東シナ海波高し、地震計設置まで妨害する中国海監

今月に入ってから東シナ海が騒がしくなってきた。
まず現われたのは、この海域での「常連」となった漁政である。

今年になってから現われたのは2回目だが、漁政202は既に何度もこの海域での「常態化任務」についている。また、漁政35001のほうも2回目の出現だ。

中国漁業監視船が尖閣接続水域に、今年2回目

 12日午前9時頃、沖縄県石垣市の尖閣諸島・久場(くば)島の北北西約42キロの接続水域(日本領海の外側22キロ)内に、中国の漁業監視船「漁政202」と「漁政35001」の2隻が入ったことを海上保安庁の巡視船が確認した。

尖閣周辺にまた中国漁業監視船 「通常のパトロール」と主張

海保によると2隻は北東に向けて航行し約30分後の午前9時27分ごろ、接続水域を出たという。

 海保によると、漁業監視船は無線で「通常のパトロールを実施している」と主張したという。

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航行する中国の漁業監視船「漁政35001」(右上)と、警戒する海上保安庁の巡視船「りゅうきゅう」(第11管区海上保安本部提供)

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久場島付近の接続水域を航行する中国の漁業監視船「漁政202」(上)と「漁政35001」(第11管区海上保安本部提供)


漁政202は同船及び同型船が繰り返し現われていることからも分かるように、こうした「任務」にむいた外洋監視船である。しかし、地方の中型監視船である漁政35001を繰り返し派遣する意図はなんだろうか。おそらく、地方漁政にも今後1000トン程度まで大型化したものを配備し、このような任務に継続的に参加させる狙いがあるのだろう。「常態化」は単に政治的デモンストレーションだけではなく、今後の権益獲得のための練度維持となりつつあるのではないだろうか。

関連エントリ:「いしがき」増強後、初の中国漁政接近


漁政船が頻繁に現われる一方、それらの船が監視対象とするはずの中国漁船が尖閣諸島海域まで深く侵入し操業することは少なくなった。一方で、日中対峙の隙を狙ったのか元から縄張りとしていたのか韓国漁船が違法操業で拿捕されている。もちろん日本側の海上保安庁によってである。

尖閣諸島沖で韓国漁船拿捕、EEZ内ではえ縄漁

 石垣海上保安部(沖縄県石垣市)は17日、沖縄県の尖閣諸島・久場島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)内ではえ縄漁をしていた韓国漁船「プ ギル」(13人乗り組み、48トン)を拿捕(だほ)し、船長の韓国人ユン・ジョンシク容疑者(60)を漁業主権法違反(操業水域違反)容疑で現行犯逮捕した。

 発表によると、ユン容疑者は同日午前、同島から北北西に約100キロの海域で、日本の許可を得ずに漁をした疑い。

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違法操業する韓国はえ縄漁船「プ・ギル」=17日午前10時25分ごろ、沖縄県の尖閣諸島・久場島の北北西約100Km(石垣海上保安部提供)


この日本側の法執行に対して中国側は何のコメントも出していない。もし、彼らの主張どおり中国側のEEZであれば日本の海上保安庁が警察権を行使することは許されない行為になるはずなのに、である。

この韓国漁船はボンド制度に基づく担保金保証書の提出で「通常の手続」どおり釈放された。

韓国漁船の船長釈放 EEZで無許可操業 石垣海保

 石垣海上保安部(沖縄県石垣市)は18日、沖縄県・尖閣諸島に近い日本の排他的経済水域(EEZ)内の操業が許可されていない場所で漁をしたとして、漁業主権法違反(操業水域違反)の疑いで17日に逮捕した韓国はえ縄漁船「プ・ギル」(48トン)の船長ユン・ジョンシク容疑者(60)を釈放した。

 代理人の韓国大使館領事部から約200万円の担保金の提供を保証する書面が出されたため、EEZ内で違反した場合に担保金か保証書を提出すれば釈放する制度を適用した。船長は18日、他の乗組員とともに船で出国した。



一方、尖閣諸島漁船衝突事件以降、この海域での(海保に対する)活動を漁政に譲った海監総隊も、東海総隊最大最新のヘリ搭載型監視船「海監50」を就役させ実際の任務に就かせてから、再び活発化を予感させる動きを見せていた。

中国海洋局と海軍、権益確保へ連携(日経 2012/2/6 記事消滅)

