海保が衛星に対しレーザーを発射!?知られざる海保の任務

ちょうど一週間ほど前、海上保安庁の施設から軌道上の人工衛星にレーザーが発射された。
といっても、中国の対衛星攻撃基地のような話ではない。

中国が対衛星レーザー兵器を新疆ウイグル自治区の天山山脈に配備か―米誌

2011年10月8日、米誌ワイアード(電子版)は、中国が新疆ウイグル自治区の天山山脈に対衛星レーザー兵器を密かに配備している可能性が高いと報じた。参考消息(電子版)が伝えた。以下はその概略。

中国はすでに宇宙空間の支配権をめぐる軍事競争に参加しており、これに勝つため、対衛星攻撃用のレーザー兵器を密かに研究・開発している。さらに衛星画像の解析で、こうした兵器が新疆ウイグル自治区の天山山脈一帯に配備されていることはほぼ間違いないことが分かった。

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海上保安庁の保有する観測施設である下里水路観測所から、使命を終えた人工衛星「だいち」に感謝の気持ちとして送られたのだ。

海上保安庁から「だいち」(ALOS)へラストメッセージとしてレーザー光線が伝達されました

 10月18日、宇宙利用ミッション本部及び「だいち」(ALOS)の多年にわたる海上保安庁への海氷衛星画像提供に対して感謝の気持ちを伝えるために、海上保安庁から5月に運用を停止し地球周回軌道を回っている「だいち」に向けてレーザー光線が伝達されました。
 人工衛星のレーザー測距観測を行なっている海上保安庁の下里水路観測所において、JAXAから提供された軌道データを基に「だいち」に向けてレーザー光線を発射し、 「だいち」に取り付けられた反射プリズムからの反射信号を受信しました。 海上保安庁から送られた「だいち」の貢献に対する感謝の気持ちは無事届けられました。


人工衛星にラストメッセージ!

 第一管区海上保安本部は、平成18年度から5年間にわたり海上保安庁に対する海氷衛星画像提供に貢献した「だいち」に対して、感謝状を贈呈しましたが、直接感謝の気持ちを伝えるために、海図作成の基準点として人工衛星のレーザー測距観測を実施している下里水路観測所から「レーザー光線」を発射、伝達する作戦をJAXA協力の下、計画しました。
 JAXAの事前解析では既に運用を停止し、地球周回軌道を回っている「だいち」へのレーザー測距が成功する確率は極めて低いものでしたが、今回成功するに至り、長年の当庁業務に対する協力への感謝の気持ちを伝えることができました。


海上保安庁が人工衛星にレーザーを発射するというのは不思議に思われるかもしれない。しかし、これは海図を作るうえできわめて重要な業務なのである。地図・海図を作るのには自分の位置を正確に知ることが必要だ。現在、海図の作成は世界共通の世界測地系という基準の下で行われている。そこに必要な経緯度の基準点を決めるのにもっとも正確な方法とされているのがSLR観測だとされている。

人口衛星レーザー測距観測(下里水路観測所)

 また、今でこそGPSが普及しているが以前は、六分儀を使った天測航法が広く用いられていた。現在もバックアップとして用いられているという。そして天測航法に不可欠なのが天測暦であり、これを作成することも海上保安庁海洋情報部の重要な任務だ(正確な暦を必要としているのは海事関係者だけではなく、たとえばカレンダー業者や一部の占い師も海保の暦を購入しているという)。

こうした業務で一般になじみの深いものでは、初日の出情報の提供がある。

海上保安庁が日出没時刻等を計算している理由は?

 海上保安庁では、船舶が安全な航海をするために必要となる航海暦(天測暦・天測略暦)を発行しています。航海暦には毎日の天体の位置情報の他に、日・月出没時等も掲載しており、初日の出情報は、航海暦を作成する際のデータを利用して作成しています。



海上保安庁海洋情報部はこうした業務のために天体観測や星食観測を行っていたが(過去には日食観測のために世界各地に観測班を派遣していた)、観測環境の変化や技術の進歩、予算上などの理由から2008年3月を最後に天体観測業務を終了、また、星食国際中央局(ILOC)としての業務も2009年3月で終了した。

知ってますか?海上保安庁のこんな業務(星食観測)

