海上保安庁に陸上警察権が付与される意味

海保の警察権強化へ 立ち入り検査せず退去命令

 沖縄県・尖閣諸島付近で2010年9月、海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件などを受け、領海の海上警察権を強化する外国船舶航行法と海上保安庁法の改正案が14日、判明した。正当な理由なく領海で停泊、周回する外国船に対し、海上保安庁が立ち入り検査を省略して退去を命令できる権限を明記。違反者は懲役1年以下か罰金50万円以下とする。遠方の無人離島での不法侵入や破壊行為には、警察官に代わって海上保安官らに捜査権を与える規定も盛り込んだ。

 現行の外国船舶航行法は、天候悪化といった理由がないのに領海内で停泊、周回する行為を禁じているが、立ち入り検査で理由を確かめないと退去を命じられない。

 しかし荒天時や大量の船が押し寄せるようなケースでは立ち入り検査が困難なため、船の外観や乗組員の行動から違反と判断すれば、検査なしで停泊の中止などを勧告できる仕組みを新設。従わない船には退去を命じ、船長らには罰則を科す。

 海保による任意の「質問権」の対象は乗組員と乗客に限られているが、過激な環境保護団体による妨害行為、密輸事件の陸上での見張りなどを念頭に、船の所有者や借用人ら陸上の関係者からの事情聴取を可能にする。

 海保は内部規則も見直し、放水銃など新型機材の使用規則を定め、積極的に使用できる環境を整える。

近頃、「海上保安庁の警察権強化」という言葉が再び世間をにぎわせている。どうやら海上保安庁の改正案がいよいよ閣議決定を経て国会に提出されるらしい。この「強化」が検討されたのは言うまでもなく尖閣諸島での漁船衝突事故がきっかけだ。

海保法改正案を閣議決定

 政府は28日、海上保安官が海上だけでなく本土から遠い無人島など一部陸上でも捜査、逮捕権を行使できる規定などを盛り込んだ海上保安庁法改正案を閣議決定した。犯罪に対処する保安官の権限を見直し、沖縄・尖閣諸島など国境付近の離島における外国人の不法上陸などにも迅速に対応できるようにする。



この「警察権強化」問題については旧ブログ時代から取り扱っており、「権限強化」には程遠い実効性の薄さと問題点について指摘してきた。

関連エントリ:優れた戦略は銃撃を回避し紛争を防ぐ
具体性のない海上保安庁法見直し議論
知らないのは時事なのか馬渕大臣なのか・・・。
鳴り物入りではじまった「海上警察権見直し」の正体
目新しさの無い「領海警備」「海上警察権」の強化

すなわち、検査なしでの退去命令は海上警察権の強化どころか放棄にも繋がりかねないし、陸上での捜査権は既存の庁法でも可能な部分が大きかった。

そうしたこともあってか、海上保安庁が行った「海上警察権のあり方について(中間とりまとめ)」では、事案発生前の「退去命令」よりも事案発生後の「停船のための強制手段」のほうが重点的に検討されていた。

関連エントリ:問題となっているのは「武器の使用」ではなく「体当たり」での停船措置か?
(海保巡視船に装備されたLRADについて):とある海保の超音波砲

また、将来を見据えた体制整備として装備の強化がうたわれていた。・・・が、現在建造中の「しきしま」級増強のみならず、それに準じた新型の整備やジェット機の増強など、今までの海保の整備状況から考えると現実感・実現性の極めて乏しい内容だった。いわば、政治主導ではじまった「海上警察権の見直し」への海保の姿勢がよく現われているといえた。

関連エントリ:新「しきしま」級に続き、準「しきしま」級・新型ジェット機増強へ

ところが先月末より、再び「海保の警察権強化」という言葉がニュースをにぎわせたのである。その内容は、海上保安官が陸上での犯罪に対応して逮捕が可能となるという海上保安庁法改正案だった。

離島でも海保に逮捕権=不法上陸に対応-国交省

 海上保安官に与えられている現在の海上警察権は、陸上での犯罪行為には適用されない。そのため、2004年に尖閣諸島に中国人活動家が不法上陸した事件では、警察官がヘリコプターで現場に到着するまで海上保安官は活動家を逮捕できない事態が発生するなど、離島での警察権行使が課題となっていた。
 改正案では、遠方の離島で外国人による不法上陸などの犯罪行為があった場合、海上保安官が警察官と同様に容疑者を捜査したり逮捕したりできる規定を新設する。