中国近海での巡視活動などを担う中国国家海洋局の劉賜貴局長は6日までに中国海軍トップの呉勝利司令官と会談し、海洋権益の確保へ連携を強めることで一致した。南シナ海や東シナ海で中国と領有権を争う周辺国の懸念は一層強まりそうだ。国家海洋局の機関紙「中国海洋報」が伝えた。

 同紙は、国家海洋局所属で東シナ海を管轄する中国海監の東海総隊が現在、排水量1千トン以上の大型巡視船7隻を含む19隻の巡視船を保有していることも明らかにした。

中國海監東海總隊已有7艘千噸級以大型上執法船

当然、この1000トン以上の7隻には、海保測量船「昭洋」の活動を二度も妨害した(うち1回は失敗)海監51や前述のヘリ搭載型「海監50」、それとともに合同パトロールを行った「海監66」も含まれている。

その「海監66」がついに海保に対して行動を起こした。

中国公船が海保船に測量中止を要求 日本EEZ内で

 海保によると、海監66は同日午後7時15分ごろから昭洋と並走を始め、無線で船の種類や乗船人数などを質問し「中国の法令が適用される海域だ。直ちに調査を中止しなさい」と要求。昭洋は「わが国のEEZにおける正当な調査活動を実施している」と伝えた。

 海監66は同45分ごろ、約550メートルまで昭洋に接近。同50分ごろ、いったん離れて約15キロ程度の距離で並走を再開した。

 昭洋は今月15日に東京を出港し、18日に今回の海域に到着。海底に地震計約100基を設置し、地殻構造の調査などを3月上旬ごろまで行うという。

関連エントリ:国内からも中国からも攻められる海上保安庁

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「海監75」「同23」に続く二期工程1000トン級Ⅱ型の3番船「海監66」である。そして海監の増強計画はこの二期工程の後もずっと続く。


関連エントリ:中国の尖閣「棚上げ」の裏で進む、海事機関の「尖閣海域常態化」

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上記2枚、実任務に就いたばかりの海監50とともに共同パトロールを行う海監66


海底地震計の設置によって地殻構造の調査を行っていた測量船「昭洋」に対して調査中止を要求してきたのである。曰く「この海域は中国の管轄海域である」と。しかし、実際には日中中間線の日本側である。中国はこの中間線の存在を認めていないものの、海底ガス田開発においてはギリギリこの中間線を越えない形で海上施設を建設していた。だが、本格操業が始まってその配慮は必要ないということなのだろう。

大陸棚延長に基づいて東シナ海の権益を独占したい中国にとっては、日本が地殻構造の調査を行うことがもっとも嫌なのだ。しかし、地殻構造の解明は日本にとって、単に海洋権益の確保だけでなく地殻変動即ち地震の発生メカニズムを知る上でも重要である。ひいては環太平洋、地球規模での利益に資するものだ。

~大陸棚の限界画定のための調査~
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海底における地震活動の監視に向けて ― 海底観測からのアプローチ ―
第7回/海底における地震観測

 海底地震計の開発により、海底下の詳しい震源分布と構造がわかるようになりました。余震観測により、震源断層の位置と広がりも正確に推定できます。また人工震源を用いることにより地殻深部までの詳しい構造探査が可能になり、自然地震を用いてより深部までの構造も求められています。今年の春まで大規模に実施された日本周辺の大陸棚調査では、1,000台近くの海底地震計が繰り返し使用されました。



その調査を中国は自国のみの利益のために妨害しているのだ。

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海監東海総隊所属のY-12と思われる航空機から撮影された海監66

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Y-12から撮影されたと思われる海保測量船「昭洋」。追尾を受けている最中か。
おそらくY-12で発見し海監66を誘導してきたのだろう。


今回も前回と同様、海保は中止要求に従うことなく調査を継続、「海監66」は追尾を続けていたがついに諦めたのか「昭洋」のレーダー上から消え去った。

調査中止要求の中国船、付近の海域離れる

 沖縄県久米島沖の日本の排他的経済水域(EEZ)で19日夜、海上保安庁の測量船「昭洋」が、中国国家海洋局所属の「海監66」から無線で調査中止を要求された問題で、中国船は20日午前9時前に付近の海域から離れた。