 海上保安庁では、航海の安全に資するために航海暦(天測暦及び天測略暦)及びそのもととなる天体位置表を刊行しています。
 天体の位置を最新の理論に基づいて精密に算出するために、各国の天文台と協力して天体観測を行っており、海上保安庁は主に星食観測を担当していることから、白浜(静岡県)、下里(和歌山県)、美星(岡山県)の各水路観測所で定期的に、本庁水路部では随時に観測を行っています。
 また、国際天文学連合(IAU)からの要請に基づき、世界の星食観測データを一元的に管理・提供する星食国際中央局(ILOC)業務を1981年1月1日に英国グリニッジ天文台から引き継いで現在に至っています。

こんなところにも海上保安庁
山の上で水路観測?~美星水路観測所~

 海から20キロメートルも離れた標高約500メートルの大倉竜王山の上に銀色に輝くドームがそびえています。そこは岡山県の南西部、小田郡美星町にある「美星水路観測所」です。

 このドームの中には天体望遠鏡が入っていて、星の観測を行っています。

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 天測暦に掲載される情報は、精密な計算式により求められており、この計算式には、地球の自転や月の動きなどを実際に観測して得られた補正データが含まれています。

 この補正データは、地球の自転速度や月の動きが一定ではなく、予測できない動きをするため、翌年分の予報である天測暦にはなくてはならないものなのです。

 美星水路観測所では、この補正データを得るために、星が月に隠れて見えなくなる「星食」という現象を観測しています。星食観測からは、実際の地球の自転速度の変化や月の動きがわかります。

 この観測した結果と予報とのズレから補正値を求め、計算式に反映させ、天測暦の精度を維持向上させています。


天文観測

 天体の位置を推算するために必要な天文観測は、各国の天文台が協力して行っています。海上保安庁は主に星食観測を担当し、水路観測所において星食観測を行ってきましたが、 2008年3月末に水路観測所における天文観測業務をすべて終了しました。また、星食観測については、国際的な中央局業務を行ってきましたが、2009年3月末に海上保安庁における「星食国際中央局」としての業務も終了しました。

星食国際中央局

1981年より海上保安庁で星食国際中央局(ILOC)の業務を行ってきましたが、諸般の事情により2009年3月末でILOCとしての業務を終了しました。
長年に亘りILOCへのご協力に心より感謝申し上げます。

なお、2009年4月からは世界掩蔽観測者協会(International Occultation Timing Association <略称:IOTA>)がILOCに代わり星食観測報告の受付等を行っております。

コーディネーター業務開始のお知らせ

さて、既にご存知のことと思いますが、これまでILOC(International Lunar Occultation Centre)として月による星食観測結果の収集とデータの管理に当たってきました海上保安庁が、ILOC業務を来年3月で終了いたします。これに伴い、星食観測報告の収集とまとめは、IOTA(International Occultation Timing Association, 世界掩蔽観測者協会) が引き継ぐことになりました。

そして海上保安庁の天文台である水路観測所も下里と八丈を残すのみとなり、天体望遠鏡はすでに使われていない。八丈水路観測所は地磁気観測を行っているため、人工衛星のSLR観測を行っているのは下里水路観測所だけである。

美星水路観測所 閉所
白浜水路観測所閉鎖のお知らせ

第2回(平成元年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
海上保安庁第三管区海上保安本部八丈水路観測所


第17回(平成16年)「人事院総裁賞」職域グループ部門受賞者
「日夜行う宇宙間三角測量」

望遠鏡観測、来月末で幕 那智勝浦の海保・下里水路観測所 /和歌山県(2008年2月9日 朝日新聞)

 さよなら望遠鏡、半世紀以上の活動に幕――。第5管区海上保安本部・下里水路観測所(那智勝浦町)は、望遠鏡による天体観測業務を3月末で終了し、口径62センチの反射望遠鏡(80年製造、日本製)を撤去する、と発表した。ただし、レーザー測距観測は続ける。同観測所のレーザー測距観測は、約6千キロ離れた人工衛星との距離を最高4~6ミリの誤差で測ることができるという世界トップクラスの精度を誇る。(松尾一郎)