これについて日本国内では期待する人たちがいる一方、中国では警戒する声が聞かれる。

日本が『海上保安庁法』改正でわが国に攻勢(1)=中国

中国外交学院の周永生教授は、尖閣諸島とその周辺の島に名称を付けるなど、このような行為はいずれも日本が尖閣諸島の占領を進めていることを示すと語った。中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。以下は同記事より。

 日中関係史学会の高海寛常務理事は、「日本は現在、一歩前進するごとに砦を設けている状態といえる。まず尖閣諸島とその周辺の島に名称を付け、今回は法を改正し、その目的は中国との争いでもっと有利になることだ」と述べた。

 あるオブザーバーは、日本が法改正を進めるもっと大きな目的は、日本国民の感情を落ち着かせることだと見ている。

 一方、周永生教授は、「日本は常に法律を政策の原則としており、政策を変更する前に法律をまず改正する」と、上述の見方に反対した。

ただ、中国内でも国民感情対策という冷めた見方はあるようだ。



・・・ところで
「日本は常に法律を政策の原則としており、政策を変更する前に法律をまず改正する」
とあるが、これって法治国家ならあたり前のことじゃないの?

わざわざそんなことまで説明しなきゃならんとは、さすが中国。



しかし、大方は日本が「棚上げ」という政策から強硬姿勢へと大きく変更したと考えている。

日本が『海上保安庁法』改正でわが国に攻勢(2)=中国

 高海寛氏も、このような法改正にはやはり本質的な意味があり、日本の海上保安庁は今後、島に上陸して捜査や逮捕する際に「法に則った行為だ」と主張するだろうとした上で、「中国は日本のこのような行動を軽く見てはいけない。日本が尖閣諸島問題において行動を頻繁に起こしても中国が報復措置をとらなければ、既成事実が作られ、日本の都合のよい方向に持っていかれる」と強調した。

 日本メディアの20日の報道によると、海上保安庁の測量船が19日午後に尖閣諸島の周辺海域で海洋調査をしていたところ、中国の海洋監視船から警告を受け、調査を停止するよう要求された。中国外交部は直ちに反応を示し、中国の東シナ海問題における立場を再度表明した。

 日本の船舶による尖閣諸島周辺での活動に対し、中国外交部はこれまで何度も態度を表明し、「尖閣諸島および周辺の諸島は古くから中国固有の領土であり、中国は争う余地のない主権を有している。日本政府が尖閣諸島周辺で行ういかなる措置も違法で無効である」と主張してきた。

 周永生教授は、「尖閣諸島問題における日本の強硬な行動に対し、中国は手加減してはいけない」と強調した。

記事では、中国の専門家二人がそれぞれに「報復」と「手加減しない対応」を強く求めている。まるで日本が軍事侵攻でもしそうなほどの勢いだ。中国側が「懲罰戦争」でもしなければ収まりがつかなくなるのだろうか。



ちなみに、中国網日本語版の元記事では参考写真が間違っている。

釣魚島も対象 日本が『海上保安庁法』改正で中国に攻勢

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資料写真:海上保安庁の測量船「昭洋」


この写真の測量船はHL05「海洋」(総トン数:550トン)である。九州南西海域工作船事件では同船のサイドスキャンソナーが海底に沈む工作船を発見、また、日本海測量問題の時には同型船「天洋」とともに韓国海洋警察庁との衝突が予想される海域での強行測量に備えていたこともある。

しかし、今回中国側の妨害に屈せず測量を行ったのはこの船ではない。というか資料写真ではなく海監機が上空から「昭洋」を捉えた写真が公表されているのだからそれを使えばいいはずだ。

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関連エントリ:東シナ海波高し、地震計設置まで妨害する中国海監





では今回の海上保安庁法改正、特に海上保安官への陸上警察権(捜査権限)付与は、中国側が危惧し警戒するほどに大きなものなのだろうか?


