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木造小型船・密航者捕捉の難しさは領海警備の「盲点」ではなく「常識」

2007年の青森・脱北船事件では小型船を捕捉できなかった海保に対しマスコミから批判が起きた。

2007年6月5日 日本経済新聞社説
脱北者への備えと海の守りを

 北朝鮮船の漂着は、十一人が韓国への亡命を求めて福井県福井港にたどり着いた八七年一月の「ズ・ダン号」事件以来といわれ、海の守りにも一石を投じた。今回は全長七メートルほどの木造小型船で海上保安庁もレーダーで探知できなかったようだが、仮に工作船だったら失態だった。
 国土交通省は四日、小型船への警戒態勢を強化する方針を打ち出したが、沿岸警備も見直してほしい。


しかし、レーダーで小型の漂流物を補足し、さらにそれを小型船であると識別するのはかなり困難だ。木造船であればなおさらである。それができれば遭難者の捜索はかなり改善されるだろうが、海難での捜索活動の厳しさは周知のとおりである。通常のレーダーは魔法の鏡ではない。そもそも、巡視船艇や航空機が展開し、その捕捉範囲内に入ってなければ見つけることはできないのだ。

関連エントリ(Blogari):脱北ボート漂着!?

そして今回も同様の記事をマスコミは書いている。

木材と波に隠れ…レーダー網に穴 小型木造船、陸までわずか6.5キロ 

 能登半島沖で13日、保護された脱北者9人を乗せた小型木造漁船に積まれた水は一滴も残っておらず、航海の過酷さを物語った。その船が発見されたのは、陸まであと少しの海上。能登半島はこれまで、工作船による拉致事件の舞台となってきた。地元が「北朝鮮と向かい合っていると実感させられた」という今回の事態。領海警備の盲点が、改めて突き付けられた。

これは「盲点」だろうか?いや、むしろ「常識」である。

陸に近づくまで発見されなかった点について、海保幹部は「木材が電波を吸収したり、船が波と波の間に隠れたりする。巡視船のレーダーで木造船を捉えるのは難しい」と打ち明ける。

 しかし、能登半島は昭和52年に久米裕さん=拉致当時(52)=が拉致された現場で、何度も北朝鮮工作船の上陸ポイントとなったことが判明している。

 「工作船はしっかりした船を使うはずで、レーダーで捕捉できる」と海保。一方で、幹部は「四六時中、航空機を飛ばして監視したり、巡視船を大量に投じて隙間のないレーダー網を敷くべきだが、航空機、巡視船の数が足りず、現実には難しい」とも吐露。今回の脱北船の出現は領海警備の課題を浮き上がらせた。

もし小型船が工作船だったら・・・という指摘には上記の記述が答えている。資機材はほとんど乗せられず数名でたどり着けるかどうか分からない小型船単独で工作活動を行うのは無理なのである。軍事行動としては全くの不適格な不確実性である。作戦としての結果を求めるには一定の人員と装備が必要だ。

そのため北朝鮮は警戒の厳しい韓国沿岸では小型潜水艦・半没高速艇、日本海の向こう側で沿岸部が長大な日本では母船となる工作船(いわゆる不審船)とそれに搭載される小型船艇の組み合わせで工作活動を行ってきた。日本の場合、捕捉が難しい小型船を追うよりも、大型の工作船、そしてフネそのものよりも衛星や通信傍受で察知するほうが確実であり効率的なのである。

産経新聞が考える理想の領海警備とはどのようなものなのか一度読んでみたいものだ。もっとも今回の記事は、同紙にしてはまだましなほうだろう。読売新聞の記事に至ってはこちらが首をひねりたくなる内容だった。

首ひねる海保「木造船でレーダーすり抜けた?」

一方、巡視艇やレーダーなどで海上を警戒している第9管区海上保安本部(新潟市)からは「たまたま警戒の網の目を抜けたのか。木造船でレーダーもすり抜けたのかもしれない」と不思議がる声も上がっている。

海上保安庁の勢力では「網」といえるような警戒体制は敷けないし、フネがいなければレーダーもくそもない。このような木造船のレーダー反射については前回の事件の後、検証済みでありそのデータを9管も持っているはずである。

