中国の肥大化した被害者意識と自己正当化

先日、韓国による違法漁船拿捕を「武力行使」として非難した中国だが、中国自身の「武力行使」は正当化されるらしい。

「軍事衝突近づいている」 中国紙社説

 中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は26日までに、韓国やフィリピンが中国漁船を拿捕したことを踏まえ「東アジアの海上は軍事衝突が近づいている」との社説を掲載した。

 社説は、領有権争いを棚上げし、共同開発するという中国の提案を関係諸国が受け入れず、米国を後ろ盾に中国を屈服させようとしていると分析。国内世論の状況から「面倒が伴うが、反撃に出ざるを得ない」と武力行使の可能性を指摘した。

東アジア、海上軍事衝突の危機近づく―中国・人民日報系メディア

 また、中国国内社会が「平和的台頭が決して『譲歩で平和を買うこと』ではないことが分かってきた」ことで、「海上問題は自然の成り行きに従うべきで、武力解決を国策として優先すべきでないが、必要な時には見せしめのために武力行使する」との認識でまとまりつつあり、「今後起こりうる軍事衝突への心の準備を続けている」と説明。海上で挑発する一部の国が中国社会の動向に気付かずに判断を誤ることで、「現在そして今後しばらく、微妙な海域で衝突が発生する可能性が非常に高い」と指摘した。

おそらく実際に「武力行使」しようというわけでなく、国内にたまる不満のガス抜きという側面が大きいだろう。実際、韓国の取り締まりは大勢に影響しないという分析もある。

韓国による中国漁船だ捕、専門家「両国関係に影響せず」―中国

 記事は上海国際問題研究院の研究員で韓国・北朝鮮問題に詳しい于迎麗氏の見解を紹介。于氏は、今回の問題が「駆逐から漁具などの没収、さらに武力行使による拘束にまで至った」ことから、韓国当局による中国漁船だ捕行為がヒートアップしていると指摘。関連海域での中国漁船の操業が、双方の摩擦を増幅していることの表れとした。

  また、「韓国国内政治の風向きも関係している」とも指摘。昨年発生した天安沈没事件やヨンピョン(延坪)島砲撃事件後、韓国国内では北朝鮮の肩を持つ中国の態度に強い不満が生まれており、中国に対して強硬姿勢を取るべきとする一部の声が「多少なりとも政府の方針に影響を与えている」と分析した。

  一方で、中国は韓国にとって最大の貿易パートナーであり、両国間の政治的協力も少しずつ強化されているという状況から、「両国政府は漁船だ捕事件が交流の進展を阻害するとは考えておらず、大局に影響は及ぼさない」と予測した。

だが、この分析でも「武力行使」であり、「過剰な取り締まり」であるとしており、韓国のそうした姿勢の背後には韓国国内の事情や対中感情があるとしている。中国の漁船が他国の水域で違法行為や凶悪な犯罪を繰り返していたという意識はない。

 こうした自己正当性、そしてその背景にある被害者意識は中国の海洋進出を見るうえで重要な要素だ。

南シナ海での主権主張を強める中国(防衛研究所 NIDSコメンタリー)

被害者意識を強める中国
このように、周辺諸国から見れば、中国は南シナ海で攻勢に転じているわけであるが、中国国内では正反対の認識が広まっている。すなわち、中国が協調路線をとり、「論争棚上げ、共同開発」を主張している間に、東南アジア諸国はスプラトリー周辺海域における資源開発を進展させ、中国の海洋権益を蚕食しているという被害者意識である。

このような被害者意識に立って、南シナ海における強硬な対応は中国の海洋権益を保護するために止むを得ないものとして正当化される。法執行活動の強化や軍事力を誇示することによって、中国の主権を強調し、主権問題で妥協しない強い姿勢を示すことが、東南アジア諸国による資源の開発に歯止めをかけ、問題解決へ向けた話し合いへの道を開くというのである。

そのため、アメリカだけでなくインドや日本が東南アジアと協力していることも、彼らにとっては大きな「被害」をもたらしているとされる。その協力が南シナ海の問題に介入し次隊をより複雑化させているという主張だ。

日本が東シナ海、南シナ海からわが国を包囲へ(1)=中国

 まず日本は東南アジアの関連国を抱き込んで中国に対抗しようと、東シナ海、南シナ海の両側で連携を図り、東シナ海、尖閣諸島(中国名:釣魚島)問題におけるカードを増やすことで圧力の分散を試みている。日本の戦略碁盤では、南シナ海問題と東シナ海問題は密接に関係していると同時に、日本は東南アジア諸国との距離を縮め、地域における影響力を巻き返そうとしている。