そうであるともいえるし、そうでないともいえる。


海上保安庁・海上保安官の権限は今までに比べてそこまで大きくなるわけではないのだ。

なぜか。

それは報道されている内容とは違い、海上保安官には元から陸上での逮捕権限が備わっているからだ。いや、むしろ海上保安官が逮捕する場所に陸海の区別はない。

当然である。海上保安官が陸上で逮捕できなければ、海上で犯罪を犯したものは陸に逃げ込めばいいだけになってしまうからだ。

海上保安官が活動するのは海においてだけではない。海上犯罪者が陸で犯罪行為の準備をし、もしくは海で犯罪準備をして陸でその犯罪利益を得るのだから、それに対応して捜査や法の執行も陸で行われる。

多くは密漁・密輸・密航の捜査だ。

最近の事例で大きなものといえば、昨年末に発生した密航事案である。

大黒ふ頭の密入国 新たに中国人船長ら逮捕 横浜海上保安部

 横浜・大黒ふ頭で中国から密航した5人が不法入国した事件で、横浜海上保安部は6日夜、密航を手助けしたとして、入管難民法違反(不法入国の手引きなど)の疑いで、中国人のコンテナ船船長、王旭升容疑者(41)と、船員の黄強容疑者(39)を新たに逮捕した。2人は容疑を否認している。

 逮捕容疑は、既に逮捕された船員(42)と共謀し、上陸許可のない密航者5人を4日夜にコンテナ船から不法入国させた疑い。5人は浙江省寧波で乗せたという。

この事件では密航自体はコンテナ船で行われたが、不法入国した場所は埠頭の保税区域だった。

また、海上保安庁が逮捕した法的根拠は、海上保安庁・保安官の権限を定めた海上保安庁法ではなく、入国管理局が所掌する入管難民法である。これは、海上保安官は他の官庁の業務や権限をその当該官吏と見なすことによって執行できるからだ(海上保安庁法 第15条)。つまり海上保安官は海上保安官としての権限だけでなく入国管理官(警備官)、税関職員、漁業監督官等としての権限も執行できるのである。

第15条 海上保安官がこの法律の定めるところにより法令の励行に関する事務を行う場合には、その権限については、当該海上保安官は、各〃の法令の施行に関する事務を所管する行政官庁の当該官吏とみなされ、当該法令の励行に関する事務に関し行政官庁の制定する規則の適用を受けるものとする。


関連エントリ:具体性のない海上保安庁法見直し議論

そして今回の事件では、その後も陸上において神奈川県警とともに残る密航者の追跡も行ったという。

密航者:5人が逃走 助長容疑、中国人船員逮捕--横浜海保(毎日新聞 2011/11/6 記事消滅)

 横浜海上保安部は5日、密航者を横浜港から不法入国させたとして、貨物船船員の趙暁〓容疑者(42)=中国籍=を出入国管理法違反(営利目的集団密航助長)容疑で逮捕した。密航者5人が逃走しており、同保安部は神奈川県警と行方を追っている。


海上保安庁の陸上捜査で珍しい事例として海難事故を装った保険金詐欺事件の捜査がある。この事件では5ヶ月に及ぶ捜査活動を実施したという。

死亡を装い保険金詐欺 整形、かつら付け偽名で広島を転々…容疑者親子3人を逮捕(毎日新聞 1993/12/3)

 福岡地検小倉支部は二日までに、漁船をわざと転覆させて死亡を装い生命保険金約一億二千万円をだまし取ったとして広島市南区松原町、パチンコ店従業員、東岡岩雄容疑者(45)ら親子三人を詐欺の疑いで逮捕した。また門司海上保安部は岩雄容疑者を海防法違反(船舶の不法投棄)の疑いで逮捕した。
 逮捕者はほかに、妻の福岡市中央区草香江、飲食店従業員、フキエ容疑者(43)と長男(20)。
 調べでは、三人は共謀して岩雄容疑者が漁船操業中、転覆して死亡したとウソをつき、昨年十二月、生命保険会社一社から福岡市内のフキエ容疑者の銀行口座に約一億二千万円を振り込ませだまし取った疑い。
 岩雄容疑者は昨年一月十一日、長崎県壱岐郡の郷ノ浦港から、イカ釣り漁船「第5三和丸」(一八トン)で出航。山口県下関市蓋井島沖の響灘で転覆させた後、死亡を装い広島県内に潜伏。フキエ容疑者らは同年十月、第七管区海上保安本部(北九州市)に死亡認定願を出し、翌十一月、死亡認定されていた。
 岩雄容疑者は偽装転覆の後、美容整形病院で顔のほくろ二つを除去、かつらを付け偽名を使って別人を装い、広島県内を転々としていたらしい。
 これまでの調べで、岩雄容疑者は船の維持費などで数千万円の借金があったらしい。三人は容疑を認め、岩雄容疑者は「魚倉に水を入れて転覆させ、陸まで泳いだ」と供述しているという。