2007年9月4日 日本経済新聞 
レーダー捕捉実験、脱北木造船で海保――秋田沖、探知精度を検証。

 北朝鮮を脱出し、今年六月に青森県深浦町で保護された家族四人が乗っていた木造船をレーダーが捕捉できなかったことを受けて、海上保安庁は四日、秋田沖で実際に木造船を航行させ、レーダーにどのように映るか検証実験を行った。実験は同日を含め三日間程度実施する予定。
 海保によると、沖合約三十キロを航行する木造船を、巡視船四隻と航空機二機のレーダーで探索。木造船は鉄鋼製の船などと比べレーダーの電波を反射しにくいため、「小型の木造船はレーダーに映りにくい」という。結果をもとに今後、レーダーの探知精度を検証し、警備体制の強化を図りたいとしている。
 午前六時半すぎ、秋田港(秋田市)の倉庫からトラックで運ばれてきた木造船が海面へ下ろされ、秋田海上保安部の職員四人が乗り込んだ。晴れ間がのぞく天気で波も低く、軽油の入ったポリタンクなどを積み込むと木造船は沖へ進んでいった。六月二日に深浦港で保護された家族四人は、韓国に移送されている。

どうがんばっても捕捉できないものは捕捉できず、目撃通報に頼るほかないのは海保自身重々承知しているはずだ。

このときの脱北船事件はその後の巡視艇複数クルー制度導入のきっかけのひとつとなった。今度も、なんらかの予算獲得の根拠とする腹かもしれない・・・が、この間の中間取りまとめに比べればどんな要求も霞んでしまうだろうが。

ちなみに、この検証実験後、木造船は北朝鮮からの返還要求もなく財産的価値もない(管理費だけかかる)ため、当然のごとく海保が処分したのだが、産経新聞はこれを「海保が勝手に」と非難した。

2007年12月12日 産経新聞
脱北木造船を勝手に解体 海保

北朝鮮を脱出し、ことし6月に青森県深浦町で保護された家族4人が乗っていた木造船を、海上保安庁が業者に依頼し、産業廃棄物として解体処分していたことが12日、分かった。

第二管区海上保安本部(塩釜)は「捜査上などでの船体保存の必要性がなくなったため処分した」と話している。

木造船は、4人家族の二男が覚せい剤取締法違反容疑で書類送検され起訴猶予となった際などの証拠品として、青森地検が当初管理していたが、8月に海上保安庁に船体を引き渡していた。海保は9月、秋田沖でこの木造船を航行させ、レーダーの探知能力の検証に使ったが、検証実験終了後の同月28日、業者に引き渡したという。

木造船については、青森市の博物館が、展示用に引き取ることを検討するなどの動きもあったという。

関連エントリ(Blogari):北朝鮮脱北ボートとソマリアの海賊

今回も同様の処理が行われると思われるが、産経新聞がどのような反応を示すかある意味楽しみである(マテ



小型船そのものは脱北者を乗せていない状態でいくつも漂着しているし、ひょっとしたらそうした小型船で遭難してしまった北朝鮮の人間らしき遺体流れ着いた事例がある。

2008年2月5日 朝日新聞
無人船、漂着の怪 日本海岸に昨秋以降29隻 脱北?水害?地元に困惑

 謎の木造船が昨秋以降、日本海岸に相次いで漂着している。各海上保安本部によると、昨年11月以降、7道県で29隻を確認、このうち23隻が石川、新潟両県に集中する。長く人が乗っていた形跡が無く、両県を管轄する第9管区海上保安本部(新潟市)や両県警も工作船の可能性はほぼないとみる。だが、北朝鮮などからの密航者が使った可能性は捨てきれず、発見される度に調査を迫られる関係機関からは「迷惑な船」との声が漏れる。(浅見和生)