南シナ海問題が日本とインドの介入でさらに複雑に(1)=中国

 軍事問題に詳しい張博氏によると、南シナ海の情勢は最近、主に日本とインドに関係する新しい動きがみられる。本来南シナ海の領有権問題に直接関係のない国まで強引にこの問題に介入する傾向にある。これは間違いなく現在の局面を複雑化し、中国も新たな課題に直面するだろう。

日本が布石を打つ南シナ海 わが国への牽制か(2)=中国

 日本が南シナ海の主導権を狙っているにしても、南シナ海問題は中国と関連国の二国間の問題であり、日本がとやかく言う権利はない、紛争が生じた場合にも解決策を示すことはできないはずだ、というのが研究者らの意見である。

  国際関係学院の楊伯江教授は「日本の介入は、南シナ海の情勢をよりいっそう複雑にしてしまうだろう。だがその情勢を根本的に覆す力は日本にはないはずである」と述べている。その原因の一つは、日本は南シナ海領有権争いの当事国ではなく、当然ながらその領有権にはありつけないからだ。もう一つは、野田政権が東日本大震災の復興に全力を挙げている今、南シナ海問題への介入姿勢はパフォーマンスにすぎないからだ。財政的に厳しい今、南シナ海に多額の財政支出が行われることはありえないのである。

だが、日本は東南アジア、南シナ海における新たな「プレイヤー」ではない。元々の経済的なつながりはもとより海洋問題においては重要な海上交通路であり海上保安庁が各国の沿岸警備・海上警察組織に対し援助を行ってきたのだ。そこには対中包囲網という政治的な目的はなかった。しかし、日本が自ら東シナ海で不利な状況を生み出したのと同じく、中国の強硬な姿勢が日本の目を南シナ海にも向けさせることになったのである。

 だが、中国は日本こそ東南アジアや南シナ海にとって危険極まりない存在だという主張までも吹聴しているようだ。

日本による南シナ海介入、東南アジア諸国は警戒を(2)=中国

 羅氏によると北東アジア国家である日本が東南アジアの南シナ海問題に積極的に介入し、仲をかき乱し、対立を引き起こすのは大胆不敵な拡張行為で、日本の平和憲法だけでなく、国際法の拡張に対する制限にも反する。

  第二次世界大戦の策源地である日本は悔いを改めず、利益を惑わされ、陰で武力を拡大するばかりか、経済拡張の手を南シナ海にまで伸ばしている。これについて、崔外交部副部長は10日、日本は何が日本の国家利益なのかはっきり見極めるべきだと警告した。

  羅氏は「東南アジア各国に、傷が癒えても痛みを忘れないよう、虎を飼って災いを残さないよう警戒し、事前に備えなければならないと注意を促す必要がある。一旦、日本などの域外勢力が南シナ海地域に介入すれば、後の災いは予測できない。東南アジア各国が警戒すべきは、中国の発展ではなく、日本の野心だ」と主張した。

南シナ海問題に介入する野次馬のインドと危険な日本(1)=中国

 日本の資源不足を考えると、南シナ海は日本が世界に打って出る欠かせない海域で、その戦略的利益への欲望は言わずとも知れている。今日、世界情勢は大きく変化しているが、日本のこうした地政的な苦しい立場およびこうした立場から抜け出そうとする日本の思惑は変わっていない。

  日本は中国の「強硬な主張」抑制を言いがかりに南シナ海に再び介入し、フィリピンやインドネシアもそれに応じた。実際それは南シナ海各国にとって狼を部屋に引き入れる入れるようなものだ。

 皮肉なのは、今回日本の南シナ海への門を開いたのは当時太平洋戦争で最初に被害に遭ったフィリピンであることだ。戦後、極東で築かれたヤルタ体制は東南アジア諸国に平和を保証する体制である。この体制は台湾の主権を中国に返還し、その役割は日本の南シナ海進出を抑えることにある。

  同体制の法的保障はすなわち日本の平和憲法に等しい。現在の平和憲法はほぼ有名無実となり、一部の東南アジア諸国はひより見主義で日本に南シナ海の門を自ら開き、結果、極東地域の平和を保証するヤルタ体制に穴をあけた。東南アジア諸国にとってこれは自ら墓穴を掘ったことになる。

それに比べ、日本の生命線は南シナ海で、歴史的に台湾を実際の支配下に置いた経緯がある。将来、日本が「台湾独立」勢力の台頭を支援したなら、それに続いて東アジア全体の災難が待ち受けているだろう。