 同庁によると、中国船は19日午後7時半頃、昭洋から約550メートルの所まで接近。海底調査をしながら南下する昭洋の西15~30キロの海域を約13時間半にわたって航行後、北西に針路を変えて離れていった。

この中国の妨害に対して日本政府(野田政権)の反応は薄い。官房長官が不快感を示し外務省が型通りの抗議を行っただけだ。調査の中止要求は、野田首相訪中時に約束された危機管理メカニズムなどが一切何の役にも立たないことを示しているにもかかわらず、である。

関連エントリ:中国の尖閣「棚上げ」の裏で進む、海事機関の「尖閣海域常態化」


「測量船中止要求は問題」 官房長官

 藤村修官房長官は20日午前の記者会見で、沖縄県・久米島近くの日本の排他的経済水域(EEZ)で海上保安庁の測量船が中国から調査中止を要求されたことについて、外交ルートを通じて中国側に受け入れられないと回答したことを明らかにした。「我々の正常な海洋調査活動に対する中止の要求は問題だ」と語った。

中国船から調査中止要求、官房長官が不快感

日本側の「要求は受け入れられない」との申し入れに対し、中国側が「内部で報告する」と回答したことも明らかにした。

そして、中国側の「内部調査」の結果は、日本の海洋調査に対して「一方的な行動」と非難するものであった。

中国が反発 海上保安庁の東シナ海の海洋調査に

 中国外務省・洪磊副報道局長:「中国は、東シナ海の争いのある海域において、あらゆる一方的な行動に反対だ」
 海上保安庁の測量船が19日に日本の排他的経済水域で調査を行った際、中国の海洋監視船が近づき、調査の中止を要求したうえ、長時間、追跡を続けました。日本側は抗議していますが、中国外務省は「中国の東シナ海問題での立場は一貫している」として、譲らない構えです。


そして、中国側の発表では海監が海保測量船の調査を阻止し追い返したという「武勇伝」に摩り替わっていたのである。海監は勝手に日本側EEZにやってきて勝手に帰っただけにもかかわらず。

中国が海上保安庁測量船の調査を阻止・警告‎

 20日に行われた外交部の定例会見で、洪磊報道官は、「中国の東シナ海問題における立場は明確かつ一貫したしたもので、いかなる一方が東シナ海の領有権争いがある海域で一方的な行動をとることに反対している。中国側は日中両国がともに努力し、関連の問題を適切に処理し、実際の行動で東シナ海情勢の安定と日中関係の大局を維持することを望んでいる」と表明した。

◆調査阻止は3回目

 報道によると、海保測量船が中国の船に調査の中止を要求されたのは今回で3回目となる。前回は2010年5月と9月。

それどころか、今までの調査妨害すべてが阻止成功したかのようにまで報じられていた。

国家海洋局と海監総隊の発表は「同海域から海上保安庁を駆逐した!」と言葉だけはなんとも勇ましい。

中国海洋監視船、日本船に不法調査中止を求む

 中国海洋局東海支局と中国海洋監視東海総隊は21日、「中国海洋監視船は東海での定期巡航中に、不法な調査作業を行っていた日本海上保安庁調査船『昭洋』と『拓洋』を発見し、駆逐した」と発表しました。東海における日本船への警告は、中国海洋監視船が中国の管轄海域で権益保護のための定期巡航を始めてからこれで2度目となります。

 19日の夜、「中国海監66」号と「中国海監49」号は相次いで、中国の管轄海域で不法な調査作業を行っていた日本海上保安庁調査船「昭洋」と「拓洋」を発見し、直ちに作業の中止を要求しました。中国海洋監視船の監視の下に、この2隻の日本船は東南方向に向かって中国の排他的経済水域を離れました。

どうやら中国側も日本側も1隻ずつの状況ではなかったようだ。だが、これこそ中国が阻止に失敗した証左でもある。測量船が「昭洋」と「拓洋」だったということは今回の中止要求・妨害が海保にとって予見されていたということになる。

今まで中国が中止要求、妨害してきた海保の海洋調査は全て地殻調査だった。よっぽどこの海域の地殻構造を日本に知られるのが嫌なのだろう。もし、自分たちの「大陸棚延長」を否定するような結果でも出されてはたまらないということか。

