中国調査船・漁政の「波状攻撃」、海保強化への牽制か

海洋調査船や漁業監視船(漁政)などの中国公船による尖閣諸島への接近が相次いでいる。

今回最初に現れたのは、7月の末にも同海域でワイヤーを曳きながら航行していた「北斗」である。

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尖閣周辺に中国の海洋調査船 今年2回目、事前通報とは別の海域で調査

 25日午後5時55分ごろ、東シナ海の日中中間線を越えた沖縄・尖閣諸島の久場島北北東約121キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国の海洋調査船「北斗」が船尾からワイヤのようなものを3本引いて航行しているのを、第11管区海上保安本部(那覇市)の航空機が確認した。

 海上保安庁によると、中国側から日本のEEZ内で調査を行うとの事前通報があったが、同船は通報と異なる海域を調査していたという。11管が無線で中止を呼びかけたところ、応答がなかったが、ワイヤを上げて、事前通報があった海域に向けて航行し始めたという。

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同船は、今回「事前通報」を行っていたが、それとは異なる海域で調査していた。当初、海保からの呼びかけに応答が無かったと報じられていたが実は「応答」していたことが続報で分かっている。

「調査海域の理解に相違」 尖閣周辺航行の中国海洋調査船の応答

 11管は「事前通報海域外での調査は認められない」と巡視船などから無線で繰り返し警告。北斗は当初、「地質調査を行っている」などと応じていたが、その後、「調査海域の理解に相違があるようだ。作業を中断し本国に確認する」などとして、午後10時15分ごろまでにワイヤやロープを引き揚げ、事前通報のあった海域に向け航行し始めたという。

だが彼らが「わかってて」やっていることは言うまでもないだろう。以前にも事前通報と異なる海域で調査を行っていた「前科」もある。本来、日本が通報を受け「同意」するということは、東シナ海や同海域での日本の影響力を強化することも可能になるはずだったのだが、実際のところこの制度は中国の海洋調査に対し日本がお墨付きを与えているに過ぎない。

中国は「沖縄トラフ」での調査も申請しており、これについても日本は同意している。

中国、沖縄トラフを海洋調査 日本政府も条件付き同意

 日本政府は調査の申し入れに「鉱物資源の探査をしない」との条件で同意したが、沖縄トラフで日本が進める開発を静観してきた中国が、関心を示したことを警戒。東シナ海の新たな海底資源をめぐる火種になる可能性もある。

 2件の申し入れは「日中事前通報制度」に基づき行われた。国連海洋法条約が認める「科学的調査」を目的としている。9月1日から11月30日と12月31日の予定で、調査船を使ってそれぞれ「海底の地質をサンプリングする調査」と「海底の構造を測定する調査」をするとしている。

今回と同様に別の海域で、つまり尖閣諸島周辺で行われる危険性も高い。調査内容も異なるかもしれない。もし、中国が事前通報どおりの海域で事前通報どおりの調査を行ったとしても、それを監視するために海保の戦力は割かれることになる。

そして、さらに別の調査船が現れた。

尖閣付近また中国調査船 2日連続、通告外航行

 尖閣諸島周辺では25日にも、26日とは別の海洋調査船が、EEZの事前通報とは異なる海域を航行。中国の調査船や監視船が相次いでいることに、海保は警戒している。

 第11管区海上保安本部(那覇)によると、海洋調査船「科学3号」は、26日午後4時50分ごろ、沖縄県・尖閣諸島久場島北北東約145キロの日本のEEZで、海上保安庁の航空機が発見。中国側の事前通報とは異なる海域で、船尾からワイヤのようなもの1本を垂らし航行していた。

 航空機から「事前の同意内容と異なる海域での海洋調査は認められない」と無線で警告したが、応答が無いまま調査船は航行を続行。午後5時45分ごろ、発見場所から約20キロ南東の事前通報海域に入ったため、海保の航空機は追尾をやめた

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「北斗」は漁政局とつながりのある中国水産科学研究院の黄海水産研究所に所属しているが、今回の「科学三号」は中国科学院海洋研究所の「海洋科学総合考察船」だ。

2005年建造
全長:73.3メートル
満載排水量:1224トン
経済速力14ノット(最大16ノット)
航続距離6000海里
定員48名(内、科学者30名)
装備:6000メートル測深儀ほか