 鈴木充広所長によると、同観測所は前身の勝浦水路観測所時代の52年、「星食観測」と呼ばれる望遠鏡による天体観測を開始した。星食観測とは、しし座の1等星レグルスなどの恒星が、月の陰に隠れたり、出たりする時刻を精密に測定することで、月の動きや地球の自転の速さをはじき出せるという。
 しかし、星食観測がレーザー測距観測で代替することができ、その方が精度も向上するため、望遠鏡の「引退」が決まったという。


第五管区海上保安本部 下里水路観測所

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実はこの下里水路観測所と「だいち」とのつながりは深い。「だいち」打ち揚げ直後、JAXAは世界各国の機関に軌道要素確定のためのSLR観測を依頼していた。そして最初に観測に成功したのがこの下里水路観測所だったのである。

衛星「だいち」、初観測に成功 海保下里水路観測所 /和歌山県(2006年8月27日 朝日新聞)

 世界最高クラスの精度で人工衛星のレーザー測距観測に取り組む第5管区海上保安本部下里水路観測所(那智勝浦町下里)は14日午前10時15分から1分間、陸域観測技術衛星「だいち」の初観測に成功した。観測誤差は4、5ミリという。
 「だいち」は地表観測を目的に宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって今年1月に打ち上げられ、上空約700キロの軌道を周回している。JAXAは「だいち」の軌道をより正確に決定するため、世界各国のレーザー観測局に対して、14日午前9時(日本時間)以降の観測を依頼していた。

これにはJAXAをも凌ぐ、世界最高精度とも言われるレーザー測距観測システムが使われた。このシステムは正確性や低コストから以前話題にもなっていたものである。

レーザー測定、稼働 「世界一」6000キロ先を誤差数ミリ 和歌山・海保(2006年7月2日 朝日新聞)

 海図作製の際の日本の基準点となる第5管区海上保安本部下里水路観測所(和歌山県那智勝浦町)は、全地球における位置をつかむ「レーザー測距観測」の新システムを開発し、1日から運用を始めた。約6千キロ離れた人工衛星との距離を4~6ミリの誤差で測ることができ、精度は世界トップクラス。10月に開かれる国際レーザー測距事業(ILRS)の国際ワークショップで発表する。

 新システムは横浜市にあるソフトウエア開発会社「電応システム」(山口哲郎社長)と共同開発。レーザー光は電気信号に変換されて波形を描くが、これまでは距離に14ミリ近くの誤差が生じた。ストップウオッチを増設するなどして波形を2カ所のポイントでとらえ、ばらつきを少なくする仕組みをつくった。改造費は300万円という。
 ILRSによると、レーザー測距観測の精度のトップは、誤差6ミリの鹿児島・種子島の宇宙航空研究開発機構(JAXA)増田宇宙通信所で、同観測所は14位だった。


世界最高精度となるシステムを開発し設置したが、実はその中核となるレーザー発振部は予算不足から耐用年数を大幅に超えて使われていた。警備救難部の巡視船艇航空機も驚きの2倍以上である。当然ながら、その寿命が尽き果てる時が来た。

レーザー測定装置が故障 4カ月以上観測不能 海保下里水路観測所 /和歌山県

 第5管区海上保安本部下里水路観測所(那智勝浦町)が所有し、レーザー光線を使って世界最高クラスの精度で距離を測定できる装置が故障して、4カ月以上にわたって観測不能になっていることがわかった。故障の原因は機器の老朽化。予算不足で寿命を大幅に超えて使用していたためとみられる。観測再開は、新たな装置が納入される来年3月以降になるという。(松尾一郎)

 海上保安庁海洋調査課などによると、観測装置のレーザー光線を発生させる「レーザー発振部」と呼ばれる心臓部が、今年5月に故障した。この部分の寿命は10年程度とされるが、同観測所では補修を重ねて約25年間使用を続けていた。
 この観測装置は、地上から人工衛星に向けてレーザー光線を発射し、その反射光を感知して距離や軌道を調べ、他の観測地点とのデータを比較して地球上の位置を把握する。同観測所としては、観測が再開されるまでの約11カ月間、国際共同観測などにデータを提供することができなくなるという。

海上保安庁の予算不足と言えば巡視船艇航空機ばかりが注目されるが、それらは少ない予算の中でも優先的に扱われている。もっと酷いのはこうした警備救難以外のところだったりするのだ。

 一方、海上保安庁において「だいち」からの情報が活用されたのは救難、海難事故の防止である。それはレーザー光線に先立って感謝状を贈った一管の海氷情報センターによって行われていた。

陸域観測技術衛星「だいち」搭載のPALSARによるマイクロ波センサにより観測されたオホーツク海の海氷です.マイクロ波センサによる観測のために,雲域の有無に関らず海氷分布を捉えることが出来ます.