2010年5月3日
中国船が排他的経済水域内で海保測量船追尾

 日本の排他的経済水域(=EEZ)で調査をしていた海上保安庁の船に中国政府の船が接近し、調査の中止を求めていたことがわかった。

 海上保安庁によると、3日午後2時過ぎ、鹿児島・奄美大島の北西沖約320キロで地殻の調査をしていた海上保安庁の測量船「昭洋」に中国政府の船が接近し、約2時間にわたって追尾した。その際、中国政府の船から無線で「この海域は中国の規制が適用される」などと連絡があったという。

最初の妨害であるこのときは、調査機材や本船に被害が及ぶことを警戒し「昭洋」は予定を繰り上げて調査を終了させた。そのことが、一部から「海保は腰抜け」と非難も受けた。だが、海保において新型測量船の建造予定がなく2隻しか存在しない大型測量船に何らかの被害が及べば、日本の海底地震観測網や権益確保に重大な穴が開くことになる。悔しさをこらえて「勇気ある撤退」を行うのも一つの選択肢だった。

しかし、海保海洋情報部は同じ轍を踏む気はなかった。

2010年9月11日
中国政府船が調査中止要求 沖縄沖で海保庁の測量船に

 11日午前7時40分ごろ、沖縄本島の西北西約280キロの日本の排他的経済水域(EEZ)内で、中国政府の船舶「海監51号」が、海上保安庁の測量船に対し海洋調査の中止を要求した。しかし測量船は調査を続け、午前9時半ごろ予定通り調査を終えた。

 海上保安庁は、中止要求を外務省に連絡。外務省が同日午後、外交ルートを通じ中国側に抗議した。海保の測量船が中国船に調査中止を命じられたのは5月以来2度目。中国側には尖閣諸島など中国が主張する領海やEEZでの日本側の実効支配に強い不満がある。

 今回中止を求められた測量船は「昭洋」と「拓洋」の2隻。海監51号は中国国家海洋局所属で、昭洋に無線で「中国の管轄海域なので、国際条約および中国の法令に従い直ちに調査を中止しなさい」と英語で要求。

 昭洋は「わが国のEEZ内で正当な調査活動を実施している」と返答し、調査を続けた。

尖閣諸島漁船衝突事件直後に行われた海洋調査とそれに対する妨害では、「昭洋」と「拓洋」2隻が組み、うち1隻が海監を監視し妨害を阻止するという対抗策を使ったのだ。もちろん尖閣諸島を警備している巡視船団とも連絡を密にし、不測の事態に備えていた。そして、中国側の不当な要求を一切無視して予定通り調査を行ったのである。

 海監にとっては今回を、このときの「雪辱戦」とするつもりだったのだろう。東海総隊に海監50と66が配備され勢力が充実し、前述のように海軍との連携も明言した。自信を深めた彼らが、「恥」をかかせた海保測量船に「復讐」したいと考えていたとしても不思議ではない。

共同パトロールの際には韓国海洋警察警備船と対峙し、追い返したという定かではない情報もある。

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しかし、彼らのもくろみは今回も崩れ去った。

前回阻止失敗したときと同様に「昭洋」「拓洋」のコンビを海保は用意していたのだ。「拓洋」は直前まで海底基準点増設の任務があったにもかかわらず、それが完了次第駆けつけたのだろう。

国内には阻止したと勇ましい「大本営発表」がなされてはいるが、事実をよく知っているのは彼ら自身だ。

次の一手は、海自護衛艦に対して行ったようなヘリの近接飛行か・・・さらにはベトナムに対して行ったような、船をぶつけるところまで行くかもしれない。

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公船同士はお互いに管轄権を持たないが、船体をぶつけるやり方は「ほとんどアウトのグレーゾーン」として侵犯に対し使われることがある。いざとなれば「相手からぶつかってきた」「不慮の事故」として自分たちの非を否定することが出来るからだ。もっともそれを信じるものがいるかどうかは別問題だが。

この中止要求、日本からの閣僚訪問に合わせたものだといわれている。だとすれば、日中連携して経済危機に立ち向かうなどと言っていた日本政府や安住財務相はいい面の皮だ。

中国の調査中止要求、閣僚訪中に合わせた?

