韓国海洋警察庁、特攻隊まで投入し、中国漁船を検挙!・・・しかし

日本では先日の中国漁船船長に対する略式起訴と罰金による釈放が「弱腰外交」だと、批判にさらされている。
もっともこれは、「外交」ではなく「法律に沿った処理」であるので全くの的外れな非難だということは、先日のエントリでも説明した。

実は、先月末の韓国による中国漁船拿捕も同様に罰金により即日解放されている。

韓国、拿捕された中国漁船2隻と関係船員を釈放

 光州総領事館は新華社の記者に「中国・山東籍の漁船3隻が22日、韓国の排他的経済水域で無許可の捕獲作業を展開したことで韓国・木浦海洋警察署に処置された。具体的には1隻の漁船が罰金を納めた後、釈放された。ほかの2隻の漁船が全羅南道木浦港に差し押さえられた。罰金を納めた後、韓国の警察当局は25日、同2隻の漁船および20人の船員を釈放した」と答えた。

 光州総領事館によると、同事件が発生して以来、総領事館と中国大使館は積極的に韓国側と交渉し、韓国側に全力で怪我をした船員を治療し、留置された中国船員を優しく扱うことを要請していた。また迅速に中国船員と連絡をとった。同2隻の漁船は予定で25日、木浦港を離れるが、気候条件の制限で26日に延期された。韓国側の誘導により公海に向かう。1人の頭部に負傷した中国船員が木浦港で治療を受け続ける以外に、ほかの19人が同船で帰国する。

結果を見れば、この事件と日本における拿捕に大きな違いはなかった。

しかし、面白いことに日本の「弱腰外交」は韓国では「強硬外交」として評価されている。

韓国政府の弱腰外交が中国の横暴を生んだ=強硬な日本外交を見習え―韓国紙

10日付朝鮮日報は中国漁船問題の特集を掲載。韓国政府の弱腰姿勢こそが問題だと強く批判した。先日、日本海上保安庁は領海に侵入した中国漁船を拿捕。停戦命令に従わなかった船長を略式起訴した。

日本が強硬な態度を示したにもかかわらず中国外交部は迅速に処理するよう要求しただけだったが、韓国による取り締まりは「暴力的だ」と批判した経緯がある。韓国政府の弱腰外交こそがこの違いを生んだと結論付けている。

日本の一部では、多くの中国漁船を拿捕しているとして知られている韓国政府・海洋警察庁だが、その隻数や人数に比べ、実際の法的処理、つまり起訴まで持ち込めた例は、全体数に比べかなり少ないのが実態である(別のエントリで扱う予定の朝鮮日報社説にも具体的な数が出てくる)。

だからこそ、中国政府に有無を言わさず軽微な罪状でも、略式とはいえ起訴に持ち込んだ日本の姿勢が羨ましく思えるということなのだろう。

その一方で、自分たちが被害を出しつつ懸命に取り締まっているのを中国に「武力行使」と非難された海洋警察。海上保安庁(七管)による中国漁船拿捕に刺激されたのか(というよりは、以前より作戦を計画していたのだろうが)、違法漁船取締りの強化を発表した。

違法操業の中国漁船を取締る! 韓国海洋警察が強化を表明

 報道によると、牟庁長は中国漁船による違法操業が目立つ排他的経済水域を視察後、木浦海洋警察に赴き、中国漁船による違法操業の現状と違法操業対応計画について討議した。

  牟庁長は、木浦海洋警察が黄海の3分の1以上の水域で、中国漁船による違法操業取り締まり任務を担当していることについて言及し、木浦海洋警察が最大限の努力を払って海洋主権を守り、漁業資源を保護するよう希望すると述べた。


ここまで、中国漁船が韓国の水域で違法な操業を繰り返すのは、自国で売るためだけではない。中国産として韓国に「輸出」するためだ。韓国漁船が日本のEEZで違法操業し日本へ売りこんだり、北方領土周辺で密漁されたものに偽造した輸出許可証を付けて「ロシア産」として売るのと構図は同じだ。

中国漁船が韓国でガンギエイを捕るワケ

 最近、韓国の領海で違法操業する中国漁船100隻余りが底引き網でカタクチイワシやサバを捕る際に、黒山島(全羅南道新安郡)のガンギエイまで一緒に漁獲していることから、韓国海洋警察が取り締まりを強化している。中国では昔からガンギエイを食べる習慣はないが、なぜわざわざ韓国まで来てそれを捕るのだろうか。

 現在、ガンギエイ漁を専門とする中国の漁船は10隻ほどとみられ、残りの約100隻は別の魚を捕る際にガンギエイも一緒に漁獲している。西海(黄海)のガンギエイ主産地は黒山島と大青島(仁川市甕津郡)で、とりわけ黒山島付近でよく捕れる。

