「海上警察力」強化を理解していない産経新聞と「長崎五島沖中国漁船=工作船」説?

今回の中国漁船拿捕、以外にも産経新聞が取材に基づくそれなりに真っ当な記事を書いていた。

中国漁船摘発 領海内で中国側が干渉する理由なし 尖閣は緊張続く

 海保関係者によると、一般的に、外国漁船を領海内(約22キロ)で摘発した場合、逮捕した容疑者を送検し、略式起訴となるケースが多い。容疑者は罰金を納付後、漁船で帰国する。一方、排他的経済水域(EEZ、約370キロ)内では、容疑者が違反事実を認め、担保金を支払えばその場で釈放するという。

 海保幹部は今回のケースを、「漁船の目的などもきっちり捜査した上での判断になるが、略式起訴になる可能性が高い」とみる。

この海保幹部の読みのとおりになったのはご存知の通りである。

もっとも、冷静な海保に対して一般の見方は異なるし、産経新聞としては尖閣の問題に結び付けたいようだった。

昨年9月の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件をほうふつさせるが、海保関係者によると、今回は中国側が領有権を主張する海域ではないため、干渉してくる理由はないという。

「今回は釈放しないでください!」。7日朝、海上保安庁に寄せられた電話に担当者は苦笑した。今回同様に違法操業の外国漁船を摘発する例は毎年数件あり、巡視船に体当たりを繰り返した尖閣事件とは根本的に違うからだ。

今回とは事案が異なるが、尖閣沖では中国側の挑発行為が相次ぎ、海保の緊張状態が続いている。

ちなみに、尖閣諸島衝突事件で船長を釈放したのは海保ではなく検察であり、今回も海保が釈放したわけではない。立件し検察に送致した後は、基本的にはノータッチである(もちろん捜査協力や捜査資料の提出を行うのだが)。

わざわざ、この件について産経新聞にとっての社説となる「主張」でも取り扱っている。

中国漁船摘発 海上警察力の強化を急げ

 領海を侵犯する漁船の中には、工作船の疑いがあるものもある。逮捕した船長らの事情聴取は、徹底して行うべきだ。尖閣諸島沖の衝突事件でみせた、不可解な釈放劇を繰り返してはならない。

 日本は海洋国家だが、海上保安庁の巡視船は121隻、巡視艇は236艇にすぎない(平成22年度末)。しかも現在、東日本大震災による捜索活動や、中国の漁業監視船などが頻繁に出没する尖閣諸島沖への配備に船艇が割かれ、日本の海は手薄な状況にある。

 また、海上保安庁の職員1万2600人は、神奈川県警の警察官1万5500人を下回る。神奈川県の面積と、日本の四方を囲む海の広さを想像してほしい。

 現行の態勢では不十分だ。海保は今年、不審船に対し立ち入り検査なしで退去命令を出せるようにするなど、海上警察力を強化する方針を発表したが、実行されていない。領海侵犯を許さない態勢作りが急務だ。

海上警察力の強化を訴えるのは結構だが、「不審船に対し立ち入り検査なしで退去命令を出せるように」なれば今回の件も退去を命令するだけで「立入検査忌避」での立件をする必要がなくなる、つまり司法処理が出来なくなる、ということには気付いていないようだ。

また、もとは同根であったとはいえ、中国漁民が解放軍や海監・漁政の指揮下で動く現在の「海上民兵」と、旧ソ連や北朝鮮そして中国が行っている情報収集=「工作船」との区別もできていない。まるで尖閣で衝突してきた漁船が「工作船」だったかのような物言いである。

ちなみに中国人民解放軍海軍の偽装情報収集艦=工作船は「武装偵察漁船」と呼ばれる。いずれ紹介する予定だ。


 実は今回の「漁船=工作船」説の根拠となりかねない発言を、某「専門家」がしてしまった。

長崎・五島列島沖中国漁船船長逮捕 中国漁船が長崎港に入港

海上安全保障にくわしい東海大学海洋学部の山田吉彦教授は「中国というのは、勝手に遠洋まで来て漁をできる国ではないので、おそらく(中国政府の)漁業監視部門の支配下に、コントロールの下に置かれている船です」と話した。

そのまま受け取れば「漁政」の指示のもと、漁船が「領海侵犯」したと思われてもしょうがない。だが、漁政は単に海上警備機関ではなく、漁業当局だ。中国漁船の管理をしているのは当たり前のことである。同様に日本の漁船も勝手に遠洋で漁業は出来ないし、漁業当局である水産庁や県農林水産課のコントロールの下に置かれている。わざわざここで、このような説明をする必要性がちょっと理解できない。

まぁ、テレビ局側が都合よく取り出したのかもしれないが。 このエントリーをはてなブックマークに追加

tag : 産経新聞 海上保安庁 海上警備 中国 漁政 尖閣諸島 違法漁船 武装漁船 情報収集艦

2011-11-09 : 尖閣諸島問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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