シー・シェパードによる「使い捨て突入要員」作戦

UAVによる捕鯨船団の捕捉に成功したシー・シェパードは例年通りの妨害活動を開始した。

調査捕鯨:シー・シェパード妨害、捕鯨船に5時間--今年度初、南極海

 水産庁は5日、南極海で活動している調査捕鯨船団の1隻が、反捕鯨団体「シー・シェパード」(SS)の妨害活動を受けたと発表した。乗組員や船体に被害は確認されていない。今年度の調査捕鯨でSSの妨害を受けたのは初めて。

 同庁によると、船団に所属する捕鯨船「第3勇新丸」(720トン)は日本時間の4日午後6時ごろから約5時間、ロープやワイヤを引きながら航行するSSの小型ボート2隻に船首付近を約30回横切られたり、浮きのついたロープを近くに投げ込まれるなどの妨害を受けた。

以下の写真は(財)鯨類研究所提供のもの。6日に行われた2度目の妨害も含む。

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増強されたボブ・パーカー搭載のRHIBがロープをくくりつけたブイなどを投げ込み、航行の妨害を行っている。ロープを投げ込んでスクリューに巻き込ませるのは至難の業だが、ひとたび巻き込めば航行不能となり、ダイバーなどで取り除く作業が必要となる。また、機関に負荷を与え、損傷する可能性もあり危険な行為であるといえる。そうした航行妨害のほか発炎筒の投げ込みも行われた。

今回のRHIBによる妨害は、行為そのものを見れば例年通りだが、その手段となったRHIBは単に数が増強されただけではない。後部に水上レーダーが搭載され母船からの指示なしに、ターゲットとした捕鯨船団を追い続けることが出来る。

これにより波で損傷したブリジット・バルドーが担っていた高速追尾および針路妨害の任務をRHIBが代行できるわけだ。

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シーシェパードのRHIBに搭載されたフルノ製レーダー
同社のレーダーは優秀であり各国海軍艦艇から北朝鮮工作船・中国違法漁船に至るまで搭載されている



もっとも、ブリジット・バルドーの損傷は彼らにとっても予期していないアクシデントであり、RHIBがその想定外の任務を行うとなれば乗っているクルーの負担も相当なものになる。それだけ事故の危険性も増す。むやみに日本側の船に接近する機会が増えるからだ。

事故でもおきれば日本の調査捕鯨に危険行為というレッテルを貼ることが出来る。自分たちの行為を棚に上げて、だ。

ただ、「ボランティア」で元手がタダであるクルーがほとんどといっても、RHIBを操船しロープやら発炎筒やらを投げ込める人間を簡単に失うわけにはいかなかったのかもしれない。

そんな時、シー・シェパードにちょうどいい、「使い捨て要員」があわられた。

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捕鯨監視船に乗り込み=反捕鯨支持者、豪州沖で-水産庁

 水産庁は8日、南極海での調査捕鯨活動の一環として派遣された同庁の監視船「第2昭南丸」に外国人3人が乗り込んできたと発表した。乗り込んできたのはオーストラリア人3人で、反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」によると、環境保護団体「フォレスト・レスキュー」のメンバー。けが人や船に損傷はなく、監視船に乗船している海上保安官が3人から事情聴取している。
 同庁によると、日本時間同日午前5時39分、豪州南西部のバンベリー港から約40キロの沖合で、監視船に急接近してきたゴムボートから3人の男性が乗り込んできた。

この「フォレスト・レスキュー」はオーストラリアの森林保護団体で過去には伐採に反対しメンバーが逮捕されたこともあるという。今回、シー・シェパードに協力を申し出たため、代表であるワトソン容疑者が連携を決意したのだという。

「協力」や「連携」とは言うものの、その実態は「捨て駒」だ。

おそらく、ピーター・ベスーン容疑者侵入事件を参考に今回の「作戦」を立案したのだろう。
監視船とはいえ第2昭南丸は本来、キャッチャーボートであり後部の舷側は低い。ジェットスキーで接近すれば容易に乗り移ることが出来る。

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オーストラリア南西部沖で、日本の調査捕鯨船団の監視船「第2昭南丸」に接近する反捕鯨団体「シー・シェパード」のボート=撮影日不明(ロイター=共同)

今回、第2昭南丸は「エンジントラブル」で停泊していたスティーブ・アーウィンの監視を行っていたというが、この「エンジントラブル」自体が、「作戦」のための偽装だったのかもしれない。

今回の目的は、おそらくこの「捨て駒」のフォレスト・レスキュー・メンバーを拘束させ、第2昭南丸を足止め、さらには逮捕させて裁判のために帰国させることにあったのだろう。そうなれば彼らは「英雄」として新たな資金源となる。それ以上に、捕鯨船団の妨害の妨げとなる監視船を引き離し、戦力を減ずることが出来る・・・はずだった。

ところが、日本側はそれを見越していたのか、あっさりとオーストラリア側への引渡しを決めてしまったのだ。

乗り込んできたメンバーが、特に妨害行為もせず、またピーター・ベスーンのように凶器となりうる「道具」もなにも持っていなかったことも大きい。逆に言えば、乗り込ませること自体が「目的」であったことの証明でもある。