 中国の漁船が韓国の領海や排他的経済水域(EEZ)で漁獲したガンギエイを自国で水揚げすれば、中国産に変わる。海産物の産地は漁獲した場所ではなく、委託販売した場所で決まるためだ。

 中国の漁師たちは、黒山島産のイシモチなどさまざまな魚を韓国の領海やEEZで漁獲し、自国で販売する流通ルートを習得したため、今ではガンギエイにまで手を出しているというわけだ。

単なる密漁ではなく、組織犯罪として成り立っているのだ。

今回、海洋警察庁は取締強化の言葉どおり、中国違法漁船に対しこれまでにない方法で一斉検挙を狙った。

海洋警察特攻隊SSAT、すなわち特殊部隊の投入である。

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韓国の海洋警察特攻隊員が16日、違法操業をしていた中国漁船に飛び乗ると
中国船員が竹の棒を振り回し抵抗している。

違法操業の中国漁船、拳銃持つ韓国海洋警察特攻隊も「恐くない」

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韓国の海洋警察の取り締まりを避けるために太極旗を立てている中国漁船。

「中国漁船13隻が違法操業中だ」。

16日午後1時40分、全羅北道群山市(チョンラブクド・クンサンシ)沖の於青島(オチョンド)から西方に160キロメートルほど離れた韓国側排他的経済水域(EEZ)。木浦(モクポ)海洋警察3009艦(3000トン)に緊急無電が入ってきた。近隣海域を巡回中だった西海(ソヘ)地方警察庁所属ヘリコプターから送った無電だった。ヘリコプターでは「操業許可板」がない船が魚を捕る姿をカメラで撮り証拠の確保を終わらせた状態だった。無電を受けた3009艦は緊迫するように動いた。

キム艦長は艦艇を横付けして一斉取り締まりをする代わりに精鋭特攻隊投入を決めた。特攻隊員はK-5拳銃と盾、榴弾発射機、スタンガンなどで武装した。午後3時5分、中国漁船600メートル前まで接近したキム艦長は特攻隊員らに「はさみ撃ちして操舵室を掌握せよ」と命令した。特攻隊員10人が高速ゴムボート1・2号に分乗し中国漁船の左舷に接近した。7ノットの速度で逃走した船に高速ゴムボートに搭乗した特攻隊員が乗り込むと中国船員3~4人が長い竹の棒を振り回した。


違法操業:ヘリ・特攻隊の登場に中国漁船「降伏」

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全羅北道扶安郡沖で違法操業を行っていた中国漁船12隻は、韓国の海洋警察に発見されると、
船体をロープでつなぎ、集団で公海上に逃亡しようとした。海洋警察のヘリは低空飛行で波を起こし、
漁船の進路を妨害した。ゴムボート3隻が中国漁船に接近し、鎮圧作戦で12隻全てを拿捕した。
/写真=チョ・ホンボク記者

 しかし、テロ鎮圧を主な任務としている特攻隊員は、あっという間に中国人船員を制圧した。電子衝撃銃、実弾入りのK5小銃、ゴム弾を発射できる6連射りゅう弾発射器、盾、警棒などで重武装した隊員に圧倒されたのか、中国人船員はやがて別の船に逃げ込んだ。隊員は鎮圧の模様をヘルメットに内蔵したカメラと伝送設備で3009艦の操舵(そうだ)室にリアルタイムで伝送した。

 特攻隊のパク・ヒボム戦術チーム長(42)は「ソマリアの海賊に拉致された三湖ジュエリー号の船員救出作戦に使われた映像リアルタイム伝送設備を中国漁船の取り締まりに初めて使用し、効果的な指揮を行うことができた」と説明した。

記事からは、特攻隊SSATが実銃のほか非殺傷装備を多数用いていたことが読み取れる。また、ソマリア海賊に捕らわれていた韓国船を救出した作戦と同様、ヘルメットカメラで情報共有を行っていたとのことだ(実は海警はソマリアの事件以前から中国漁船取締部隊にヘルメットカメラを装備させている)。

関連エントリ:ソマリア海賊を特殊部隊で制圧し、人質を救出した韓国海軍

img20110310141246042.jpg


特攻隊SSATまで投入したこの2日間だけで26隻もの中国違法漁船を拿捕した。

韓国、中国漁船の取り締まり強化…2日間で26隻拿捕=中国

 韓国政府はこのほど、韓国の排他的経済水域(EEZ)内で違法操業する中国漁船を対象に取り締まりを強化すると発表。韓国海洋警察庁などによると、16日、17日の2日間で、違法操業の中国漁船、約26隻が拿捕された。中国では人民網などが報じた。

  韓国海洋警察庁は16日午後、韓国のEEZ内で違法操業する中国漁船、約12隻を一斉に拿捕。その際、韓国海軍の艦艇やヘリコプター、特殊部隊などを総動員した。韓国でのその後の報道では、同庁が16、17日に拿捕した中国漁船は、約26隻に上ったと伝えられた。