 「どこの物か分からない船が漂着するのは、気持ちいいものじゃない」。石川県輪島市議で輪島沿岸警備協力会の会長も務める坂下幸雄さん(75)は、先月15日の出来事を振り返る。
 日本海に突き出た能登半島の中ほどにある輪島市の袖ケ浜。午前9時ごろ、長さ6メートル、幅1・65メートルの木造船が漂着しているのを、近くの男性が見つけた。1時間後には、約10キロ離れた同市大沢町の岩場で長さ10メートル、幅2メートルの木造船が発見された。
 いずれも船体が損傷したり、海藻が付着したりしており、県警は事件・事故の可能性は少ないとみる。
 9管本部によると、昨年11月17日に石川県志賀町沖で漂流する船を海保の飛行機が発見してから1月18日までに、石川で11隻、新潟で12隻が見つかった。このほか、昨年11月以降、北海道、青森、山形、福井、鳥取の5道県で計6隻が確認された。
 ほとんどが長さ5~8メートル程度で、幅は1・5メートル前後。中には船体にハングルが書かれたものもあり、地名から船は北朝鮮のものとみられる。プロペラの付いたものもあるが、船は底が平らで長距離航海には向かないものばかり。藻や貝が付着し、長い間漂流した痕跡もある。
 それでも、海保や警察が無視できないのは、昨年6月に脱北者4人を乗せた木造船がレーダーに捕捉されることなく、同じ日本海側の青森県深浦町の港に流れ着いた例があるからだ。4人は韓国に移送された。
 脱北者を乗せた6月の船は長さ7・3メートル、幅1・8メートルで、形も輪島市に漂着した木造船と似ている。9管本部も「いずれも平底の木造船で、船形は一致している」と見る。袖ケ浜の船を見た坂下さんは「日本海側は密航者が来やすい。警戒は必要だ」と心配する。
 一方、石川、新潟両県警とも、船体の損傷が激しいことから、北朝鮮の工作船や脱北者を乗せた不審船の可能性は低いとみる。新潟県警外事課によると、県警内には「北朝鮮各地を襲った昨夏の水害で流れた船でないか」「秋に台風で多数の漁船が不明になったという報道があり、それではないか」などの見方があるが、結論は出ないままという。
 ただ、こうした船が発見される度に、海保や各県警は調査を迫られる。石川県警公安課の藪上治吉次席は「(発見される)その都度、人を出して不審な点がないか調べなければならない……」と話している。


2007年や今回はかなり運がよかったのと、脱北者が事前に準備していたことが影響している。そうでなければ上記記事のようなフネだけが辿り着く結果になっていただろう。

ある程度の大きさの(外洋航行が可能な)船は漁船も含めて国家の直接統制化にある(党の監督者が乗り込んでいる)北朝鮮では、このような小型船を限られた人間が使うしかない。一方、海外ではある程度の大きさの漁船等が難民あるいは不法移民を大量に乗せやってくる事案は珍しくない。そして、そうした難民船・密航船を洋上で捕捉することの難しさは常識である。

アメリカではキューバ難民・亡命者の問題があるが基本的にはアメリカまで見つからず辿り着けたものは受け入れられるものの、その途上でUSCGなどに発見された場合キューバに送り返されることになる。大きな騒動になったエリアン少年事件を覚えている人はいるだろうか。

一方、陸上ではメキシコ国境での不法移民問題もある。こちらはCBP(税関国境警備局)やICE(移民関税執行局)の管轄でUAVまで投入されているが根本的な対策にはなっていない。

オーストラリアでも難民受け入れ問題があり、昨年末にはクリスマス島に辿り着いた難民船が岩場に衝突し多数の死者が出た。

関連エントリ(Blogari):クリスマス島難民船遭難から見るオーストラリアの沿岸警備体制

欧州でも難民・不法移民問題がある。EUは域内の人・モノの移動を自由化させる反面、シェンゲン協定によって域外への取締りを強化していた。そこにきて、この中東・北アフリカでの動乱である。海を挟んで接していたイタリアやマルタはその対応に追われ、さらには移送の問題でフランスとの関係が悪化、協定そのものの意義が問われる事態となった。

関連エントリ(Blogari):チュニジア「難民」問題とイタリアの沿岸警備体制
チュニジア「難民」対策にEU国境警備隊FRONTEX投入か



日本においてもインドシナ・ボートピープルが問題になったこともあるし、北朝鮮の体制崩壊や第二次朝鮮戦争がかなりの危機感を持って考えられていた90年代には、大量難民対策が省庁等の枠を超えて議論されていた。つまり海上保安庁は(「徴発」も含めて)どれだけの船艇を動員できるか、警察・入管・税関は収容施設をどうするか、といったところである。