うわさで崩れた完全犯罪 山口・下関の海難事故保険金詐欺【西部】(朝日新聞 1993/12/2)

 海難事故で漁船もろとも沈んだはずの船長が整形手術までして生きていた。二日、明らかになった山口県下関市沖を舞台に繰り広げられた漁船投棄、詐欺事件。だまし取った保険金は一億二千万円。A容疑者(四五)の故郷の対馬では仮葬儀もすみ、船長親子の完全犯罪は成功したかにみえた。しかし、「生きているらしい」との地元の風評が逮捕につながった。
                                    
 第5三和丸の転覆事故を調べた門司海上保安部は「事故」当時、現場付近に海上風警報と波浪注意報が出されていて、船体に当て逃げされるなどの損傷の形跡がなかったことから、「高い横波を受けて転覆した」とみていた。
 地元の対馬の実家では、その後、仮葬儀が行われた。転覆から約九カ月後の昨年十月には、妻B容疑者から死亡確認願が第七管区海上保安本部に提出され、同十二月には保険金約一億二千万円が支払われた。
 しかし、遺体が見つからなかったことや、「A容疑者がどうも生きているらしい」とのうわさが地元でささやかれたことから、捜査当局が今年に入って動き出した。
 対馬・峰町にあるA容疑者の実家では父親が二日朝、「息子は死んだものと思い、仮葬儀もあげたのに、びっくりした」と話した。一日に家宅捜索に訪れた七管の係員から、聞かされたという。「生きていてよかったが、いいことをしていないので、もう話したくない」と電話を切った。
 近所の主婦(四八)は「主人が仮葬儀に参列しましたが、奥さんもお子さんも泣きはらしていたと言ってました。まさか、こんなことだったとは。A容疑者は度胸があるような感じはしましたが、これまで悪いうわさも聞いたことがない。話を聞いて驚いています」と話した。
 また別の主婦(六一)は「景気の良い時期もあったようだが、遭難した時には、銀行だけでなく知人からもかなり多くの借金があったようです。しばらくしてから、貸した人たちの間で『保険金で借金を返してもらえて良かった』と評判になっていた」と話した。
 親類の女性(六〇)によると、仮葬儀の後、B容疑者から現金が送られ、借金した知人への返済を依頼された、という。
 A容疑者は逃亡中に、顔の眉間(みけん)と右目のしたにあった二カ所のほくろを、福岡市内の美容整形外科で手術を受けて除去。かつらを着用して、容姿をすっかり変えて広島市内に潜伏していた。
 B容疑者が住むマンションは福岡市の幹線道路・城南線沿いにあり、一階に歯科や飲食店が入る高層ビル。同容疑者は娘二人と暮らし、月に何度か長男のC容疑者がバイクで訪ねてきていたらしい。自ら「未亡人」と名乗って近所の人にも律義にあいさつし、特に派手な暮らしぶりではなかったという。
                                    
 ○「仕事はまじめ」 広島の潜伏先
 A容疑者が勤めていたパチンコ店は、JR広島駅南東の繁華街にある。
 今年八月に採用の面接を受け、「東山勝美」を名乗り、経歴については「パチンコ店に勤めていた」などと説明した、という。
 パチンコ店従業員の一人は「三カ月近くいっしょに働いているが、仕事ぶりはまじめ。金には全く困った様子はなかった」と事件のことを聞いて驚いていた。
                                    
 ○海保、5ヵ月の執念 検察と異例の合同捜査
 今回の事件について、門司海上保安部・警備救難課の時枝俊次郎課長は「命をかけて捜索するわれわれの仕事を悪用された」と話した。
 七月から約五カ月間、同課の十二人を中心に専従捜査班を組み、休日返上で捜査に当たった。この約一カ月間は、張り込みなどで相手の動きを追いながらの緊張の毎日だった。
 事故当時、第七管区海上保安本部は計二十五隻の巡視船と沿岸漁協の漁船、ヘリコプターを動員した。三管(横浜)の特殊救難隊も潜水捜査に出動した。東岡容疑者の潜伏先の特定では、六管(広島)の協力も得た。
 七管の警備救難部幹部の一人は「死体が残らないという海難事故の特性を悪用したA容疑者は海の男として最低だ。漁協や各管区の協力に感謝している」。検察庁と海上保安庁との合同捜査も異例としている。