海難事故の予防:文部科学省

 海上保安庁では、人工衛星からのデータを使い、オホーツク海を航行する船舶の安全のために海氷の情報を公開しています。気象衛星ひまわりやNASAのTerra、Aquaなど、海氷の様子を観測することができる衛星はいくつかありますが、これらの衛星は、雲がかかっているとその下の様子を観測できません。陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)に搭載されているPALSARは、雲に関係なく地表や海の様子を観測することができるため、海氷情報の作成には非常に有用となっています。


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そして多くの人が知っていると思うが、この「だいち」の能力は東日本大震災後にも生かされることになる。

福島沿岸、津波のつめ跡くっきり 衛星「だいち」画像

 東日本大震災の発生の前後で、福島県の海岸沿いの地形が大きく変化した様子を、宇宙航空研究開発機構の地球観測衛星「だいち」がとらえた。同機構が17日、緊急観測の結果を公表した。

 南相馬市の沿岸地域では、震災前の2月には、モザイク状に整然と田畑が並んでいたが、被災後の3月14日の画像では、広い範囲で押し流されていた。「だいち」の画像では、山や緑地は赤色、海は紺色に表示している。

この能力は当然のことながら洋上の漂流物についても発揮された。

宇宙から大震災を観測。「だいち」活用の舞台裏。

また海上保安庁や水産庁からは、沖合に流された船や漂流物を確認したいという要望があった。AVNIR-2で観測し、陸前高田周辺だけでも約56万m2の漂着物を確認した。

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海上の漂流物。10m以上の漂流物66個を検出。3月13日22時11分ごろPALSARで観測。


その後も得意な測地能力を使い地殻変動を捉えていたが、被災地が復興する様子を「だいち」が目にすることはなかった。

「だいち」も想定寿命を超えて使用されており、ついには力尽きたのである。

衛星「だいち」に電力異常=原因不明、観測不能に-津波被害を撮影・宇宙機構(2011年4月22日 時事通信)

宇宙航空研究開発機構は22日、地球観測衛星「だいち」の電力に異常が生じ、搭載された観測機器に電源が入らない状態になったと発表した。原因は不明で、復旧のめどは立っていない。だいちは目標寿命の5年を経過していた。

宇宙機構によると、22日午前7時半ごろ、だいちの発生電力が急低下、機能維持のため消費電力を抑える軽負荷モードに入った。
宇宙機構は、だいちの電波送信装置に電源を入れるなどの復旧対策を行っているが、電波を安定して送ることができないという。

地球観測衛星「だいち」電源喪失 宇宙航空機構が発表

 宇宙航空研究開発機構は22日、地球観測衛星「だいち」の電力が失われたと発表した。電源系の故障と見られる。回復を試みたが、地上からの制御を受け付けず、発生電力もゼロになった。設計寿命を過ぎており、回復は絶望的という。

 発表によると、だいちはこの日午前6時40分ごろ、通常は8千ワットほどある電力が急に半減した。自動的にバッテリーに移行して観測機器などの電源を切り、電力を極力使わないモードに入ったが、その後も発生電力が徐々に低下。一部の機体データはとれたものの、昼過ぎからは地上からの制御もできなくなった。

 だいちは地上約700キロの上空をまわっており、機能を停止しても10年以上は宇宙で回り続けるという。



寿命を超えてまで、日本に貢献し続けた「だいち」の姿に海上保安庁としては何か思うところがあったに違いない。軌道上から今も日本を見守っているであろう「だいち」にその感謝のメッセージは届けられたのだ。

(ラストメッセージって別に映画「海猿」とかけてるわけじゃないですよね)

海洋情報部自身も東日本大震災で被災し救援復興活動を行ったのだが、それは改めてエントリにしたいと思う。

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tag : 海上保安庁 海洋情報部 水路観測所 レーザー 人工衛星 東日本大震災

2011-10-26 : 海上保安庁 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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