もちろんボートピープルのように実際にはほとんど辿り着けず日本海の藻屑となったり、偽ボートピープルのような問題が発生することも考えられる。大量の難民に工作員が潜入すれば、それこそ上記の新聞記事のような危惧が現実化するのだが、それ以前に大量の難民自体が日本にとっては脅威となるだろう。

EUは中東・北アフリカからの不法移民対策としてリビアやチュニジアなどの体制側に経済協力し、沿岸警備を強化させるなどして都合のいい防波堤としてきた。民主化という名の下で内戦状態になると、EUというかNATO側は反体制側を支援せざるを得ない状況となり、それに対しリビアのカダフィ大佐は、大量の難民発生そのものをEUへの脅し文句として使ったりもしていた。

今回の脱北船は権力引継ぎや軍事パレードの隙を突いて実行されたとされる。政権交代がどう転ぶにしろ大量難民発生の危険性はぬぐえない。さて、日本は以前の議論や対策が今も引き継がれ更新されているだろうか?現政権下ではそれも期待できないかもしれない。

「脱北」、薄い危機意識…政府連絡体制にも不備

ただ、関係省庁が一元的に対応する体制の発足が遅れたり、情報連絡が滞ったりするなど、政府の危機管理意識の薄さを指摘する声も出ている。

 今回の事案について、政府内では「07年の青森の事例に沿って、淡々と処理するだけ」(首相周辺)などと、軽く見る見方が大勢だ。9人が乗ってきた小型木造船(全長約8メートル)は、「レーダーなどの装備もなく、漁に使う小船を改造した軽装備なもの」(海上保安庁)と見られることや、9人のうち3人が子供であることなどから、「北朝鮮の工作員などではなさそうだ」(外務省筋)との見方が強いためだ。

 だが、脱北者や朝鮮半島からの難民をめぐっては、今後、北朝鮮情勢がさらに不安定になった場合、日本に相次いで流れ着くのでは、との懸念が以前からある。今回の野田政権の対応には、近い将来のそうした危機管理を想定した動きはほとんど見られない。

 9人の韓国移送についても、政府内には「韓国には受け入れ施設もあり、取り調べ能力が高い」などの声すら聞かれ、早く日本の管理下から手離したいとの姿勢がにじむ。北朝鮮の現状を聞くなどの対応を考慮しているのか、疑わしいとの見方も出ている。

 また、政府内の連絡体制にも、内部から疑問の声が上がっている。海上保安庁からは、9人が韓国への移送を希望していることなど、具体的状況について外務省への連絡が遅れた。同省関係者からは「報道で初めて知ることもあった。政府対応としてまずい」との声が漏れた。


連絡が遅れたもなにも外務省自身の動きが遅すぎる・・・。

脱北者漂着:長崎の入管施設へ移送 政府が仮上陸許可

 藤村修官房長官は14日の記者会見で、石川県沖で発見された脱北者9人に関して「(韓国行きという)希望があることは聞いている。韓国との協議は詳細な事情を把握したうえで適切に対応する」と述べた。外務省は今後、職員を派遣して9人から直接事情を聴き、身元確認などを行うことを検討している。


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テーマ : 中朝韓ニュース
ジャンル : ニュース

tag : 海上保安庁 脱北 北朝鮮 領海警備 国境警備 難民 不法移民 産経新聞 読売新聞

2011-09-15 : 各国沿岸警備隊 : コメント : 2 : トラックバック : 0
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No title
レーダーや哨戒から逃れた小型船を民間ボランティアや漁船に見つけてもらう。海保や日本財団の努力がある種実ったような。しかし見つけて見張った漁師はすごい
2011-09-16 20:12 : コキ URL : 編集
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木造船をレーダーで捕捉できないのは常識だ。それはそうだろう。しかしそれを言い切ってしまうのなら、木造船であれば不法侵入や日本国民の拉致、犯罪を防ぐことができないのは常識だ。ということになる。
海上保安庁が無用の長物であることもまた常識となる。
2014-07-26 15:18 : 人なら誰でも URL : 編集
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