ちなみに、逮捕のために踏み込むきっかけとなったのは、結婚記念日だという。夫婦が密会をしていることを把握し、それが本人であるという確証に繋がったらしい。

別の保険金詐欺でも海上保安官が検察とともに陸上で捜査・逮捕している。

容疑の船主立件 故意に船沈没、保険金詐欺?(朝日新聞 2000/3/19)

 昨年十一月、神奈川県浦賀沖の東京湾で、資材などを運ぶクレーン付き台船(約一千万円相当)が沈没する事故があり、横浜地検と横浜海上保安部は十八日までに、故意に船に穴を開けて沈めたとして、船主だった横浜市神奈川区子安通一丁目、海洋土木会社元社長(当時五九=昨年十二月、横浜市内で墜落死)を業務上過失往来妨害の疑いで被疑者死亡のまま立件するとともに、元社長をかくまったとして、知人の横浜市緑区十日市場、飲食店経営A容疑者(四八)を犯人蔵匿の疑いで逮捕した。
 同地検などは、同社の船が一昨年にも三重県沖の熊野灘で沈没し、約五千万円の保険金の大半を、A容疑者が経営する飲食店の開店資金に充てていたことをつかんでいる。今回沈没した台船にも約一億八千万円の保険がかけられており、保険金詐欺などの疑いもあるとみて、A容疑者らを追及している。
 調べでは、昨年十一月二十八日、浦賀沖で同社所有の台船が沈没。損害保険会社が船を引き揚げて調べたところ、船体の二カ所にバーナーなどで切り取ったような穴が見つかったため、同保安部に通報した。
 同保安部が十二月中旬に元社長を任意で事情聴取。元社長は翌日、行方不明になり、約一週間後、A容疑者が借りていた横浜市中区内のマンション十階から墜落死した。神奈川県警は、自殺とみている。
 同地検と同保安部は船に穴を開けたとみられる海運会社の元社員ら数人からも事情を聴いている。



では、今回の改正案は何が異なるのか。
これまで見てきたように、陸上での捜査・逮捕は現行でも可能で、現実に行われている。しかし、そのいずれもが海上犯罪捜査の延長としての陸上での活動だ。また、いずれも警察や検察との合同捜査となっている。

今回の報道では不法入国・上陸に対応できるとなっているが、現行の法律上それは可能である。

尖閣諸島において不法上陸者に対し沖縄県警が対応していたのは、地方警察が対処していることをアピールすることにより、尖閣諸島が係争地ではなく沖縄県の施政がきちんと及んでいるということを内外に知らしめる意味があった。あくまで海上保安庁と沖縄県警(警察庁)の取り決めによって行われていた。

2004年の活動家らの不法上陸事件では、海上保安官が彼らを追って上陸し取り押さえたものの、逮捕そのものは海保ヘリで空輸されてきた沖縄県警捜査官および機動隊員によって行われた。その後、容疑者らは巡視船「りゅうきゅう」により沖縄本島まで輸送され、入国管理局那覇支局に引き渡されたのである。

尖閣諸島・魚釣島に中国人7人が上陸、沖縄県警が逮捕

 24日午前6時20分過ぎ、沖縄県の尖閣諸島・魚釣島の領海内に中国船がいるのを警戒中の第11管区海上保安本部(那覇市)の巡視船が発見した。ボート2隻を下ろして活動家7人が分乗、11管の制止を振り切って午前7時20分、魚釣島に上陸した。島内で中国国旗を振るなどした。中国人とみられ、沖縄県警は約20人の警察官をヘリで島に派遣。全員を出入国管理法違反(不法入国)の疑いで現行犯逮捕した。

 尖閣諸島に外国人が上陸するのは96年10月、台湾と香港の活動家数人が上陸して以来。海上保安庁によると、沖縄返還協定による施政権の返還後、尖閣諸島に上陸した外国人が逮捕された例はない。中国側は抗議している。

 尖閣諸島を巡っては中国・台湾も領有権を主張しており、7人の取り扱い次第では外交問題に発展しかねない。不法入国者は出入国管理法に基づき、必ずしも逮捕しなくても処分できるが、沖縄県警の新岡邦良警備部長は、同日夜に会見し、「不法入国して上陸し、長い時間がたっていた。明らかに法違反があり、現行犯逮捕すべき状況にあった」と述べた。7人は氏名や年齢なども現段階では分からないという。

 7人は今後、那覇市に身柄を移し、いったん警察の事情聴取を受けた後、福岡入国管理局那覇支局に引き渡されて強制退去させられる見通し。7人は全員が男性で、逮捕の際、暴れるようなことはなかった。