連日のように日本の南シナ海「進出」、東南アジア各国との協力を非難し警戒する記事が出されているのは、それだけ中国が危機感を抱いていることの裏返しだ。ついには、尖閣諸島漁船衝突事件の時に発動した「強力な武器」までちらつかせている。

日本の南シナ海問題介入、レアアース輸出制限の報復措置も=中国

 中国外交部の崔天凱副部長はこのほど、南シナ海問題に日本が介入しようとしているとし、「現在の状況下において、何が日本の真の国益になるのか、比較して考えるべきだ」と述べ、日本をけん制した。中国国際放送局は16日、「これは日本への警告であり、言い換えれば日本に報復措置を取るという意味だ」と報じた。

 記事は、「わが国は日本への報復措置を十分に行える」と主張しつつも、このような形の経済制裁を取らなくても、多くの日系企業が増値税、関税、所得税の面で脱税をしており、中国側がこの機会を利用して違法行為を取り締まるだけで、日本側を刺激することができるとも主張した。

また、東南アジアで日本の南シナ海進出を阻止する協力体制が出来たとも考えている。

日本の南シナ海問題に関する「離間の計」は勝算小=中国人有識者

 しかし、日本が南シナ海問題に全面介入する姿勢をみせた際、中国はベトナムと南シナ海の平和と安定を守る前向きな意見で合意した。

  今月10日、中国共産党中央の胡錦濤書記と訪中したベトナム共産党中央のグエン・フー・チョン総書記が会談を行い、双方は「中華人民共和国とベトナム社会主義共和国の海上問題の解決を指導する基本原則に関する協議」に調印。両国は今後、政府境界交渉代表団団長定期会合を年2回、必要時には特別会合を開き、双方は海上問題に関する速やかな意思疎通、適切な処理のため、政府代表団の枠組み下にホットラインを設置することで合意した。

  これは南シナ海問題の解決に転機が訪れた形となった。日本が南シナ海の問題を混乱させるのはそう容易なことではないようだ。

だが、これはベトナムの駆け引きだった。二週間後にはベトナムは日本とも合意したのである。

中国けん制、多国間連携で…日・ベトナム国防相

 一川防衛相は24日、ベトナムのフン・クアン・タイン国防相と会談し、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国と中国の間で領有権争いが続く南シナ海問題について、「国際社会で関係する国が協力して解決しなければならない」との認識で一致した。

 米国を含む多国間の連携で中国をけん制していく方針も確認した。

日本、ベトナムと防衛協力強化で合意 防衛相会談

 一川保夫防衛相は24日、防衛省でベトナムのタイン国防相と会談した。「防衛協力・交流に関する覚書」を締結し、両国の防衛協力を強化することで合意した。ベトナムが中国と領有権を争う南シナ海問題についても協議し、国際社会で関係国が協力して解決するべきだとの認識で一致した。

「離間の計」に失敗したのは中国自身だった。

そこでついには冒頭の「武力行使」をちらつかせる事態に至ったのである。


また、中国の被害者意識と自己正当化は海上だけではない。空にも及んでいる。

中国国防省、近海上空での日本の頻繁偵察に抗議

 中国国防省の楊宇軍報道官は26日の定例記者会見で、ここ数年、日本の自衛隊の偵察機による東海での偵察が頻繁に起こっていると指摘し、これは中国の安全を脅かし、両国の海上および空での衝突を引き起こす要因になる恐れがあると抗議しました。

自衛隊機の中国近海偵察 国防省報道官が不快感

「中国の軍事訓練活動を妨げ、中国の艦艇や航空機の安全を脅かし、中日両国の海上および空での衝突を引き起こす要因になる恐れがある」と訴えた。

近年、東シナ海では自衛隊機による中国に対する偵察行動が頻繁に起こっている。統計では、今年1~9月は、中国近海を偵察する自衛隊機が前年同期に比べ44%増えた。

楊報道官は「我々は日本側が責任感をもって、海と空での衝突と不祥事の発生を避け、それを防ぐ有効な対策を取ることを望む」と述べた。

楊報道官は、「日本の中国に対する領空侵犯の指摘には証拠がなく、中国軍機の飛行活動は国際法と国際実践に完全に合致するものだ」と主張した。



中国の肥大化した被害者意識と自己正当化が海に、空に漏れ出している。それは渤海で流出した油のようにとどまることを知らない。しかもただ流されて漂着するのではなく、様々な摩擦を巻き起こしている。

中国が大戦中の日本を引き合いに出せば出すほど、その言葉が自分に向けられることを認識すべきだろう。

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tag : 韓国 海洋警察庁 武力行使 中国 違法漁船 南シナ海 ベトナム フィリピン インド

2011-10-27 : 南シナ海問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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