に対する沖ノ鳥島の生態工学的維持
http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/rashimban/okinotori/001/post-34.php

既に2007年前後から水産庁が増殖計画を行っています。

沖ノ鳥島を沈没から救え、サンゴ増殖プロジェクト始まる
http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2241552/1704785
沖ノ鳥島保護の珊瑚礁再生事業に水産庁がH18新規で3億円事業募集
http://www.aistshikoku.org/kaiyou-kaiin114.html

また、こうした研究は沖ノ鳥島だけでなく海面上昇に悩む島嶼国家の助けにもなる可能性があるとのこと

沖ノ鳥島再生に向けて
http://www.sof.or.jp/jp/news/151-200/174_1.php
2012-05-15 04:14 : 蒼海管理人 URL : 編集
No title
>リーク

 何せ発言権が飛躍的に増しますから。事務局の考え方や他国の動向なども非公式ながら判りますし。

>権限

 あー、小笠原ですね。忘れていました(あたしゃ大島にいたのに…)。でもほかのエントリーにあるように無線通信士なんか「J&F野代理店兼家電代理店」な状態ですけどねぇ…

>漁業取締船

 V船型の高速船でプランクトンネットや魚網なんか引けませんw

 あんな狭い東京港内で巡視艇繰り出しておきながら1時間かけて脱走ペンギン1匹捕まえられないのはなぜか?という部分を考えていただければwww
2012-05-17 08:29 : HMS URL : 編集
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