捕鯨監視船侵入3人、豪に引き渡しへ

南極海での調査捕鯨に同行している水産庁の監視船「第2昭南丸」に8日、オーストラリア人を名乗る男3人が侵入した問題で、政府は9日、3人を同国政府に引き渡す方針を固めた。

 政府関係者によると、艦船侵入容疑での立件も視野に、同船に同乗していた海上保安官が3人から任意で事情を聞いたが、乗組員への暴行や器物損壊がなかったことを重視したという。


捕鯨監視船侵入の3人、豪に引き渡しへ 政府方針

 政府は、3人が乗り込んで来ただけで船や乗組員に危害を加えていないなど悪質な妨害活動はしていないことや、日本に連れ帰るには監視船を離脱させる必要があり、監視能力が弱まることなどから、総合的に判断した。2008年1月に捕鯨船に乗り込んだ豪州人ら活動家2人を拘束した際にも、豪州側に引き渡した例がある。

記事にあるように2008年にも活動家が乗り込んできたが、そのときは食事まで要求してオーストラリア税関監視船のお迎えで帰っていった。今回も丁寧にお迎えが来るそうだ。

ただ、今回異なるのはその身元引き受け先であるオーストラリア政府の態度だった。

日本政府の協力に謝意=監視船侵入3人の引き渡しで―豪首相報道官

オーストラリアのギラード首相の報道官は10日、声明を発表し、日本の調査捕鯨監視船「第2昭南丸」に反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」の手助けを受けて豪州人活動家3人が侵入した問題で、日本政府が豪側の要請に応じ、3人を立件せず豪政府に引き渡す方針を固めたことについて「日本政府の協力に感謝する」と表明した。

 同報道官は、現在公海上を航行中の第2昭南丸から引き渡しを受けるため、豪政府の船を派遣したことを明らかにした。一方で3人の侵入行為に関しては「容認できない」と批判し、今後同様の行為をした場合には訴追される可能性があるとくぎを刺した。

日本政府への謝意を表明したうえに、訴追の可能性までちらつかせているのだ。

 南極海の権益アピールの段階から、国際法廷へと舞台を移したいオーストラリア政府にとっては、もはや国際法の隙間を突いた犯罪行為は邪魔なだけなのだろう。IWC総会でシー・シェパードの行為が非難される決議が出たことも大きい。

 フォレスト・レスキューを「捨て駒」「使い捨て」にするつもりだったシー・シェパードは、実はオーストラリア政府によって「捨て駒」として「使い捨て」られたのだった。

豪首相、乗り込み活動家を非難 SS攻撃姿勢を崩さず

 日本政府は豪政府に税関船を第2昭南丸が移動しやすい海域まで派遣するよう要求。豪政府はこれに応じる方針で、引き渡しまで数日間かかる見込み。ロクソン法相は「救出に数十万豪ドルの税金がかかる」などと述べ、SSと「フォレスト」に対して不快感を表明し、二度と危険行為を行わないよう警告している。

 しかし、「フォレスト」の報道担当者は豪メディアに「今回の乗り込みは価値のある行為だった」と述べ、「必要とすべきことは今後も行う」と宣言した。



こうなれば、フォレスト・レスキューのメンバーもシー・シェパードにとって無価値だ。オーストラリア政府へ引き渡されるまで遠慮する必要もない。協力者が乗っていようが乗っていまいがお構いなしに妨害行為を続行した。

SSが捕鯨監視船を妨害=豪の活動家も乗船中

 水産庁は11日、南極海での調査捕鯨船団に同行している監視船「第2昭南丸」が反捕鯨団体「シー・シェパード(SS)」から妨害を受けたと発表した。8日にSSの手助けで第2昭南丸に乗り込んだオーストラリアの活動家3人を含めけが人はなく、船の損傷も確認されていない。



シー・シェパードの本性がむき出しになったといえる。


一方、日本にも大きな課題を残した。乗り込まれない限り逮捕は出来ないというのは、乗り込んでこないだろうから逮捕した後のことまで深く考慮する必要はないということの裏返しだ。しかし、今回も彼らは平然と乗り込んできた。しかも、逮捕できるほどの行為や物件の所持があればいいが、微妙なところを狙ってきている。判断が素早く行われたおかげで影響は小さく留められるだろうが、今後も同様のことが起きるかもしれない。

また、キャッチャーボート転用(傭船)監視船と少数の海上保安官警乗チームの限界も明らかとなった。キャッチャーボートは目視で鯨を追跡しながら航行するため前方の視界は確保されている一方で、全周の監視が行き届いているわけではない。そのための設備も巡視船や水産庁取締船に比べれば格段に劣っているだろう。また、ヘリコプターやUAVなどへの対策は置き去りにされたままだ。

今後も捕鯨船団とシー・シェパードの戦いは続く。



※1/12、記述誤りの指摘があったため一部修正

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tag : 捕鯨・反捕鯨 シー・シェパード 捕鯨船 調査捕鯨 水産庁 取締船

2012-01-11 : 捕鯨・環境問題 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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