普段は連結した中国漁船のほうが人数的に有利で、海警の取締官を圧倒していた。今回は、海警側が練度の高く装備も充実した特攻隊を投入したことにより、それが逆に作用し漁船が連結したまま、まとめて一斉検挙となったわけだ。

この一斉拿捕については海洋警察庁の上部組織である国土海洋部(日本の国土交通省に相当)の長官(同、大臣)が視察に訪れるほどだ。

韓国「中国漁民に不法操業の代償を深く認識させる必要がある」

 記事によると、韓国国土海洋部の権長官は17日、韓国群山(クンサン)海洋警察を視察し、海洋警察がだ捕した21隻の中国漁船に関する報告を聴取した。長官は会見の席で、「中国漁船に『不法操業は損なこと』と認識させなければならない。海洋警察が監視と攻撃の程度をさらに大きくしていくことを求める」と述べた。

  長官は、「もしも韓国海洋警察の監視に緩みが見られるならば、中国漁船の不法操業はさらに増加するだろう。それゆえ法執行をいっそう強化し、中国の不法操業船が防御線を超えられないようにする必要がある」と指摘した。さらに長官は、海洋警察の装備と人数が不足している現状に理解を示したうえで、「国民は海洋警察を信頼し、愛している。知恵を発揮して適切に解決することを期待している」と述べた。

今後も、監視と取締りをより強化するという。一方で、海警の装備や人数の問題にも言及、しかしこちらについては具体的な強化案は示さなかったようだ。

 実は、ここにこそ海洋警察庁の抱える大きな課題がある。今回の一斉検挙は韓国にとっては快挙だろうが、海洋警察の置かれている現状を露にしたともいえるのだ。今後のエントリによっていくつかそれを指摘していきたい。

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tag : 韓国 EEZ 海洋警察庁 海洋警察特攻隊 警備艦(船) 中国 違法漁船

2011-11-19 : 各国沿岸警備隊 : コメント : 4 : トラックバック : 0
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虎の子死す
12日、違法操業中の中国漁船に乗り込んだ海洋警察特攻隊員1名が船員の抵抗に遭い殉職したとの事。
特殊隊員が船員によって殺害された事は、海洋警察にとって人材・面子共に深い痛手になりそうです。
2011-12-12 12:34 : 謎の捕鯨船 URL : 編集
Re: 虎の子死す
ついに恐れていた事態が起きてしまいましたね。しかも、前回の転落と異なり今回は刺殺という明確に殺意が現われています。

海洋警察についてはこの間の合同訓練について画像が手に入り、以前より準備していた取り締まり手法の問題点についてエントリを作成しようとしていた矢先でした。
一見、海保より充実した装備と法律で漁船の取り締まりに対応しているように思える海洋警察ですが、その実態は異なります。

…ネット上では、この事件をもって「この漁船はただの漁船じゃない」とか「船長は軍人に違いない」とか、あまつさえ「尖閣では実際はこのような事態になっていたに違いない」とか、またしても根拠のない主張が繰り返されているようです。
そうではなく、陸や海を問わず法の執行者はこのような危険に常にさらされていると認識すべきでしょう。韓国の新聞の社説ではこの事件の5日前に偶然にも、以前の海洋警察殉職者に対する政府の対応への批判が掲載されていました。

【コラム】違法操業と戦った殉職者、大統領は厚遇を‎
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/12/07/2011120701614.html

この件も合わせて海洋警察についてのエントリを出来るだけ早くアップする予定です。
2011-12-12 16:40 : 蒼海管理人 URL : 編集
No title
着ていた防刃チョッキニュースで公開されていましたが、脇ががら空きで丈も短いものでした。これじゃ刺され
るわなと。どうして精鋭特攻隊の防刃チョッキがこの程度なのでしょうか。
2011-12-12 23:04 : コキ URL : 編集
Re: No title
防護プレートを前後から挟み込むタイプのものではどうしても側面部が手薄になるのは避けられません。
海保では胴体を回り込むように守るタイプの防弾防刃救命胴衣をメインに使用していますが、同様に前後からプレートで挟み込むタイプの防弾チョッキ(プレートの入れ替えが可能なためより強力な銃器にも耐えられる)も存在しますし、前述の防弾防刃救命胴衣も腕周りや首周りがかなり広く開いており、今回と同様の危険性は存在するといえるでしょう。

防弾チョッキを着用していても当たり所が悪ければ死の危険があることは日本でも愛知県警SATが身をもって思い知りました。

最近の防弾チョッキでは首周りや肩にもプレートを追加しているものがありますが、洋上で活動する部隊にとっては落水時に身動きが取れなくなる危険性もあるため、そう簡単に導入できないのが悩みどころではないでしょうか。また、精鋭であればあるほど「守り」よりも「動き」を重視する性格も否めません。
2011-12-13 21:27 : 蒼海管理人 URL : 編集
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