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中国科学院といえば中国における自然科学・ハイテク研究の最高機関であるが、その一方で海洋研究所の調査船「科学一号」などが、繰り返し日本周辺海域で調査活動を実施しており海保や海自の警戒対象となっていた。おそらく、海洋科学と権益確保の関係から国家海洋局ともつながりがあると考えられる。

昨年11月にはこの中国科学院海洋研究所の調査船が尖閣諸島へ向かうとの報道があり、緊張が高まっていた。今回、その派遣を実行に移したわけである。

関連エントリ:再び「漁政310」が尖閣へ、機銃・対空能力装備を認める

中国、科学調査船も尖閣へ航行か 領有権主張誇示も

日中関係に詳しい中国筋は26日、中国当局の科学調査船が近く東シナ海の尖閣諸島付近へ向かうとの見通しを明らかにした。20日ごろに中国の漁業監視船が同海域に接近したばかり。日本領海に接近すれば日本側との間で緊張が高まる可能性もある。

 同筋によると、調査を計画しているのは中国政府の研究機関、中国科学院の海洋研究所(山東省青島市)所属の科学調査船で、青島港から出港するという。東シナ海でのガス田開発へ向けた海底調査とみられる。

 海洋研究所の調査船はこれまでも同海域で調査を行ったことがある。



そして、周辺海域にはさらに漁政の展開も確認された。

尖閣付近に2隻の中国漁業監視船 海保が確認

26日午後7時半ごろから午後8時過ぎにかけて、沖縄・尖閣諸島付近の日本領海外側の接続水域を、中国の漁業監視船「漁政32501」と「漁政202」が航行しているのを海上保安庁の巡視船が見つけた。日本の領海に入らないよう監視を続けたところ、両船は午後9時ごろまでに接続水域を離れた。巡視船が両船に航行目的を無線で尋ねたところ、「漁政202」からは「公務執行中である」との応答があったという。

「漁政202」は既に何度か、この海域に現れているフネだ。

関連エントリ:中国漁船問題で派遣された「漁政」は軍艦ではない

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準同型も含め何隻も量産されている外洋任務向けの1000トン級で、同型船のほとんどが管轄海区を超えて尖閣諸島まで派遣された経験がある。

そしてもう1隻は「漁政32501」

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この漁政が実際にこの海域に現れるのは初めてだが、「科学三号」と同様、以前に他の漁政とともに尖閣に向かっていると報じられていた。このとき同行するとされていた1000トン級の1隻が今回の「漁政202」だった。

関連エントリ:中国、「漁政」を再び尖閣諸島沖へ

このとき「江蘇省漁政総隊に所属する500トン級の漁業監視船」と報じられていたのが「漁政32501」だ。しかし、実際に海保の目の前に姿を現したのは1000トン級2隻のみだった。

関連エントリ:「中国漁政202・118」尖閣諸島接続水域に現る

その後、しばらく地方漁政からの派遣の話は無かったのだが、先日実際に1000トン級と地方500トン級の組み合わせで尖閣諸島水域まで来た。

そう、「漁政201」と「漁政31001」による領海侵入である。

関連エントリ:漁政201と漁政31001が尖閣諸島の領海内に侵入

このときの「漁政31001」は別タイプの500トン級であった。


SMAPの中国公演など友好ムードが報じられていた一方で、尖閣諸島の状況は昨年9月以降の睨み合いや先月末の漁政領海侵犯時と同様、いや、同時多発的に起きていることからも、それ以上の緊迫した状態にあると言ってもいい。

尖閣海域での海洋科学調査はわが方の正当な権利=中国政府

中国政府・外交部の洪磊報道官は27日の定例記者会見で、「中国側の関連船舶が釣魚島(尖閣諸島の中国側通称)付近の海域で正常な海洋科学調査をしていただけであり、中国側の正当な主権権利の行使だ」と述べた。

洪報道官は「釣魚島と周辺の島は古くから中国固有の領土であり、中国は争いようのない主権を有している」と従来の主張を繰り返した上で、「中国側の関連船舶は釣魚島付近の海域で正常な海洋科学調査をしていただけであり、中国の正当な主権権利の行使だ」と述べた。