 ただ、政府は今回の挑発的行為が、安住財務相が王岐山副首相と北京で会談したタイミングだったことに警戒感を強めている。昨年11月の玄葉外相訪中時も、中国海軍艦艇が沖縄県宮古島沖の海域を通過したことがあるからだ。

 外務省幹部は「軍や海洋局などの権力争いがあり、中国政府全体の連携が取れていない」との見方を示した。与党内では「大型巡視船を増やすなど装備を強化し、実効支配を強めるしかない」との声も出ている。

しかも、外務省や与党の「分析」にもあきれる。国家海洋局や海監総隊はもともと海軍から分離した組織で今も関係が深く、今月上旬には明確に連携する姿勢を打ち出してきている。少なくとも海軍と国家海洋局は綿密に連携しており、権力争いなどとは見当違いもいいところだろう。与党の「大型巡視船を増やす」という考えも一見海保にとっては喜ばしいように見えるが、予算上人員上の裏づけがない以上「石のタヌキ」以下である。そもそも、今から建造を始めたとしても就役するのは数年後である。そのとき、中国が現状の勢力のままであるとはとても考えられない。また、中国側がやたらと海保の「しきしま」「みずほ」「やしま」を意識していることからも分かるように、装備を増強すれば中国も追いつこうとするだろう。しかも経済成長を続けるのであれば中国のほうが一方的に有利だ。

現状で(その差を急激に狭められつつあるとはいえ)海保の装備が中国のそれを凌駕しているのに、どうしてこのような状況になったのか与党は自らの責任を一切感じていないように思える。

加えて言うなら、EEZの「実効支配を強める」というのもおかしな考え方だ。EEZは領海ではない。あくまで沿岸国が経済権益において排他的な権利を持っているということであって、それ以外は公海と同じである。そのため、経済活動を行っていない船、国連海洋法条約に反していない船は、自由に航行できる。「実効支配」とは領有の根拠が薄いときに実力を持ってその地域を制圧していることを指す。そもそも、日本の水域、EEZに対して使われる言葉ではないのだ。

これだけでも与党の海洋権益に対する意識の低さが現われている。

もっともこの状況の責を民主党にのみ求めるのは酷だろう。中国側の増長を招いたのは事前通報制度などという形骸にしかならなかったものを作った当時の政権である。現在では事前通報なしで中国側が日本のEEZ(しかもそれは太平洋側まで延びている)を気ままに調査し、一方では日本が自らのEEZを調査すれば中国に中止を要求されるという、なんとも情けない状況になっている。




ちなみに産経新聞は今回もやらかしました。

海保船と並走、調査中止要求の中国船が現場を離脱

 海保によると、海監66は午前8時半ごろに並走をやめ、北方向に航行を開始。約25分後に北西約60キロの付近でレーザーから消えた。

laser.jpg相手の船影が「レーザー」から消えたという。「レーダー」ではない。

確かに海保の「巡視船」はレーザーレーダーもしくはLADAR/LIDARと呼ばれる光学センサーを装備している。しかし、測量船がそのようなものを装備するとは考えられない。海底観測用の機材なら別だが、巡視船におけるレーザーは対象の捕捉と火器管制に使用されるからだ。つまりはFCS/RFSである。昭洋が火器とFCS/RFSを装備しており、それを海監66にずっと指向していたとなれば別の意味で「大事件」となっていただろう。 ちなみに海洋情報部のレーザーといえば水路観測所から衛星に向けて照射されるものが挙げられる。

関連エントリ:海保が衛星に対しレーザーを発射!?知られざる海保の任務

ちなみに他の各メディアは「レーダー」と表記している。

中国政府船、海保に調査中止要求=日本のEEZで

 海監66は20日午前8時半ごろ、北向きに航行を始め、25分後に久米島の北西約60キロで、昭洋のレーダーで確認できる範囲から去った。

海保測量船に中止要求、中国に抗議

 海上保安庁によりますと、中国の船は一時550メートルまで接近し、その後も距離を置きつつついて来ましたが、20日午前、レーダーから外れたということです。



この記事についてはもうひとつ。

といってもこれは、産経というより海保についてだ。記事に掲載されている海保提供の「海監66」の写真。海保がこんな画像持ってたんだーと眺めていたが、どうにも違和感と既視感がぬぐえない。

ちょっと調べてみたら、自分が以前のエントリで中国の某軍事系掲示板から引っ張ってきたものと全く同じだった。色調が違うのはコントラストなどを少しいじっているからだろう。