尖閣諸島でのこのような対応の変更が大きな目的だと各メディアでは報じている。しかし、繰り返しになるが現行法でも海上保安官によって出入国管理法(入管難民法)での逮捕は可能だし、実際行われている。

海保に捜査・逮捕権付与へ…離島での不法侵入等

 政府が2010年の沖縄県・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件などを受け、今国会に提出する海上保安庁法と外国船舶航行法の改正案の概要が判明した。

 海上保安庁の警察権を強化し、遠方の離島で不法侵入などがあった場合には、警察官に代わって海上保安官が捜査や逮捕ができる規定を設ける。対象とする離島は、尖閣諸島のほか、日本最東端の南鳥島(東京都)、最南端の沖ノ鳥島(同)などが挙がっている。

 現行の海上保安庁法は、海保の警察権の対象を「海上における犯罪」に限定している。警察が離島に到着するまで時間がかかることから、海保の警察権を拡大することにした。対象とする離島については、海上保安庁長官と警察庁長官が協議して指定する。

海上保安官が捜査・逮捕可能に 海上保安庁法など改正案決定

 遠方の無人島での不法侵入や灯台の破壊などに対し、海上保安官が警察官に代わって捜査、逮捕できるようになる。対象の離島は海上保安庁長官と警察庁長官が告示。尖閣諸島のほか、南鳥島や沖ノ鳥島(東京都)になるとみられる。

 現行法では立ち入り検査をしないと領海からの退去命令を出せなかったが、改正案では船の外観や乗組員の行動から違反が明らかな場合には、立ち入り検査を省略し、航行の是正を勧告し退去命令を出すことができるようになる。




今回の法改正でも対象となるのはすべての国境離島ではなく事前協議による指定と告示が必要となるようだ。


海保の権限強化法案 尖閣の陸地でも捜査権

 対象の離島は法案成立後に海保と警察庁が協議して指定するが、尖閣諸島(沖縄県)や沖ノ鳥島(東京都)、南鳥島(同)などが指定される見通しだ。

 法案では、天候悪化などやむを得ない理由がないのに領海内で停泊するなどした外国船について、現行法で必要な立ち入り検査を省略して是正を勧告し、退去を命令できると規定。

 海上保安官による任意の「質問権」の対象者を、従来の船舶所有者らに加え、治安確保上、重要な事項を知っているとみられる陸上の関係者まで拡大する。

肝心の今回の改正で何が変わるのかといえば、今まで見てきた事案のような海上犯罪の延長線上ではない陸上での犯罪を検挙できる点と、合同捜査本部などを経なくても単独で捜査逮捕が出来る点である。

例えば、離島にある施設を不法入国者が破壊した場合、不法入国・上陸という犯罪行為は(航空機を使わない限り)海を経由して行われるため海上保安官が逮捕できるが、破壊行為そのものは陸上で行われるため別の犯罪行為となり警察の管轄となっていた。これらの犯罪について海上保安官が単独で逮捕し独自に捜査することが可能(15条による「みなし官吏」となる必要はない)となるわけである。

特に海保が警戒しているのは尖閣諸島・魚釣島の灯台や沖ノ鳥島の海上施設などに対する破壊活動だろう。

海上保安庁は今後、沿岸警備隊としてだけでなく離島における国境警備隊としての任務も帯びることになる。

 また、船舶の乗組員や乗客に限られていた「質問権」の対象が船舶保有者や重要な事項を知っていると思われるものにまで拡大する。実はこちらのほうが陸上捜査においては効果が大きい。もっともこれは権限拡大というよりはやっと陸上警察官の「警職法」レベルにまで追いついたといえるだけなのだが。

海上保安庁法及び領海等における外国船舶の航行に関する法律の一部を改正する法律案について

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海上保安庁のプレスリリースでは灯台を爆弾で破壊しようとしている犯罪者が描かれている。
今後は武器を持って立てこもった場合の緊急対応なども考えていくということもあるのかもしれない。

海上保安庁にとっては陸上警察権の付与そのものにそこまで大きな期待はない。だが、中国が今後もし、活動家や遭難漁民を装った武装集団を不法上陸させるつもりなのなら、この海上保安庁法改正案に対し警戒心を剥き出しにするのは当然だといえよう。

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2012-03-03 : 海上保安庁 : コメント : 0 : トラックバック : 0
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