ここに来て、どうして中国は緊張を高めるような手を打ってきたのだろうか。

日本のマスコミならば、いつもどおり政権不安定期に揺さぶりをかけてきた、などとお決まりの分析をしてみせるところだろう。だが、中国はより実際的に物事を見ている。彼らが気にしているのは実際に警備に当っている海上保安庁の状況の変化だ。

まず、尖閣諸島警備に当る石垣海保の増強が大きく報じられたこと。

石垣海保に大型巡視船配備へ

配備されるのは、現在、北九州市にある第7管区海上保安本部所属の大型の巡視船「はかた」(1300トン)です。この巡視船は、ヘリコプターが着陸できる最新型の船で、来月8日に船名を「いしがき」に変えて、沖縄県の石垣海上保安部の所属に変更します。

尖閣諸島を巡っては、去年9月の中国漁船の衝突事件のあと、中国の漁業監視船が周辺海域にたびたび現れるようになり、先月には初めて領海内に侵入する事案が起きています。石垣海上保安部は、尖閣諸島までおよそ170キロと最も近い拠点で、現在、2隻の大型巡視船が配備されていますが、この巡視船の配備で周辺海域の監視や警備がさらに強化されるということです。海上保安庁の鈴木久泰長官は「石垣海上保安部は尖閣諸島周辺海域まで3時間余りで行ける警備の拠点なので、3隻配備することで、より速い対応ができるようにしていきたい」と話しています。


海上保安庁、尖閣警備強化で巡視船1隻増大型巡視船 石垣に配転、海保 尖閣警備を強化
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関連エントリ:その姿を現した新1000トン型巡視船PL-10「もとぶ」
尖閣諸島警備・海上警察権「強化」というが・・・
PL62「はかた」代替はPM13「いしかり」

そして、領海警備の強化と装備の増強が打ち出されたこと。

関連エントリ:新「しきしま」級に続き、準「しきしま」級・新型ジェット機増強へ

これらが大きく影響している。10月8日以降は尖閣の1000トン型(「はてるま」型)が3隻体制となる。そしてあの「中間取りまとめ報告」が実現すれば、「しきしま」級・準「しきしま」級、ジェット機も全て3隻・3機体制となる。3ユニットとなれば、2ユニットが休養・整備に入っても1ユニットが常に実働可能ということになるのだ。

中国にしてみれば守りがより堅くなるように感じされるに違いない(実際の海保の状況は別として)。

特に中国の海洋機関は「みずほ」型や「しきしま」型に対する警戒心が強い。

「はかた」配置換えはこうした動きの第一歩として受け止められているのだろう。

東シナ海領有権 中国「主権強化」姿勢明確に

最近開催された「中日東海(東シナ海)問題シンポジウム」では、こうした状況のもと、中国は釣魚島問題の研究を強化して主権表明と主権管轄を一層強化しなければならないとの声が上がった。

中国海洋発展研究センターの金永明研究員は「日本の海上保安庁が不法に中国漁船と漁民を拘束して以降、日本は釣魚島問題において新たな動きを見せている」と指摘。日本が釣魚島への直接防衛を強化し、領海侵犯に対処する新法を整え、釣魚島問題での日本の立場と姿勢をアピール、中国の海洋戦略に対応する基本方針を制定したと強調した。

専門家は、日本が釣魚島など周辺島々への不法武装制御をますます強化する中で中国は釣魚島問題の研究を進め、実質措置を講じて主権主張と主権管轄を強化しなければならないと主張している。

まずは日本政府の主張を反撃し、中日米の関係と国際条約の効力および釣魚島問題解決への影響を分析すること。また中日の東海問題に関する「原則共同認識」の問題と発展の動向を分析。海上危機管理メカニズムの構築と海上連絡メカニズムの構築を進め、法律上で釣魚島問題の解決の可能性を研究する。

このほか、対立を解消し、共同利益を増やすためにエネルギーの共同体構築の可能性、海洋の共同管理などを含めた中日海洋問題解決体制の構築を検討すること、国家海洋開発戦略を制定・実施し、中国海洋政策の対外宣伝を強化することも有効だろう。巡視回数を適度に増やすことも必要だ。



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tag : 海上保安庁 EEZ 巡視船 「はてるま」型 尖閣諸島 中国 漁政 調査船 領海警備

2011-09-28 : 尖閣諸島問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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