さて、海保が提供したこの画像、出所はどこなのだろうか。

関連エントリ:●  、_,_,  ● よりにもよって主権碑を放り投げるなんてどうかしてるよ
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しかもこの画像、エントリで使うときに元画像からトリミングしたような気がするんだけど・・・・


そして再び産経新聞。
中止要求に対抗して試掘せよという。

中国船の中止要求 日本側も試掘で対抗せよ

 藤村修官房長官は20日の会見で「外交ルートで抗議している」と語ったが、形式的抗議では足元をみられるだけだ。駐日中国大使を呼ぶなどの厳重抗議に加え、実効ある対抗措置を検討すべきだ。具体的には中間線付近にあるガス田の日本側での試掘などだ。

 この問題では平成17年、中川昭一経済産業相(当時)が資源開発会社に試掘権を許可した。しかし中国側が強く反発し、翌18年に二階俊博経産相(当時)が中国への配慮から消極姿勢をとり、試掘には至っていない。


だが遅すぎるし見当違いだ。日本側の試掘は、共同開発交渉中断の対抗手段としてやるべきだったし、海底地震・地殻探査の妨害への「報復」として行うのは、やり口が「中国的」すぎる。

関連エントリ:嘘と隠蔽と言いがかりが溢れる「友好と平和の海」

というか、いきなり試掘するのは試掘権が認可されているとはいえ、どう考えても無理だ。試掘をするのであれば改めて「出そうな」ところを海底調査・地殻探査する必要がある。まさか、出そうにないところに対抗のために穴だけあけろといっているのではないだろう。

そもそも試掘をしたところで中国にとっては海保測量船への妨害をやめる理由にはならないし、むしろ、試掘の前に調査を行う資源探査船を妨害する根拠を提供するだけだ。そして、海保の負担が増えるのは言うまでもない。

つまり、現状の妨害を阻止する手段にはならず、海保にとっては何の利点もないのだ。海保以外も試掘に対しては準備不足が否めない。

JOGMECの資源調査船「白嶺」は今月就役したばかりである。メタンハイドレートであればこの新しい「白嶺」、石油やガスとなれば海外から購入した「資源」ということになるのだろう。メタンハイドレートについては渥美半島沖においてJAMSTECの地球深部掘削船「ちきゅう」を使って産出試験に向けた海底掘削が行われている。

メタンハイドレートの坑井掘削開始 遠州灘

「白嶺」がメタンハイドレート実用化に向けた試掘をできるようになるのはまだかなり先のようだ。

海洋資源調査船「白嶺」に関する情報を更新しました。

独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構(略称:JOGMEC)殿が新規に運用開始する海洋資源調査船「白嶺」の運航に関し、当社は1月26日、JOGMEC殿と運航委託契約を締結しました。
「白嶺」は、2月3日、建造造船所である三菱重工業(株)下関造船所から当社船員の手によって処女航海に出発する予定です。

海洋資源調査船「白嶺」・三次元物理探査船「資源」一般公開について 

この度、「白嶺」・「資源」が行っている海洋資源調査及びその探査手法等についての理解を深めていただくことを目的として、千葉港船橋岸壁において、両船の同時一般公開(3/24・25)を開催します。特殊な観測機器や特徴的な船体を実際にご覧いただくとともに、どのような調査を行うかご紹介いたします。また、「白嶺」につきましては、本年2月に新規就航した船舶であり、今回が初めての一般公開となります。

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関連エントリ:動き始めた日本の海底資源開発、南鳥島沖に眠るレアアース

一方、東シナ海ガス田問題や日本独自での開発を前提にチャーターされた後購入に切り替えられた「資源」だが、その後はあまり「よろしくない」話が付きまとっている。それでいて肝心の話はほとんど聞かれないのが現実だ。


遅すぎるし間に合わない。

むしろ、今回の場合、人類の科学の発展を中国は自国の利益のみのために妨害したと、世界に大々的に宣伝するほうがスマートだ。 敢えて、地震計設置による地殻調査は大陸棚調査だけでなく地殻変動調査にも繋がっていると強引にアピールしてもいい。

そうやって中国のイメージを損なわせた上で、共同開発が進展しない以上、日本も独自開発をせざるを得ないとして試掘を堂々と行えばいい。

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tag : 海上保安庁 測量船 中国 漁政 海監 尖閣諸島 韓国 海洋警察庁 違法漁船 産経新聞

2012-02-24 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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